福井県が、新型コロナウイルスの第1波から第5波までの感染者を追跡調査した結果、約25%が後遺症とみられる症状を発症していた。「目まい」や「真っすぐ歩けない」といった症状に苦しむ女性が、苦しい胸のうちを明かした。

感染1年半後に症状 精密検査の結果は「異常なし」

妹背麻里子さん:
頭の中がふわふわする。目まいで歩けない状態になって、どうしたのだろうと

新型コロナの後遺症が疑われる妹背麻里子さん(69)
新型コロナの後遺症が疑われる妹背麻里子さん(69)
この記事の画像(10枚)

新型コロナに感染したあと体調不良が続くという、妹背麻里子さん(69)。2020年8月、福井市内で経営するカラオケ喫茶で集団感染が発生。自らもデルタ株に感染した。

中等症と診断され、酸素吸入も経験。退院までに約1カ月を要した。後遺症と思われる症状が表れ始めたのは、感染から1年半後の2022年4月だった。

妹背麻里子さん:
真っすぐ歩けない。これまでは疲れもなかったのに。(精密検査を受けたが)結果は異常なしだった。あれは何だったんだろうと。わからないが、同じ症状の人がいると医師に言われた。先生も「未知のウイルスだから5~6年経てば後遺症についてわかるが、2~3年では…」と

結局、経過観察となり、今は症状の回復を待つ日々だ。

福井県が、2020年3月から2021年10月までの感染者約1500人を調査した結果、4人に1人が後遺症とみられる心身の不調を訴えていることが分かった。

最も多いのは味がしないなどの「味覚異常」で、「せき」や「体力の低下」などが続く。

倦怠感や喉上部の炎症 後遺症を訴える患者の味方に

新型コロナの後遺症は、まだ医学的知見が十分に蓄積されておらず、対応できる医療機関も少ない。そんな中、坂井市内のクリニックでは、2022年4月から後遺症を訴える患者を積極的に受け入れ始めた。

まつもと耳鼻咽喉科クリニック・松本順雄院長:
患者の半分くらいは、倦怠感を持っている。寝たきりみたいになって、起き上がれないほどの人もいる。日によって調子がいい日に、やっと受診したという人も

後遺症が疑われる症状で多いのが、喉上部の炎症だ。

まつもと耳鼻咽喉科クリニック・松本順雄院長:
こういうふうに赤く腫れて炎症を起こす

腫れて炎症を起こした喉
腫れて炎症を起こした喉

このクリニックでは、喉の腫れているところにめん棒で塩化亜鉛を塗り、炎症を抑える「Bスポット療法」を行う。このほか、免疫力を高める漢方などを処方することもある。

治療だけでなく、後遺症を訴える患者の辛さを周囲が理解することが大切だと、松本院長は話す。

まつもと耳鼻咽喉科クリニック・松本順雄院長:
感染したときに発症していればわかるが、後からだと「違う病気じゃないか」とか、「本当につらいのか」と家族に受け入れてもらえず、苦労している患者もいる。診察する私がまず理解して味方になり、家族に理解してもらえるよう心がけている

患者の辛さを理解することが大切と話す松本院長
患者の辛さを理解することが大切と話す松本院長

体調不良が続く妹背さんも、1人で抱え込んでしまったという。

妹背麻里子さん:
目まいも誰にも言えない。年のせいかもしれない。後遺症かどうかもわからないのもあり、言えなかった

新型コロナの感染者の約25%は、後遺症とみられる体調不調を感じている。感染や発症、治療中に加えて、治った後の心身のケアにも目を向ける必要がある。

(福井テレビ)

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。