広島県三原市でちょっと変わった観光キャンペーンが行われている。

「三原車内寝泊計画」という一風変わったネーミング。キャンピングカーを使って観光客を呼び込む、ユニークな戦略を取材した。

キャンピングカーが体験型観光戦略の軸に 

瀬戸内海の島々と三原市をフェリーや高速船で繋ぐ三原港。その敷地の一角にキャンピングカーがひと際、目立つように置かれている。この車が三原市の新たな観光戦略のカギを握っている。

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カーステイ営業責任者・野瀬勇一郎さん:
この車内寝泊計画は、キャンピングカーを軸にして観光客誘致をはかろうと。三原市をキャンピグカーで来やすい街にする。これを数年かけて定着させていきたい

三原市を「日本で最もキャンピングカーにやさしい街」と銘打ち、キャンプ場や商店の空きスペースを車中泊スポットとして売り出し、観光客を呼び込もうというのだ。進めているのは、三原市で体験型観光を取り扱うKOTOYAと、キャンピングカーのレンタル・シェアリングサービスを手掛ける横浜市のカーステイ。

KOTOYA・泉太貴社長:
コト体験を開発、販売する会社だったんです。そのコト体験が、三原周辺に点在しているけども、つながるきっかけが無かったので。点と点をつなげるキャンピングカーがあれば、もっといろんな体験に使ってもらえる可能性がある。今、港で貸し出しをしていますが、「キャンピングカーよく見かけるね」と声かけてくれる方が増えてきた。ちょっと変わってきたなと肌で感じます

しかし、なぜ三原で車中泊なのか?

交通インフラが整い、海や山の観光地が豊富

カーステイ・野瀬さん:
三原は空港があり、新幹線の駅があり、港がある。またフェリーもあって、高速船が使える。非常に交通インフラが整っている。その場所をベースにキャンピングカーで回っていく。例えば、瀬戸内の海であったり、空港側の山側とか。そういった宿がない場所でもキャンピングカーで楽しめる場所が非常にあるということで、ものすごいポテンシャルがある

プロジェクトが本格的にスタートしたのは2021年10月。三原市周辺で車中泊のモニターツアーも行われた。参加者はどのように受け止めたのか。

体験会に参加した中村克幸さん:
海に囲まれて自然の中でいろいろなものを見て回ったり、鮮魚店が海鮮バーベキューみたいなものを用意していたのでソロストーブで焼いて食べたり。自分にとっては有意義な体験をさせてもらった

体験会に参加した中荒井李華さん:
もともと一人旅が好きだったのですが、観光地が山の中にあったりすると近くにホテルがなかったりとか、そういうのが全部解消される点では結構いいなと

次のターゲットは海水浴場 電源など設置

「すなみ海浜公園」は三原市で人気の海水浴スポット。今年度中に車中泊スポットを設置するべく、準備を進めている。

カーステイ営業責任者・野瀬勇一郎さん:
車が停まってることを考えると、やはりあそこが一番でしょう

三原市すなみ海浜公園広報・磯根真夏さん:
そうですね、フェリーも通りますし

カーステイ営業責任者・野瀬勇一郎さん:
単に海を楽しむというよりは、船が行き来していることも感じられれる

有料の車中泊スペースは駐車場の中でも特に景色のよい場所に。さらに、あると嬉しい設備も検討されている。

三原市すなみ海浜公園広報・磯根真夏さん:
電源を用意したりとか。お手洗いの横のシャワールームは通常、海水浴シーズンしか使えないのですが、温水シャワーを年中使えるようにしたい。すなみ海浜公園に車中泊スペースを目的として来ていただける。そこから素敵なロケーションで、景色を見ながら癒されてもらって。それをたくさんの人に発信していただければ

ペット連れ客のために 宿泊施設でも

車中泊スペースは、ホテルの駐車場の一角にも。ホテルにとってどんなメリットがあるのか?

ホテルエリアワン広島ウイング・名倉みお支配人:
ペットをお連れのお客さまから、車でエンジンをかけていたいとか、車の中で一緒に眠りたいというお問い合わせいただくことが多くて。事情を伺ってお断りしたり、OKしたりしているんですが、車中泊を提供しているということになれば、泊まられる方も気兼ねなく、気持ちよくご利用頂けるのではないかと

フロントでチェックインして車中泊代を支払うと、ホテルのロビーやドリンクなどのサービスが利用できる。また別に料金を支払えば、館内の温泉やレストランも利用でき、宿泊施設にとってはこうした売上も期待することの一つ。

こうした有料の車中泊スペースは2021年まで三原市にはなかったが、現在6カ所にまで増え、今後もさらに増える見込みだ。

民間企業だけでなく、三原市もキャンピングカー観光の可能性を探っている。

三原市 経営企画部・植村正宏部長:
三原駅周辺にはホテルがたくさんありますが、一歩離れたところには宿泊施設が少ないといった課題がある。今回の車内寝泊計画は、そういった課題を解決できる大きな手段地ということで、一緒に取り組んでいるところです

キャンピングカーも貸し出し 三原から広島全域へ

さらに、車中泊ができる車のレンタルスポットも三原市周辺で拡充されている。

ネッツトヨタ広島のグループ会社・ウェルビー広島は、軽キャンピングカーを三原市で貸し出している。車内には携帯型のバッテリーがあり、車をとめても半日程度は冷蔵庫が使用可能、フルフラットシートは大人2人が寝られる。

カーステイ営業責任者・野瀬勇一郎さん:
ちなみに、おいくらでのシェアリングでしたっけ?

ウェルビー広島営業部・吉弘直文部長:
これは1日で7300円

カーステイ営業責任者・野瀬勇一郎さん:
ものすごいリーズナブルで、サイズもちょうどいいですもんね

三原市だけのレンタルにとどまらず、キャンプ人気を受け、県内の別の場所でも借りられるように検討中だ。

ウェルビー広島営業部・吉弘直文部長:
基本的には3台登録しようかと思っているので、準備を進めている段階です

現在は三原市周辺で展開している車内寝泊計画。さらに先を見据えて、広島県とも協議を進めている。

KOTOYA・泉太貴社長:
2021年にカーステイさんから声をかけて頂いて。最初はもうキャンピングカーっていう言葉がちょっと距離が遠すぎて、どういう魅力があるのかがわからなかったんです。地域のたくさんの魅力をつなげていくキャンピングカーの活用はすごく面白いし、広島県全域での可能性もあると思っていて。一生懸命広げていきたい

カーステイ営業責任者・野瀬勇一郎さん:
やっさ祭り(8月12日~14日)に合わせて車中泊のイベントも行う予定ですが、多くの方々に三原で泊まってもらう。それもキャンピングカーでの宿泊。新しい三原で体験できるものを付け加えた状態で、三原がいいよねと思ってもらいながら、また2回、3回と来てもらう。そんなきっかけ作りをしたい

2021年10月にスタートした三原車内寝泊計画。キャンピングカーでノマドのように三原を巡る新しい観光のスタイルが定着するのか、本格的な取り組みはこれからだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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