父親と祖父の遺体を金沢市内の海岸に埋めた息子。金沢地裁は、「更生の見込みがある」として執行猶予のついた判決を言い渡した。
裁判で明らかになった犯行の経緯とは?

裁判で明らかに…2人の遺体を埋めた理由

父親と祖父の遺体を海岸に埋めたとして逮捕、起訴された金沢市の無職の男(34)。5月12日、金沢地裁で開かれた初公判で男は起訴内容を認めた。
なぜ、父親と祖父の遺体を埋めたのか。その理由が被告人質問で明らかにされた。

事件の経緯が裁判で明らかに
事件の経緯が裁判で明らかに
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男は祖父と父親の3人暮らし。母親は男が18歳の時に家を出ていた。転機が訪れたのは2007年ごろ。自宅で、祖父が仰向けになって死亡しているのを発見した。

男の祖父と父が死亡した自宅
男の祖父と父が死亡した自宅

男は警察に通報しようとする。
しかし…

男の父親:
葬儀には金がかかる。電話はするな

父親は男の胸ぐらを掴み、脅したという。そのため、男は通報するのをやめた。怖かったという。
その半年後。自宅で、父親が横腹に包丁が刺さった状態で死んでいるのを男は発見する。

男:
パニックになり逃げた

半年後には父親が死亡した
半年後には父親が死亡した

男は警察へ通報をせず、公園などを転々とした後、18歳の時に家を出た母親の元へ身を寄せた。母親には、祖父と父が死亡したことや遺体をそのままにしていることを明かさなかった。

男:
ただでさえ生活面で迷惑をかけているのに、なおさら迷惑をかけることになる。遺体が見つかれば、一生刑務所暮らしになるかもしれない

見つからないはずだった遺体…1本の電話が

遺体を自宅にずっと放置していた男。
しかし、2020年に草刈り業者が自宅に入ることを知る。

男:
ばれないように、2人の遺体を海岸に埋めた

男が小学校の時に書いた卒業アルバム
男が小学校の時に書いた卒業アルバム

男は、遺体をリュックサックやボストンバッグに入れて自転車で運んだ。体格の良かった父親の骨はカバンに入らなかったため、やむを得ずノコギリなどを使って切断した。

たまに家を出入りしている男を近所の人は目撃していた
たまに家を出入りしている男を近所の人は目撃していた

誰にも見つからないはずだった。
しかし、事件が発覚したのは2020年。1本の110番通報からだった。

海岸を歩いていた人:
砂浜で骨を見つけた

海岸にあったのは白骨化した2人の遺体。目立った外傷はないものの、死後10年以上が経過していた。さらに…

男の親族:
親族2人と15年以上会ってなく、疎遠状態になっているので捜索願を出したい。

骨が見つかった砂浜を捜索する捜査員
骨が見つかった砂浜を捜索する捜査員

警察に届けられた捜索願。2人のDNA鑑定を実施したところ、白骨化した遺体と一致した。

男が裁判で涙ながらに語った後悔

この裁判で、男は自分の思いを涙ながらに語った。

男:
15年間、ずっと2人を家に隠し続けてきて罪の意識があり、苦しくつらかった。今は自分の犯した過ちに後悔でいっぱいです。長い間寂しい思いをさせてしまって、ちゃんと弔えなくて申し訳ない

検察側は自己中心的だと非難し、懲役1年6カ月を求刑。弁護側は被告の状況から強く非難できないとして、執行猶予付きの判決を求めていた。

金沢地裁の判断は
金沢地裁の判断は

5月19日。金沢地裁で開かれた判決公判。

裁判官:
2人の死を打ち明けることもできたのに、遺体を遺棄すると決意したことは非難に値する。一方で、祖父が死亡した際に父親から警察に通報しないよう強く言われたことが犯行のきっかけとなったことや、2人の死が発覚することを恐れ、長期間苦悩し続けていたことなど犯行の経緯には配慮すべき事情がある

金沢地裁は、男に懲役1年4カ月、執行猶予3年の判決を言い渡した。

(石川テレビ)

石川テレビ
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