自民党の青年局(青年局長・小倉將信衆院議員)は、27日、NFT(非代替性トークン)やメタバース技術を活用した集会を行うと明らかにした。
28日に行われる集会で、譲渡や売却ができない形で、岸田首相や小泉進次郎前環境相の顔写真つきのトークン(デジタル上の出席証明・記念バッジ)を配布するほか、6月上旬にはメタバース(3次元の仮想空間)で街頭演説を行う予定だ。小倉青年局長は、「青年局は社内ベンチャーだ。新しいことに取り組むことで、政治のあり方を変えていく大きな第一歩になればいい」と強調した。
岸田首相も言及「Web3.0」
「ブロックチェーンやNFT、メタバースなどWeb3.0の推進のための環境整備を含め新たなサービスが生まれやすい社会を実現いたします」(5月5日)
この記事の画像(6枚)岸田首相が外遊先のイギリスや国会でも言及した、次世代インターネット3.0。
Web3.0とは、ウェブサイトを用いた一方向の世界であるWeb1.0、アプリやSNSで双方向の意思疎通が可能となるWeb2.0とは異なる次元のもので、取引を記録する技術であるブロックチェーンの技術を使用し、替えが効かない「唯一無二」であるということを証明する技術が用いられる世界だ。これにより、デジタル資産の所有者を明確にすることができるようになる。
「今のままだと必ず乗り遅れる」危機感あらわに
Web3.0時代のいわば起爆剤として注目されているのがNFT技術だ。
NFTとは「Non-Fungible Token」の頭文字を取ったもので、「替えが効かない」ことがポイントだ。例えば、お金や市販品は「替えが効く」が、「原画」などは「替えが効かない」ために高い価値を持つことになる。日本は、アニメやゲーム、漫画など多くのコンテンツを持っているため、NFTビジネスにおいて、世界をリードできる可能性を秘めている。
今年に入り、Web3.0時代の新たなデジタル経済圏の覇権をめぐって、アメリカやイギリスなどが相次いで国家戦略の策定を発表するなど、国際競争が急速に広がっている。アメリカのバイデン大統領は3月9日にデジタル資産の研究開発の加速を命じる大統領令に署名したほか、イギリスも4月4日にグレン財務相が、イギリスが世界的なハブにするための計画を発表した。
日本の永田町では、自民党の平将明衆院議員など自民党のデジタル社会推進本部NFT検討PTが3月末に「NFTホワイトペーパー(案)」をとりまとめ、4月末には岸田首相に提言した。
提言書では、「Web3.0(ウェブスリー)時代の到来は日本にとって大きなチャンス。しかし今のままでは必ず乗り遅れる」と指摘した上で、Web3.0時代を見据えた国家戦略を策定する必要性を求めている。さらにWeb3.0の担当大臣を置いて、具体的な経済政策を推進することや諸外国との連携を深めるべきだと提言した。
“岸田トークン”“小泉進次郎トークン”を作成
こうした中、自民党の青年局は27日、NFTやメタバース技術を用いた集会を開くことを公表した。5月末に自民党の青年局で行われる研修会で「岸田総理トークン」や「小泉前大臣トークン」「野田聖子大臣トークン」を配布予定で、譲渡や売却はできず、出席の証明や記念バッジとして活用する。塩崎彰久青年局次長は、「NFTを使って今後会議の出席や意思決定、投票の場にも活用できるかもしれない。まずはNFTに慣れてもらうことで、エンゲージメント(愛着心)の仕方を模索していきたい」と強調した。
また、自民党はWeb3.0の技術の一つであるアバターを介して人々が交流したり、遊ぶことができるオンライン空間である「メタバース空間」を用いた「メタバース演説会」を6月5日の夜に行うことも発表した。アプリ「クラスター」をダウンロードすることで、街頭演説会場に行かなくても演説を聞くことができるというものだ。
メタバース演説会には、河野太郎広報本部長や牧島デジタル相などが参加する予定で、コロナ禍での政治活動や若い世代にアピールするが狙いがある。
NFT施策を推進するためには、利用者・事業者双方の権利保護などの規定が明確化されていないなど課題があり、早急なルール整備が求められている。
こうした中で、政府与党がどのように政策を具体化していくか、注目が集まっている。
(執筆:フジテレビ政治部 阿部桃子)