コロナ禍で起きたことの一つが、地方移住の流れ。テレワークの普及で、都市圏の企業に在籍しながら生活拠点は地方という働き方も生まれた。

新型コロナウイルスは、東京の新規感染者が7月12日におよそ4カ月ぶりに1万人を超えるなど油断できない状況が続く。こうした状況で、移住した人たちは地方での生活をどう受け止めているのだろうか。

編集部では以前、地方移住の例として一人の男性を取り上げた。それが、ビジネスデザインの企業「myProduct」(東京都)のCTO・成瀬基樹さん(32)。企業が参加したイベントがきっかけで2020年11月ごろ、東京から静岡市に移住した。

成瀬基樹さん(提供:成瀬さん)
成瀬基樹さん(提供:成瀬さん)
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(参考記事:テレワークで移住するなら静岡がちょうどいい? コロナ禍で実際に東京から移った人に聞いてみた)

移住から1年半…想定外の出来事も体験

成瀬さんは現在も静岡市に住んでいるという。移住生活の実情、人々がコロナ禍をどう受け止めているかなど、イマだから聞きたいことを伺ってみた。


――静岡での生活はどう?移住のその後を教えて。

生活は変わらず、静岡で楽しく暮らしています。東京ではビルや高速道路に囲まれたような場所に住んでいましたが、こちらでは空が広くて心地よさを感じています。私は自宅とシェアオフィスどちらでも働ける環境ですが、基本的にシェアオフィスに向かいます。まん延防止等重点措置などが出ていなければ、向かうようにしていました。自宅作業だと通勤がないので快適ですが、出社すると他人と話せて知見につながることもある。組み合わせられれば、幸せな働き方だと思います。

成瀬さんが利用しているシェアオフィス(提供:成瀬さん)
成瀬さんが利用しているシェアオフィス(提供:成瀬さん)

――移住してよかったこと、逆に移住前が良かったと思うことは?

よかったことは、趣味と仕事で使うプログラミング言語のコミュニティで深く関わる人が増えたことですね。こちらではひとり一人に深く関わることができます。移住前の方が良かったと思うことはほぼありませんが、会社の人と直接顔を合わせることが少なくなったことでしょうか。


――移住後の出来事で印象に残っていることは?

プログラミングのオンライン勉強会で移住体験のお話をする機会がありました。そこで静岡市はいいぞということを話したら、聞いていた人が東京から静岡市に引っ越してきて、同じシェアオフィスで働くようになりました。「成瀬さんですよね。あの話を聞いてきました」と言われてびっくりしたのを覚えています。知らない土地に移住するのは勇気が必要ですが、同じような趣味を持ち、話せる人がいるということで安心したのかもしれません。僕の移住が他人の生活に影響を与えた、面白い出会いですね。

移住体験を聞いて移住した人がいた(画像はイメージ)
移住体験を聞いて移住した人がいた(画像はイメージ)

――成瀬さん自身には、移住での影響はあった?

何気ないことを話せる相手が増えました。シェアオフィスのコワーキングスペースで働きながら他会社の人と話したりします。後は起きる時間が早くなり、生活も朝方に。普段からマスクをしていたり、満員電車に乗らなくなったからかもしれませんが、かぜもひきにくくなりましたね。

地方でも感染対策は徹底。人々の意識は変わってきたのでは

――ここ数年はコロナ禍でもあったが、静岡ではどんな感じ?

静岡だからこうというのはなく、他地域と同じように、マスク着用や手指消毒、体温の検査などを行っています。ただ、ガチガチな規制が緩和されている方向にはあると感じています。飲食店などの規制もまん延防止措置が出たときは厳しくなりますが、解除されると元に戻りますしね。


――コロナに対する、人々の受け止め方は変わっていたりする?

人々の気が緩んでいるのではなく「ここまでなら大丈夫」と思う人が増えた印象はあります。以前はマスク着用は絶対でしたが、今はしっかりを距離をとれていれば外している人もいる。人出も以前は本当の最低限でしたが、今は外を歩いている人が増えたようにも思います。

僕自身も2020年の春(移住前)は親族の法要があっても帰省しませんでしたが、2022年のGWはそうしたことがなくても帰省しました。技術系のグループからも「オフラインで会合をできれば」といった声も出ていると聞いています。人々の意識も変わってきているのだと思います。


――今後の人生で生活拠点を変える可能性はある?

移住のきっかけは会社の関係なので、そこは分かりません。ただ、ここは空が広くて太陽が心地よいですし、東京より家賃も安い。僕は実家が愛知県にあるのですが、帰省しやすくもなりました。僕自身は静岡市が好きなのでここにいたいですね。

自然が豊かなところも静岡の魅力とのこと(提供:成瀬さん)
自然が豊かなところも静岡の魅力とのこと(提供:成瀬さん)

コロナ禍で働き方が見直され移住し、1年半たった今も楽しく生活しているという。
そして成瀬さんの移住体験がきっかけで、さらなる移住も起きていた。こうした出来事が連鎖すれば、地方の活性化や東京の一極集中の解決にもつながるかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。