未婚者の男女の約3割がコロナ前と比べて出会いが減っていると感じている。

男女の出会いについてのこんな結果が、内閣府が公表した令和4(2022)年版「少子化社会対策白書」で明らかになった。

内閣府が全国の約1万人を対象に調査したもので、2021年4月~5月時点で出会いを求めている未婚者のうち、13.1%が「新たな出会いが減少した」、17.3%が「新たな出会いが非常に減少した」と回答したのだ。

新型コロナウイルスの感染症拡大前からの出会いの数の変化(画像提供:内閣府)
新型コロナウイルスの感染症拡大前からの出会いの数の変化(画像提供:内閣府)
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実際、2021年の婚姻件数は50万1116 組で、前年の52万5507組より2万4391組減少し、戦後最少となった。

婚姻件数及び婚姻率の年次推移(画像提供:厚生労働省)
婚姻件数及び婚姻率の年次推移(画像提供:厚生労働省)

20代男性の約4割がデートした人数ゼロ

また、結婚を取り巻く状況に関し、デートの人数についても興味深い調査結果を内閣府は発表。

令和4年版の男女共同参画白書によると、これまでのデートした人数が0人と回答した未婚者は、20代女性で約2.5割、20代男性で約4割、30代女性で約2割、30代男性で約3割だった。

これまでの恋人の人数・デートした人数(画像提供:内閣府)
これまでの恋人の人数・デートした人数(画像提供:内閣府)

また、結婚の意思についても調査しており、独身者で「結婚意思あり」と回答したのは、20代では女性が64.6%、男性は54.4%。30代では男女ともに46.4%という結果に。

40代以上では、女性は結婚意思が減る傾向にあり、40代の女性で31.7%、50代女性は13.0%、60代女性は7.9%。一方で男性は、40代が36.0%、50代は26.6%、60代は22.0%と男性の方が結婚願望が高いことが伺えた。

今後の結婚願望 独身者(画像提供:内閣府)
今後の結婚願望 独身者(画像提供:内閣府)

なお「結婚意思なし」と回答をしたのは、女性は20代で14.0%、30代で25.4%。男性は20代で19.3%、30代で26.5%となっており、30代は男女ともに4人に1人が結婚の意思がないことが判明。

積極的に結婚したいと思わない理由について、独身男女で比較すると、女性の場合、上位となった項目は、20~30代で「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」。40~60代でも、これらの項目が上位となったほか、「結婚相手として条件をクリアできる人に巡り合えそうにないから」「結婚という形式に拘る必要性を感じないから」「今のままの生活を続けた方が安心だから」が5割を超えた。

一方で男性は、5割以上となっている項目は無いが、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」が20~30代、40~60代ともに4割前後となっていた。

積極的に結婚したいと思わない理由(画像提供:内閣府)
積極的に結婚したいと思わない理由(画像提供:内閣府)

若い世代の結婚の希望が希望する年齢でかなうようにしたい

結婚を取り巻く環境や、結婚に対する男女の意識として、このような結果が浮かび上がった今回の調査。では、コロナ禍で男女の出会いが減っている点について、少子化への不安はないのだろうか? また今後ウィズコロナにシフトして歯止めはかかるのか?

気になる点を内閣府の子ども・子育て本部に話を聞いた。

――コロナで出会いが減ったという調査結果をどう見ている?

新型コロナウイルス感染症の流行前から、若い世代の結婚をめぐる状況を見ると、男女共に多くの人が「いずれ結婚する」ことを希望しながら、「適当な相手にめぐり会わない」「資金が足りない」などの理由で、その希望がかなえられていない状況にあります。

ご指摘の調査結果からは、新型コロナウイルス感染症の影響下で、出会いの機会が減少していることがうかがえます。コロナ禍における若い方々の意識や行動変化を踏まえ、結婚の希望をかなえるための取組を進める必要があると考えています。


――出会いが減ることで少子化が進む不安はある?

