福井県の海水浴場に現れ、注目されている迷いイルカ。連日人に危害を加えるなどして、問題になっています。海水浴場では、1日で6件もかまれる被害が出ることもあり、地元住民から困惑の声が上がっています。なぜ、イルカがこの場所に現れ、人間に危害を加えるようになったのでしょうか。
海水浴場の浅瀬に…野生イルカの“かみつき”1日6件も
7月24日に撮影された映像に映っていたのは、砂浜のすぐ近くを泳ぎ、海水浴客に近寄っていくイルカ。しかし、海水浴客が背中に触れた次の瞬間、突如反転。足をかんできたのです。
26日、映像が撮影された海水浴場を訪れると、まず目に飛び込んできたのは、イルカに触れないよう注意を促す看板でした。トイレのところに大きく目立つよう設置され、「危険」「イルカに絶対に触らないで!ケガ人も出ています!」と書かれています。

福井市によると、海開き以降、越廼(こしの)海水浴場では、人がイルカにかまれる被害が度々発生。24日には、6件もの被害が報告されました。24日に撮られた別の映像には、泳いでいる人のすぐそばで見え隠れする背びれが…。砂浜には複数の幼い子供の姿も見られ、イルカがかなり浅瀬まで来ている様子が映っていました。
この日、イルカを目撃した人は…
イルカを目撃した人:
普通に野生のイルカが見られること自体が初めてでびっくりしたんですけど、けが人出ているって知って普通にびっくりはしましたね
子供と一緒に海水浴に来ていたという男性。当時のビーチの状況については、こう話します。
イルカを目撃した人:
なんか監視員の人に結構、近寄らないでとか、触らないでとか、言われてたんですけど、それでも聞かない人とかもいて
Q:イルカに触れ合いにいった?
僕はしなかったですね。イルカが近くにいる時は海から出て、ずっと外の方で見てたって感じ
注意の呼びかけがあったものの、海水浴客のすぐそばまで近寄ってきていたというのです。
人への執着が強いイルカ 体当たりや連れ去りも
人を恐れる様子もなく、平然と泳ぐイルカ。そもそもなぜ、野生のイルカが浅瀬で泳いでいるのでしょうか。地元・越前松島水族館の松原副館長は…
越前松島水族館・松原亮一 副館長:
もともとミナミバンドウイルカは、ほかの種類、福井県で見られるバンドウイルカやカマイルカに比べますと、いくらか沿岸性が強いイルカではあるんですけど、なぜ単独で岸近くにずっといるのかというのは分からないですね
この周辺でイルカが単独で現れることは珍しく、理由は分からないといいます。一方、このイルカの行動については…
越前松島水族館・松原亮一 副館長:
このイルカに関しては人への執着が強いので、イルカの方から接近してきて接触するっていう行動が出ているんですね。
かみつき、体当たり、沖への連れ去り等が、考えられるというか、事実として出ていますよね。ただ体をドンと当ててくる程度の接触っていうのはしょっちゅうあるみたいですね。例えば素潜り漁をされている漁師さんの方から、「サザエとかアワビをとりに潜っていると体をぶつけられるのだけどどうにかならないか」という相談を頂いたこともありますので。
イルカの体は筋肉の塊ですから、あの大きさで時速40kmぐらいで泳ぎますので、重たいですね
松原副館長によると、かみつくだけでなく、体当たりされたり、人をくわえたまま沖へ連れていってしまう危険性も考えられるというのです。イルカとしては、人に危害を加えようとしているのではなく、“相手をしてもらえて楽しい”、“もっとかまって”、とじゃれているつもりでかんだりすることもあるといいます。
また、人からなでられたりすると、イルカはそれが心地いいので「もっとなでて」とどんどん近づいてくるそう。7月の時期はちょうど繁殖期であることもあり、イルカが体をこすりつけるような行動もとったりするといいます。
しかし、今回目撃されているイルカに関しては、人への執着が大変強くなっているので、見つけたらすぐに陸に上がって逃げるなど、注意が必要だということです。
のしかかられた男性「パニック」 水中に引きずり込まれ、もがく…
さらに取材を進めると、イルカにのしかかられたという男性に出会いました。海の中で突然、背後からのしかかってきたといいます。
イルカにしかかられた男性:
(乗られたときは)パニックです。背中に乗られて、水中で体中つつかれている感じですね。バタバタとしているんですけど、すればするほど、イルカも遊んでくると思ってじゃれてくる感じですね
水中に引きずり込まれてもがいていたところを、一緒にいた友人が助けてくれたため、なんとか溺れずに済んだといいます。
さらにイルカによる被害は、これだけではありませんでした。
イルカにのしかかられた男性:
目の前で(人が)かまれていました。腕、ここらへんをかまれて、血がずっと出ている感じ、男性でした
Q.その人は、なぜかまれた?
怖がってジタバタして、イルカも興奮してかんだ
遊びがエスカレート? “甘噛み” が “かみつき”に
相次ぐ被害。実は、めざまし8では、6月24日の放送でこのイルカについて取り上げていました。

しかし、この時は5月に撮影された映像を使い、海水浴場に現れたイルカとして紹介。体をすり寄せ、甘えるような仕草で、大きく口を開けて近づくイルカの様子を伝えました。
この時からすでに、人に対する強い執着を示していたものの、「甘噛み」していたのに対し、7月に撮影された映像では、人の足に噛みつくような姿が…。
こうした様子について、アジア動物医療研究センターのセンター長、パンク町田氏は…
アジア動物医療研究センター・センター長 パンク町田氏:
初めは好奇心をもって近寄ったと思うんですけども、ちょっとつつくなり、かむなりなんかしてみても、安全なんだという事を理解したんだと思います。それでその遊びがだんだんエスカレートしてきたのだと思います
人に慣れることで、イルカにとっての遊びが、徐々にエスカレートしてきた可能性があると指摘。イルカにとってはかつてと変わらず、悪気のない遊びでも、人間に対する危険性は、より高くなっているといいます。
アジア動物医療研究センター・センター長 パンク町田氏:
(全速でぶつかってきたら)めちゃくちゃ大変じゃないですかね。バイクがぶつかってくるくらいの勢いじゃないですか。内臓破裂くらいしたってなんの不思議もない。イルカがパニックを起こしたときに、巻き込まれないようにしないと
全速だと「バイクくらいの勢い」…遭遇した場合の対処法
イルカによるかみつき被害で、改めて浮き彫りとなった人と野生動物との“距離感”の難しさ。福井市では、イルカが嫌いな音を発する超音波発生装置を6台購入。目撃されている「鷹巣海水浴場」と「越廼海水浴場」に提供しています。

では野生のイルカに遭遇した場合どう対処すればいいのでしょうか。パンク町田氏によると、「深い場所では接近しない」「浅瀬で遭遇した場合はすぐに砂浜に上がる」「餌付けしない」「直接触れずに陸地から観察する」ことが重要だということです。
(めざまし8 7月27日放送)