2020年、福岡市の商業施設で、女性が殺害された事件の裁判員裁判。殺人などの罪に問われている当時15歳の少年について、小学校時の元担任は「学校教育の限界を完全に超えていた」とその暴力性を明らかにした。
一方で少年は「家でのストレスなどで、外でストレス発散していた」とし、女性に包丁を向けたときの気持ちについて「母親と姿が重なり怒った」と語った。

7月7日に福岡地裁で開かれた裁判員裁判
7月7日に福岡地裁で開かれた裁判員裁判
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殺人などの罪に問われているのは、17歳の少年だ。起訴状などによると、少年は15歳だった2020年8月、福岡市の商業施設1階の女子トイレ内で、買い物に訪れていた面識のない女性(当時21)を包丁で刺し殺害するなどした罪に問われている。

7月7日に福岡地裁で開かれた裁判員裁判では、少年の姿が見えないようついたてが設けられ、少年に対する被告人質問が行われた。

少年の元担任「命を狙いに来ている」「学校教育の限界を完全に超えた」

質問は、初公判で弁護側が読み上げた、少年が小学4年生の時に担任だった女性の供述調書をもとに始まった。

少年の元担任の女性:
少年は、父・母・姉・兄との5人家族。少年は家庭環境に問題があった。
父親からは電話でのクレームが度々あり、「お前が来い! お前の対応が悪いから子どもが言うこと聞かないんだ! お前を辞めさせてやる!」と言われた。母親は、自分で家事ができない。料理ができない

さらに、祖父についても…

少年の元担任の女性:
祖父は学校運営協議会の会長で、クレーマーだった。少年が車のドアに挟まれたとき、「先生のせいにして、カードを買ってもらう。ケガが証拠になる。おじいちゃんに言って先生をやめさせる」と言うことがあった

そして、少年本人について元担任の女性は「少年は、人間関係を冷静に見ることができる」と見ていた。九州南部で生まれ育った少年は、弁護側によると、小学校2年の頃から学校でよく暴れるようになり、3年生の頃には成人向けの精神科に入院したが、暴力性が治まることはなかったという。

少年の元担任の女性:
少年は、数えきれないくらいの問題を起こした。教諭に対して、殺すぞと暴言を吐く。女の子の髪を引っ張る、腹を蹴る。ほかの児童の首を絞める。首を絞めた場面では、教諭が仲裁に入ったので大事には至らなかったが、少年を見て、命を狙いに来ていると感じた

さらに、少年についてこのように続けた。

少年の元担任の女性:
暴力を振るうのは、自分よりも体の小さい男の子や、女の子など。暴力を振るう相手を選んでいた。少年は学校教育の限界を完全に超えていた。
事件を聞いた時、「少年ならやりかねない」と思った

元担任は「限界を完全に超えていた」と語った
元担任は「限界を完全に超えていた」と語った

父親が兄に暴力ふるい…兄が「ストレスで自分に」

小学校4年当時の担任が、指導の限界を感じていたという強い暴力性ー。これを受けて、弁護側が少年に質問を行った。少年の家庭環境についての被告人質問だ。

弁護側:
(元担任の供述調書を聞いて)どう思った?
少年:
自分勝手な行動をしていたなと思います

弁護側:
(自分は)どんな子どもだった?
少年:
暴力的な子どもだった

弁護側:
原因は?
少年:
家でのストレスなどで、外でストレス発散していた

弁護側:
家でのストレスとは?
少年:
親とうまくいかなかった。兄弟ともうまくいかなかった

弁護側:
けんかは誰と?
少年:
兄とけんかしていた

弁護側:
兄とは、どういうことでけんかしていた?
少年:
テレビのリモコンで。どっちが先に見るかで、よくけんかしていた

弁護側:
兄とは何歳差?
少年:
兄とは4歳差です

弁護側:
兄から暴力は?
少年:
けんかでは、よく首を絞められた

弁護側:
止めてくれる人はいなかった?
少年:
誰もいなかった

弁護側:
なぜ、あなたに暴力を?
少年:
兄が父親から暴力をふるわれ、(その)ストレスで自分に

弁護側:
どんな暴力?
少年:
殴ったり、蹴ったり。ほうきで殴ったり

事件前日に保護施設を抜け出したことについて質問が及ぶと、次のように語った。

弁護側:
なぜ、保護施設を出ていこうと思った?
少年:
保護施設の人と、うまくなじめなくて

被害女性に自首をすすめられ…「母親と姿が重なり怒り」

また、事件当日の状況についての弁護側被告人質問では―。

弁護側:
(事件現場の)商業施設にたどり着いたのは、たまたま?
少年:
たまたま着きました

弁護側:
商業施設に入ったのは、なぜ?
少年:
スタイルのいい女の人が通りかかって、その人について行ったら商業施設に入った

少年はこの女性を見失い、その後、施設内で被害女性を見かけたとされる。

弁護側:
包丁を盗んだのは何のため?
少年:
空腹でしたので、自殺しようと思って包丁を盗みました

弁護側:
自殺願望があった?
少年:
強くあった

弁護側:
なぜ、女子トイレまでついていった?
少年:
…自分でもわからない

弁護側:
性的目的は本音?
少年:
当時は自暴自棄だったので、性的目的と言ってしまいました

弁護側:
被害女性に、なぜ包丁を向けることになった?
少年:
自分の悪い癖で、何も言わないでも自分が困っている状況を分かってくれるだろうと思い、自分勝手な行動に出た

弁護側:
女性の反応は?
少年:
とても驚いていらっしゃいました

弁護側:
(女性に)声をかけられた?
少年:
自首をすすめられました

弁護側:
(女性の)行動としては?
少年:
包丁の持ち手を持って、自首をすすめられました

弁護側:
どう思って、どう反応した?
少年:
母親と姿が重なり、怒ってしまいました

弁護側:
「母親と重なった」というのを詳しく
少年:
少年院を出るとき、引き取り手として母のもとへと話が進んでいたのに、直前になって断られて、期待した気持ちが強かったので、その気持ちが重なった

そして、被害女性への気持ちについては次のように語った。

弁護側:
被害女性は正しかったと思いますか?
少年:
正しいと思います

弁護側:
女性をどういう方だと思う?
少年:
優しい方だと思う

弁護側:
被害者に落ち度はない?
少年:
はい

弁護側:
謝罪の言葉は?
少年:
自分の勝手な行動に、将来のことなど、いろんなものを自分の行いで奪ってしまったことは申し訳ないと思います

弁護人の質問に淡々と答えた少年。続く検察側の被告人質問では、犯行時の経緯がさらに詳しく語られた。

(テレビ西日本)