若い世代の男女共に多くの人が、「いずれ結婚する」ことを希望しています。結婚は個人の自由な意思決定に基づくものでありますが、出会いの機会の減少は、結婚の希望の実現を阻むことにつながると考えており、危機感を持つ必要があると考えています。


――ウィズコロナにシフトしたら、出会いの減少に歯止めはかかる?

コロナ禍において、オンラインによる出会いの機会創出の取組は広がってきていると承知しています。また、行動規制の緩和により、今後、対面の機会が増加していくことも考えられます。

一方で、繰り返しになりますが、コロナの流行前から、若い世代の男女共に、多くの人が「いずれ結婚する」ことを希望しながら、「適当な相手にめぐり会わない」「資金が足りない」などの理由で、その希望がかなえられていない状況にあります。コロナ禍による若い人々の意識・行動の変化を踏まえつつ、若い世代の結婚の希望が、希望する年齢でかなうような環境を整備することが必要だと考えています。

オンライン婚活イベントのカップル成立率が約5割の報告も

――コロナ対策を踏まえた少子化対策の取り組みで、男女の出会いという面で行っていることは?

コロナ禍は、少子化対策の取組の現場である地方公共団体にも大きな影響を及ぼしました。他方、オンラインを活用した結婚相談など、コロナ禍を踏まえた新たな取組も広がりをみせています。内閣府では、このような地方公共団体のオンライン化の取組を地域少子化対策重点推進交付金により支援しています。


――その成果はあった?

少子化社会対策白書でも取り上げられているとおり、結婚支援センターのオンライン化を実施した愛媛県では、センターの会員新規登録者数のうち、オンラインでの登録者数は約86%(R4.2末時点)を占めました。

また、対面型の婚活イベントのカップル成立率が約3割だったのに対し、オンライン婚活イベントのカップル成立率は約5割に達したとの報告を受けています。

このようなオンラインを活用した取組が、コロナ禍を契機とした新たな結婚支援の取組の一つとして定着することにより、結婚を希望する方々がその希望をかなえられるような環境整備に引き続き、取り組んでいきます。

※イメージ
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結婚で自由でいられなくなる、結婚生活を送る経済力がない

コロナで出会いが減った実情や少子化対策の取り組みの現状は分かった。では、結婚に対する意識が変わり、家族の在り方も変わる中で、今後、どんな政策や必要なのだろうか?

こちらは内閣府男女共同参画局総務課調査室の担当者に話を聞いた。


――30代未婚の4人に1人が結婚願望なしについてどう思う?

我が国では、離婚件数は結婚件数の3分の1に上り、50歳時点で配偶者のいない人の割合が男女ともに約3割に達するなど、家族の姿や人々の人生が昭和の時代から大きく変化・多様化しています。御指摘のデータは、このような変化・多様化の背景にある、人々の意識も多様化していることを表しているものであると考えられます。

男女共同参画白書では、独身者が「積極的に結婚したいと思わない理由」について紹介しています。男女ともに、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」といった回答が多いですが、男女間で差があり、女性の方が高いものは「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」、男性の方が高いものは「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」となっています。

これらの回答から、今の生活に満足しているため、結婚によって自由でいられなくなると考える人や、結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定なために結婚したいと思わない人がいると考えられます。


――女性は40代以降で、結婚の意思が下がっている点をどうみる?

独身者のうち、これまで結婚経験のない人に「結婚したい理由」を聞くと、20~30代、40~60代の男女ともに「好きな人と一緒に生活がしたいから」が最も多いですが、20~30代の女性の場合は「子供が欲しいから」「家族を持ちたいから」といった理由がこれに続きます。

逆に独身者が「積極的に結婚したいと思わない理由」について見てみると、男女間で差があり、女性の方が高いものは「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」などですが、これらの項目間の差は、20~30代よりも40~60代と年代が上がるほど大きくなります。

20~30代の女性は「子供が欲しいから」といった理由で結婚を望むものの、40代以降は、仕事・家事・育児・介護を背負うことになりそうなので、結婚はしたくないと考える可能性があります。この背景には、社会や周囲、自分自身のアンコンシャス・バイアスの他、仕事・家事・育児・介護のバランスをとることに苦労している既婚女性の姿を見て判断している可能性もあると考えられます。


――一方で、40代~60代男性の24割が結婚願望を持っている点をどうみる?

