ウクライナ情勢の状況に大きな変化が見えない中、現地の職人たちを支援するため、鳥取県倉吉市の歯科技工所が立ち上がった。仕事が激減し、収入を絶たれたウクライナの歯科技工士を、国境を越えてサポートする。

入れ歯・歯のかぶせ物のデザインをウクライナの企業に依頼

倉吉市の倉繁歯科技工所。ここでは入れ歯や歯のかぶせ物などを製作している。

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本田航太 記者:
作業スペースの奥に進むと貼り紙があり、「一緒にウクライナの支援をしませんか?」と記載があります。こちらの会社が作る歯のかぶせ物のデザインを、ウクライナの企業に委託する取り組みを始めました

倉繁歯科技工所・山本幸治さん:
当社には、歯医者さんから患者さんの口の型が石膏模型の状態で届く。欠けている部分に合うかぶせ物を作っていきます

倉繁歯科技工所・山本幸治さん:
普段は当社でかぶせ物の形をデザインしているが、そのデザインの部分だけをウクライナの企業にお願いしている。発注から2、3日でウクライナからデータを送っていただける

ウクライナの現状についてメッセージが届く「無視しないで」

このプロジェクトは、ウクライナ西部・リビウの歯科技工所に歯のかぶせ物の製作を発注するもので、その名も「ヒマワリ・デンタルプロジェクト」。反戦への思いを込め、ウクライナの国の花であるヒマワリにちなんで名付けられた。

ロシアによる軍事侵攻で国内業務が激減するウクライナの技工士を支援しようと、この技工所のほか、国内3社の歯科技工所が、4月下旬から共同で取り組んでいる。

取り組みに賛同するDENT-EASE・田里涼 社長:
倉繁さんから支援の話があり、業務の履行という形でウクライナの生活も支えられる取り組みだと思い賛同した

倉繁歯科技工所・倉繁竜士 取締役:
弊社が発信するSNSに関心を持ったウクライナの社員と、はじめは会社と個人でやり取りしていた。その後ウクライナへの侵攻があり、その方から今のウクライナの現状について知ってほしい、無視しないでほしいとメッセージが届き、支援を企画した

海外企業への作業委託で、日本国内での技工士の人手不足を解消する狙いもある。一度の発注で1,000円を現地に支払い、年間で約500万円の支援を見込んでいる。

なぜ寄付ではなく、業務発注なのか。この形での支援には、倉繁さんの技工士としての思いがあった。

倉繁歯科技工所・倉繁竜士 取締役:
(一過性の募金ではなく)彼らに仕事を作ってあげる、やりがいを与えることの方が、結果的に彼らの生活やプライドを支えられると思った

このプロジェクトは、ウクライナ情勢が落ち着くまでは続ける方針で、今後ウクライナのほかの技工所にも支援の輪を広げていくとしている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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