モスクワに「Z」の文字 市民複雑

ロシアにとって重要な祝日、5月9日の「戦勝記念日」。その前日、準備が進む首都モスクワではナチス・ドイツが無条件降伏した年を示すモニュメントの前で、家族連れが記念撮影をしていた。

この記事の画像(17枚)

路上では、ロシア軍のシンボル「Z」のマークが付いた記念グッズなどが売られ、「祖国のために」という文字の頭文字は「Z」に書き換えられていた。

こうした祝賀ムードの一方で、複雑な思いを口にする市民も少なくない。

女性:
もちろん喜びはありません。喜びのない、涙の祝日です。

男性:
(今年の)戦勝記念パレードは特別なものになる。望むか望まないかは別として、戦争の足音が近づいているからだ。

学校を狙い空爆…60人死亡

長期化する戦闘。ウクライナ東部のルハンスク州では、市民約90人が避難していた学校がロシア軍による空爆を受けた。

爆撃を受け、瓦礫の山と化した学校。いたる所から火がくすぶり、消火活動が続けられた。

ゼレンスキー大統領は8日、「これはまさにナチス・ドイツがヨーロッパで行ったことの再現だ」と述べた。

ウクライナ攻撃で使用のミサイルも 最新鋭の兵器披露

ロシアで行われた戦勝記念日の式典では、プーチン大統領の演説の後、軍事パレードが行われた。

プーチン大統領が見守る中、一糸乱れぬ隊列で行進する兵士たち。

戦車による行進の先頭を行くのは、第2次世界大戦の地上戦を象徴するとされる戦車「T-34/85」だ。

続いて披露された最新鋭の兵器。一つは、ICBM=大陸間弾道ミサイルの「ヤルス」。

そして、ウクライナへの攻撃でも使われた短距離弾道ミサイル「イスカンデル」だ。

この2つはロシア製で、核弾頭も搭載できるミサイル。さらに最新鋭の地対空ミサイル「S400」なども披露された。

青空広がるも「悪天候」理由に飛行中止

ロシア大統領府は、予定されていた航空機によるパレードは天候のため中止になったと発表。

7日のリハーサルでは、核戦争の時に大統領らが上空から指揮をとる“終末の日の飛行機”とも呼ばれる特別機「イリューシン80」などが飛んでいた。

核兵器の使用の可能性を示唆するとみられていた特別機の披露は、なぜ中止になったのか。会場となった赤の広場の上空は、抜けるような青空。航空機が飛べない空模様には見えない。

記念式典を終え、会場を後にするプーチン大統領の背後には、カバンを持ったSPの姿があった。

この中に「核のカバン」はあるのだろうか。

プーチン大統領の背後にはカバンを持ったSPの姿があった
プーチン大統領の背後にはカバンを持ったSPの姿があった

プーチン大統領はなぜ空のパレードを中止したのか。さまざまな憶測を呼びそうだ。

加藤綾子キャスター:
プーチン大統領は、ウクライナへの侵攻を改めて正当化したものの、注目されていた戦争宣言はなく、あまり強気な姿勢というのは見られない。そういった印象でしたね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
ウクライナで侵略戦争をしている国の指導者とは思えない。そういう勢いを感じなかったですね。かといって、国内の国民向けに一致団結、あるいは引き締めを図るような言葉もあまり聞かれなかった。対外的にも挑発的な言葉があるかと思ったら、これもあまりない。戦闘が長期化して、ロシア側にとって思うように事が進んでいないことの裏返しなのかな、という気がしました。

(「イット!」5月9日放送)