時代が変われば、結婚や夫婦のあるべきカタチも変わってくる。事実婚や同性婚など結婚のスタイルも多種多様だ。今月の特集「夫婦のカタチ」の中で、今回は現代の結婚観について迫っていく。

年々、生涯未婚率は上昇している。同時に、「結婚したから一人前になるわけではない」という考え方が、浸透しつつあるように感じられる。もしかしたら、この先「結婚」という制度自体が不要になるのではないか、とさえ思えてくる。

そこで、『結婚不要社会』(朝日新書)の著者である社会学者・山田昌弘さんに、現在の日本における“結婚観”、この先の社会の結婚のカタチについて聞いた。

戦後から50~60年変わらない日本人の“結婚観”

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「未婚率が年々増加していることは確かです。ただ、事実婚や同棲、非嫡出子の数は増えていません。このデータから、“結婚を選ばない人”が増えているわけではなく、“結婚したくてもできない人”が増えているのだと読み取れます」

内閣府が発表した「少子化社会対策白書」(令和2年版)の50歳時の未婚割合をみると、1990年の国勢調査では男性5.6%、女性4.3%であったが、そこから増加し、2015年は男性23.4%、女性14.1%と男女ともに大きく上昇している。

“結婚したくてもできない人”が増えている背景には、男性の収入不安定化が関係しているとのこと。

「収入が不安定な男性が増えていますし、女性は『収入が安定した男性と出会えたら、結婚しようかな』と考えている人が多いのです。だから、未婚率が上がっているのです。現代の女性も、収入が安定していてやさしい男性がいたら、結婚したいと思っているはずです」

つまり、女性が結婚相手に求めているものは「安定的な収入」ということになる。夫婦共働きが主流となっている今でも、収入は大きな条件の1つといえるようだ。

そして、女性側が抱く結婚相手の条件が時代を超えても変わらないからこそ、現代の男性は低収入であるために自信が持てず、女性にアプローチしにくいという、負の連鎖を生み出してしまっているのかもしれない。

「結婚相手に求めるものは、戦後50~60年くらい変わっていないでしょうね。妻は夫に安定的な収入を求めていますし、夫は妻に家事や子育てをしてほしい。日本人の結婚観のベースとなる考え方は、これに尽きると思います」

ベースとなる結婚観が形成されたのは、1950年代以降とのこと。それまで多くの世帯が農家だった日本では、夫婦ともに田畑に出て働いていた。しかし、工業化に伴って、男性が会社や工場に出向き、女性が家事や育児を担うスタイルが一般化していったのだ。

「現在は男性の収入低下で、共働きしなければ生活が回らなくなってきたので、基本的な結婚観に+αの要素が加わってきています。例えば、『夫にも家事をしてほしい』『妻にも働いてほしい』という考えです。ただし、あくまでもベースの結婚観がある前提なので、収入が低い男性は結婚相手として選ばれにくいのです」

「マッチングアプリ」は“日本人らしい”出会い方

未婚率は上がっている一方で、マッチングアプリが急速に普及している。山田さんが話す通り、“結婚を選ばない人”が増えているわけではなさそうだ。

「20年前までは、『結婚を先延ばしにしても恋愛を楽しみたい』という人が多くいました。しかし、現代の若い世代は『恋愛をすっ飛ばして、安定した生活を手に入れたい』と考える人が増えているように感じられます。そのため、若い人もマッチングアプリを取り入れているのでしょう」

さらに、マッチングアプリの普及には、日本人ならではの結婚観が影響しているという。

「日本人はリスクを嫌う傾向が強いので、学校や職場で出会った人との結婚が多数派です。学生から付き合っていれば就職先のレベルがわかり、職場が一緒なら年収がわかりますよね。マッチングアプリでは年齢や収入の詐称が多少はあるかもしれませんが、出会う前からある程度の情報を得られるので、日本人に向いている出会い方だといえます」

山田さんの話では、日本人で「飛行機の席が隣だった」「旅先で出会った」という偶然の出会いから結婚に発展するケースは、5%程度なのだそう。欧米では、偶然の出会いが実るケースは日本の数倍。結婚にも国民性が出るようだ。

結婚相手に「安定した職業」を望む女性が増加

現在、議論されている「夫婦別姓」や「同性婚」が認可されれば、未婚率は低下すると考えられる。

「地方では夫婦別姓が認められないがために、結婚相手が見つからない女性も多いのです。家を継がなければならないけれど、婿養子に入ってくれる男性がいないため、結婚できない。夫婦別姓が認可されれば、後継ぎ問題を解決しやすくなり、結婚できる人は増えるでしょう」

結婚しやすい環境が整い、収入が安定すれば、未婚率が低下していく可能性があるといえそうだ。

「いつの時代も“結婚を選ばない人”はいますが、全体の数%程度。将来にわたって信頼できるパートナーが欲しいと考え、結婚を望む人は多く、婚姻制度がなくなることはないでしょう。ただ、男性の収入が低いままであれば、未婚率は増え、格差は拡大していくと思います」

もちろん安定した結婚生活を手に入れることは大事だが、急激に収入を上げることは難しい。低収入の男性でも、女性に結婚相手として意識してもらえる方法はないものだろうか。

「低収入の男性は、収入以外の面をアピールすることが大切になるでしょう。先に述べた+αの結婚観が加わってきているため、例えば、共働きできるよう、同棲時から家事をしっかり分担する、子育てに積極的に関わろうとする姿勢を見せるといった努力が、結婚につながるかもしれません」

結婚という制度自体がなくなることはなさそうだが、結婚相手選びが困難な時代になっていくことが予想される。結婚を望むのであれば、自分磨きに励むほかに道はなさそうだ。

山田昌弘
中央大学文学部教授、社会学者。専門は家族社会学。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学後、東京学芸大学教授を経て、2008年より現職。愛情やお金を切り口として、親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行う。「パラサイト・シングル」「希望格差社会」「婚活」という言葉を世に出したことでも知られる。著書は『結婚不要社会』(朝日新書)、『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~』(光文社新書)など多数。

取材・文=有竹亮介(verb)