今、クーラーが止まるのは勘弁して
暑いのは好きなので35度超えの猛暑日が続くのは平気なのだが、電力ひっ迫注意報というのは神経に障る。この暑さで停電しクーラーが止まるかと思うとゾッとするのだ(暑いのだからゾッとするは変だが)。
原子力発電と石炭火力発電を目の敵にし、太陽光などの再生エネルギーに傾斜し過ぎたツケが来ているわけだが、これで政治家もメディアも国民も反省してもっと現実的なエネルギー政策を考えるようになるのだろうか。

この猛暑の中、行われている参院選。FNNによる序盤情勢は、自民が一部を除くほとんどの選挙区で優勢で60議席をうかがい、与党で過半数を大きく上回るという予測だ。立憲、共産、国民などの野党が苦戦する中で維新は議席を大きく増やしそうだ。他のメディアの序盤、中盤情勢も同じような感じだ。
争点は物価高ではない
投票までは10日以上あるのでまだどうなるかわからない。最近フランスとコロンビアで行われた選挙ではどちらも物価高が原因で与党が敗北した。だから日本も物価高がこの選挙の最大の争点だと思われていた。野党が「岸田インフレ」などと主張して政府与党の責任を追及したが、情勢調査を見る限りその訴えは有権者に届いてはいない。
と言うよりこの暑さは物価高を忘れさせるほどのインパクトがある。もし選挙期間中に首都圏が大停電して死者が出るような事態になればどうなるのだろうか。

エネルギー供給を管理している政府与党は当然その責任が問われる。一方でエネルギー危機のたぶん根本原因である「反原発」を強く主張してきた政党に対する批判もまた大きいはずだ。

参院選の争点は直近のウクライナ危機でまず安全保障の問題が大きくクローズアップされた。その後、危機に伴う資源や食料の不足と円高による物価高が浮上した。しかしどうやら安保や物価ではなく争点は「電気」ではないのか。なぜなら物価は上がっているが欧米ほどのひどさではないし、安保については相変わらず日本人は他人事だ。それに比べて真夏の停電でクーラーと冷蔵庫が止まるのは恐怖以外の何物でもない。
政治家がやるべき事は
だから国民民主の玉木代表が再エネ賦課金の徴収を一時的に免除する、というのを急きょ公約に追加したのはセンス良かった。再エネ賦課金というのは太陽光などで発電した電力の買い取りに電力会社が使った費用を国民が払う電力料金に上乗せして徴収するシステムだ。
ただこれで電力不足を直ちに補えるわけではない。止まっている原発と火力発電を再稼働しなければならない。それをできない政治家は猛暑なのに「ポイント2000円分あげるからクーラーを止めてね」などと言う。国民をナメているのだろうか。

この選挙に勝つのはもしかしたら簡単かもしれない。私は、わが党は、エネルギー供給を責任もってやりますという意思を示すことだ。そして具体策をきちんと示すことだ。原発再稼働、火力発電への支援策、さらには再エネ賦課金そのものの見直しなどできることはいくらでもあると思う。
【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】