安倍元首相が銃撃された事件で、逮捕された容疑者の男が、事件前に送っていたとされる手紙の存在が明らかになりました。そこには、旧統一教会とのこれまでのいきさつが綴られ、安倍元総理について、「本来の敵ではないのです」などと書かれていました。

安倍元首相殺害示唆の手紙 応援演説場所周辺から投函か

山上徹也容疑者とみられる人物が書いた、安倍元首相殺害を示唆した手紙。送り先は、旧統一教会、現在の世界平和統一家庭連合を批判するブログを運営する、山陰地方のフリーライターの男性です。手紙には、自らの生い立ち、そして、これまでのいきさつが綴られていました。

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山上容疑者が書いたとみられる手紙:
私と統一教会の因縁は約30年前に遡ります。
母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言って過言ではありません。

封筒の消印を見ると、差し出した場所は「岡山」。「岡山」といえば、事件前日、安倍元首相が応援演説を行った場所です。

この演説の約1時間前、会場近くの防犯カメラには、半袖姿にショルダーバッグを提げた山上容疑者とみられる男が映っていました。この周辺から殺害を示唆する手紙を送っていたのでしょうか。手紙には、銃に関する記載も。

山上容疑者が書いたとみられる手紙:
私は「喉から手が出るほど銃が欲しい」と書きましたが あの時からこれまで、銃の入手に費やして参りました。その様はまるで生活の全てを偽救世主のために投げ打つ統一教会員。方向は真逆でも、よく似たものでもありました。

旧統一教会を激しく批判「安倍は本来の敵ではない」

旧統一教会については次のように記しています。

山上容疑者が書いたとみられる手紙:
世界中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、その現実化に手段も結果も問わない自称現人神。私はそのような人間、それを現実に神と崇める集団、それが存在する社会、それらを「人類の恥」と書きましたが、今もそれは変わりません。苦々しくは思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません。

旧統一教会を厳しく批判する一方で、安倍元首相については「本来の敵ではない」と綴っていました。そして、手紙の最後には。

山上容疑者が書いたとみられる手紙:
安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません。

伯父が明かす山上容疑者“凄絶人生”

「本来の敵ではない」としながらも、安倍元首相を追い回していた山上容疑者。事件の背景について、容疑者の伯父が語りました。

山上徹也容疑者の伯父:
(母親の旧統一)教会入会の時期です。平成10年(1998年)という話がありますね。平成3年(1991年)です

11日の会見で、旧統一教会側が明らかにした母親の入会時期は1998年。伯父によると、それより7年も前に、すでに入会していたというのです。山上容疑者が4歳のころ、父親が自殺。兄に小児がんが見つかるなどしたことがきっかけで、母親は入会したといいます。

母親の献金総額1億円超か 生活困窮…自殺未遂も

次に伯父が語ったのは、入会後の母親の献金の実態でした。

山上徹也容疑者の伯父:
入会とほぼ同時に2000万円、献金。さらにすぐ3000万円

入会後、すぐに合計5000万円もの献金を行ったという山上容疑者の母親。さらに、その後もエスカレートしていきます。

山上徹也容疑者の伯父:
そのあと3年後ぐらいに、現金で1000万円。合計6000万円ですね。その原資は(山上容疑者の父親の)保険金です。命の代償です。(その後母親の)お父さんから会社の事務所の土地を相続して2000万円。自宅の処分が2000万円。これが総計1億円なんですね。保険金と不動産でね。

亡くなった夫の保険金と、相続した不動産などを売却することで、母親は総額1億円以上もの献金を行ったというのです。伯父によると、この巨額の献金によって、家族の生活は破たん。捜査関係者によると、山上容疑者は、旧統一教会について、「20~30年前から恨みをもっていた」と供述していることも分かっています。

母親が1億円の献金をしたというのは、事実なのか。
めざまし8は改めて、旧統一教会側を取材しました。

旧統一教会側の回答:
母親の献金記録が存在せず、現在調査中です。献金が「高額」であるか否かも各個人によって異なる相対的なものであり、一律に回答することはできません

