「支えてくれるお母さんにサプライズで手紙を渡したいんです。手伝ってくれませんか?」取材班に届いた1通の手紙。一体どんな人が手紙を出してくれたのか。直接伺うことにした。
自閉スペクトラム症の男性…苦難乗り越え開花した絵の才能
手紙の差出人は、石川県金沢市に住む西花天翔(にしはな・てんしょう)さん(27)。西花さんは、脳の機能障害が原因とされる「自閉スペクトラム症」で、他者とコミュニケーションをとることが苦手だ。

西花さんは2020年から、一筆書きの迷路を題材とした絵を描いている。

絵の才能が開花し、2022年3月には「金沢21世紀美術館」で開かれた展覧会で作品が飾られ、アート作家としての第一歩を踏み出している。

そんな天翔さんを支えてきたのが母、志野さんだ。
母・志野さん:
線が細かくて、(私の視力が)よくないから全然迷路のゴールにたどり着けない(笑)。
(天翔は)基本1人遊びが多かったですね。自閉症なので友達とのコミュニケーションが苦手なので友達との間に入っていけなくて

過去には入院も 今だから分かる母の苦労に感謝
天翔さんは5歳の時、多動性障害(ADHD)と診断された。友達とのコミュニケーションが上手くいかず、中学生の時にはいじめを受けたこともあった。

高校卒業後は徐々に心のバランスを崩し、22歳の時に精神科の病院に入院。その時、自閉スペクトラム症と診断された。気持ちの浮き沈みが激しく、母とケンカになることもあったという。

西花 天翔さん:
やっぱり迷惑をかけてきた時は一番お母さんがつらかったんじゃないかと思う。お母さんが助けてくれたし、支えてもくれたし、僕の味方を一番してくれました

絵の才能が開花したのも、母が支えてくれたおかげ。だからこそ、母の日にサプライズで手紙を渡したい。しかし、シャイな性格のため1人で渡すのは恥ずかしい、手助けしてほしい、という思いで、取材班に手紙を出してくれたのだった。

これまで、母に手紙を書いたことがないという天翔さん。母の日に向け、志野さんに気づかれないように手紙を用意し、取材班と一緒にサプライズで渡すことにした。
迎えた母の日…初めての手紙のサプライズ 母の反応は!?
迎えた母の日。
私たちは「天翔さんの取材をするため」と伝え、志野さんにも来てもらった。場所は、天翔さんの希望で、金沢21世紀美術館に。作品が展示されたこの場所で、感謝を伝えたいという。

カメラを回してしばらくすると、記者が切り出した。
記者:
お母さんにもちょっとだけお話伺ってもいいですか?天翔さん、今日は何の日ですか?
西花 天翔さん:
きょうは母の日です
記者:
実は、天翔さんから伝えたい思いがあるとのことです。天翔さん、お願いします
天翔さんが、懐から母への手紙を取り出した。気づかれないように、母の目を盗んで書き上げた。

西花 天翔さん:
世界一のお母さんへ。
精神科で入院したとき泣いてばかりだった。隔離室にいたときは辛い気持ちだった。自分を責めていたし、人生が終わった感覚だった。
そこから人生を変える出来事が起きたね。迷路をかいた。あれからいろんなことがあったね。迷路の作品が名刺になったり、Tシャツになったり、カバンになったり。作品が入選したり、展示会で絵が売れて人生が変わったよね。
お母さん今まで大変だったと思うけど…ここまで来れてよかった。これからは絵の一本線で人生を歩みます。お母さん一生懸命僕を育ててくれて感謝しているよ。お母さんの愛は世界一だよ。温かな愛をありがとう。
初めて書いた母への手紙。

母・志野さん:
ちょっとびっくりしました。でも、嬉しかったです。いろんなことが思い出されて…。私の子供が天翔でよかった。それに尽きます

サプライズは大成功!思いをしっかり伝えることができ、天翔さんにとっても忘れられない母の日となった。
(石川テレビ)