独身者のうち、これまで結婚経験のない人の「結婚したい理由」を見ると、40~60代の男性で、女性よりも高い項目は、「子供が欲しいから」「家族を持ちたいから」「精神的な安らぎの場を持ちたいから」「一人でいるのは寂しいから」となっています。

税や社会保障制度は、昭和の時代の“家族”を前提に作られている

――世帯ではなく個人を単位とする制度設計がこれから必要になってくるということ?

男女共同参画白書では、世帯単位から個人単位での保障への切り替えが必要であると提言しています。家族の姿が変化し、世帯そのものが流動化しているなかで、世帯単位を前提とする制度がそのまま続いていけば、制度のひずみによる問題も大きくなります。

例えば、夫の扶養の範囲内で働くため就業調整を続けてきた女性が離婚すると、低年金に直面する可能性があります。また、現に、コロナ下では、離婚直後のために受け取るべき給付金が受け取れないなどといった問題が顕在化しました。


――変化・多様化に対応した制度設計、政策とは具体的にどんなもの?

例えば、我が国の税・社会保障制度等は、「男性労働者と専業主婦と子供」という昭和の時代の家族の姿を前提に作られています。「配偶者控除」や「第3号被保険者制度」は、女性の中でも、結婚しており、かつ、本人の年収が一定以下の人のみが恩恵を受けられるようになっています。

一定の年収を超えると税や年金負担が増える、いわゆる「年収の壁」は、女性を専業主婦、または家計の補助としての就労にとどめる一因になっているのではないかと考えられます。実際に、結婚している非正規雇用労働の女性では、所得が50~99万円の者の57.5%、所得が100~149万円の者の54.4%が就業調整をしていると回答しており、有業かつ結婚している女性の約6割は年間所得が200万円未満となっています。このような所得の低い既婚女性は、配偶者との離別や死別で貧困に陥る可能性が高くなりますし、DVを受けていても、経済的自立が出来なければ、逃げられず、身体的・精神的に追い詰められるリスクもあります。

さらに、50歳時点で配偶者のいない人の割合は2020年時点で男女ともに約3割となっていますが、こうした人たちは制度の恩恵を受けることができません。家族の姿や人々の人生が多様化し、現在の制度の前提になっている「男性労働者と専業主婦と子供」という家族モデルに当てはまらない人たちが増える中、公平性の問題も重要になっています。

こうした状況を踏まえ、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」、いわゆる「女性版骨太の方針」では、〈1〉現行の制度は有業調整を選択する人を増やしているのではないか、〈2〉配偶者の経済力に依存しやすい制度は、男女間賃金格差も相まって、女性の経済的困窮に陥るリスクを高める結果となっているのではないか、〈3〉現行の制度は分配の観点から公平な仕組みとなっていないのではないか、という3つの観点から、社会保障制度や税制等について検討を行うこととしています。

これは、あくまで一例ですが、男女共同参画を進めるに当たっては、我が国の家族と人々の人生の姿は昭和の時代から一変している、ということを念頭におき、幅広い分野で制度・政策を点検、見直していく必要があると考えています。



コロナで出会いの場が減少し、そして昭和の時代と異なり、家族の姿が多様化している現在。これからは、結婚を望む人への出会いの場の創出ととともに、今までの家族モデルに当てはまらない人たちのことも考えて、社会保障制度や税制などの制度の見直しも必要なのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。