献金を行った母親は、2002年に破産。大学進学をあきらめた山上容疑者は、その年の8月、海上自衛隊に入隊します。しかし、山上容疑者の伯父によるとその3年後、自殺未遂をしていたといいます。

山上徹也容疑者の伯父:
平成17年1月に徹也が自殺未遂した理由ですけども、教会によって兄貴と妹が生活困窮してるわけですね。そこへ自分の死亡保険金を渡す。兄貴も妹もめちゃくちゃになってるんで、自分の命でそれを払うという感じですよね。(山上容疑者は)海自の事情聴取に述べているわけですよ「統一教会によって人生がめちゃくちゃになった」と

山上容疑者は、自らの命と引き換えに、2人に保険金を残そうとしたというのです。
母親の入信によって一変した山上容疑者と家族の生活。

母親は破産後も献金? それぞれの主張は

献金の実態について、旧統一教会側は、11日の会見でこう説明していました。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会) 田中富広会長:
本人の意思なくしては、高額献金もできませんので、それにおいては私たちも感謝して、志を受け止めております。

生活が破綻した信者への対応についてはこう述べていました。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会) 田中富広会長:
破綻されているということが、こちらで知っていた立場で、さらにそこに献金を願う、あるいは要求するということはありません。またそのように指導はしておりません。

しかし、伯父は、こう反論します。

山上徹也容疑者の伯父:
破産以降は、統一教会の田中さん、献金受けてませんと、真っ赤な嘘。破産後も行き続けてるとは本人(母親)言ってましたよ。「献金はしてるのか?」と聞いたら、今、あんまり
稼ぎがないので、額的には違うとは言ってましたね。それでも献金してるニュアンスだった

この点についても、改めて、旧統一教会側を取材しました。

旧統一教会側の回答:
山上容疑者の母親が2002年以降に実際にどのくらいの献金をされたのか、詳細は把握できていません。なお、当法人が信徒に対して献金を要求することはなく、信徒は神に対する信仰と感謝に基づいて自主的に献金を捧げています。

破産後の母親の献金額については、「詳細は把握できていない」という回答でした。母親の破産後、伯父は旧統一教会側に対し、献金の返還を要求。

山上徹也容疑者の伯父:
(旧統一教会側に)破産の内容を全部知らせた。それと献金の一覧、全部出せと。そしたら統一教会の方が5000万円で勘弁してくださいと言ってきた。

旧統一教会側は、2005年6月から2014年9月までに、月々30~40万円、合計5000万円を返金したというのです。この返金について、旧統一教会は。

旧統一教会側の回答:
5000万円が返金された経緯や金額が5000万円となった理由について、詳細は把握できていません

返済の事実は認めつつも、「詳細は把握できていない」と回答しました。

旧統一教会が声明文「トラブルがゼロになったという意味ではない」

また、11日の会見で田中会長から「2009年以降、コンプライアンスを徹底したことでトラブルはありません」という趣旨の発言がありましたが、これに対し全国霊感商法対策弁護士連絡会の山口広弁護士は「2009年以降『全く問題になっていません』と言っていますが全くの嘘です」と反論しました。

そして旧統一教会は17日、新たな声明文を報道機関宛てに発表しました。

その中で、「事実に反する内容や憶測に基づく報道が多い」と指摘。また、「2009年以降はトラブルが起きていない」との発言について、
「2009年のコンプライアンス宣言以降は信徒たちのコンプライアンス遵守の結果が大きく表れているという趣旨。それまでのようなトラブルがゼロになったという意味ではありません。その点は言葉不足で誤解を招いてしまったことを率直にお詫び申し上げます」という内容でした。
さらに、声明文の中で山上容疑者一家について、

「山上徹也容疑者の母親が救済を求めて当法人の信仰を持つに至ったにもかかわらず、結果として山上家庭にこのような悲劇が起きてしまったとするならば、
(中略)
当法人が十分に支えきれなかったことを率直に認めざるを得ません」ということも書かれていました。

(めざまし8 7月18日放送)