コロナ禍で、“お酒を飲まない”生活スタイルが広がっている。
その背景を探ると、以前から徐々に起こっていた“酒離れ”の要因と、コロナの関係が見えてきた。
“あえて飲まない”人たちの中で広がる、コロナ時代を経て、“酒から離れた生活を楽しむ”という新しい価値観とは。

“酒離れ”する人たち「コロナ前は会社の会で飲む機会も多かったけど…」

以前はよく飲んでいたという林 俊孝さん(左から2人目)
以前はよく飲んでいたという林 俊孝さん(左から2人目)
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名古屋市北区の名城公園で汗を流す、名古屋市の会社員・林俊孝さん(45)。林さんは、1か月150キロを目標にほぼ毎日走っている。

そんなストイックな林さんだが、かつては仕事の付き合いもあり、毎週のように飲み会に参加。好きな酒はビールとハイボールで、ひとたび飲み会に参加したら、それぞれ4杯ずつは飲んでいたという。

林俊孝さん:
コロナ禍を契機に変わっています。今は1か月に1回あるかないか…、下手したら2か月に一回とか

飲んでいた頃の写真(左端が林さん)
飲んでいた頃の写真(左端が林さん)

飲み会は月に1回で、ランニングはほぼ毎日。林さんのように、コロナをきっかけに“酒離れライフ”にシフトする人は少なくない。
街の人にも聞いてみると…

40代の男性:
コロナ禍になってから、あまり飲まなくなっちゃいました。生活を見直そうって
40代の女性:
最近はほとんど飲んでない。コロナ前は会社で飲む機会も多かったので、定期的に飲んでいたんですけど…

5種類が40種類に拡大…日本酒までが“ノンアル化”

“酒離れ現象”は、酒の専門店でも…。

酒ゃビック 滝ノ水店・店長:
「ノンアルコールのコーナー」になっています。最近入ったものは、“ワインの休日”とか、“レモンズフリー”とか…

酒の専門店で店内の一角を占める、“ノンアルコール”コーナー。コロナ前まで5種類ほどしか扱いがなかったノンアル商品が、今では8倍の40種類にまで拡大している。

“ノンアルビール”に、“ノンアルワイン”、さらには“ノンアル日本酒”まで。豊富なラインアップとその人気ぶりから、様々な種類が楽しめる“ノンアル缶12本セット”まで用意していた。

酒ゃビック 滝ノ水店・店長:
僕もこれ(ノンアルカクテル)飲むんですけど、(酒を)飲んだ気がするんですよ。今日は酔いたくないけど、ちょっと飲みたいなって時は、こっちにして。そうすれば妻と夜しゃべれるじゃないですか

酒店の店長まで、私生活ではノンアルコールにシフトする場面もあるという。

消費税増税、リーマンショック、飲酒運転の厳罰化…減少してきた“消費量“

こうした“酒離れ”の傾向は、実はコロナ前からじわじわと広がっていた。
国税庁の調査によると、平成(1989年~)に入り20歳以上の人口は増加する一方、成人1人あたりの年間の酒類消費量は、1990年度の約100リットルに比べて2016年度には約80リットルと、約2割減少している。

こうした背景について、アルコール市場に詳しい専門家は次のように分析する。

アルト・アルコの安藤裕 社長:
酒離れの背景に見えてくるのは3つ。
①経済要因。消費税増税だったり、経済危機のようなもの
②健康要因。より健康意識が高まった
③社会要因。酒への風当たりの変化も大きい

確かに…3つの要因が起きた時、酒の消費量が減少している
確かに…3つの要因が起きた時、酒の消費量が減少している

この分析をもとに、酒類消費量のグラフを見ると、「消費税増税」に、「リーマンショック」、「保険料負担増」や「SARSの流行」、さらに「飲酒運転の厳罰化」の翌年など、経済、健康、社会的要因を受けながら、徐々に酒の消費量が減っているのがわかる。

こうした状況の中、コロナ禍で更に酒を飲む機会が減り、“酒離れ”が加速したとみられている。

安藤裕社長:
昔の方たちって、酔うことに意味を見出していたけど、コロナの健康要因もそうですし、消費税増税っていうのも割と最近の話ですし、まだまだノンアルコールのプラストレンド(増加傾向)は続くのかな…

ノンアルコールライフは、まだまだ続くのだろうか。

「意外とお酒がなくても楽しめる」…コロナの時代に広がる新しい価値観

名城公園で“酒離れラン”に勤しんでいた会社員の林俊孝さんが、この日訪れたのは、名古屋市千種(ちくさ)区にあるバー「プラスコンブッカ」。

店主:
今日(のオススメ)だと、新緑っていう文旦(ぶんたん)と山椒を漬け込んだ…

“行きつけの飲み屋”のような雰囲気の中で、林さんに出されたのはワイングラス。見た目も雰囲気も完全にワインバーだが、グラスの中身はモデルにも人気の“発酵ドリンク”で、もちろん“アルコールゼロ”の健康ドリンクだ。

別の客:
代謝が上がったのと、お通じが良く。デトックスできている感がすごくあります

林俊孝さん:
1杯飲んだだけでも腸に効いている感じがします

酒がなくても弾む会話。“酒離れ”でたどり着いた、新しい楽しみだ。

林俊孝さん:
ワイワイやるのが好きなので。今までは酒を飲んで盛り上がるのがありましたけど、意外とお酒がなくても楽しめるなと。お酒はお酒の楽しみ方、場面場面で選択できればいいのかな

“酒から離れて楽しむ”オトナの生活。コロナの時代を経て、新しい価値観が広がっていた。

(東海テレビ)

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