ロシア軍の侵攻が続くウクライナ。ウクライナ情勢は今後、どうなるのか。ジャーナリストの木村太郎氏は、東部戦線で大きな変化が起きているという。

ウクライナの「大攻勢」が始まる?

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木村太郎氏:
(日本時間5月8日までの)この3日で情勢変わったんですよね。一進一退が続いててウクライナ軍やるなと思ってたら、5月7日、8日で前進し始めた。
特にハルキウってウクライナで2番目の都市なんですよね。ハルキウを攻め落とそうとしていたロシア軍が退却始めたんですよね。退却する時に橋を落としちゃったんですね。橋を落としたってことはもう来ないよってことで、ハルキウを占領する作戦はやらないという。これは、キーウを撤退した時と全く同じなんです

また、戦勝記念日を前に、気になる報道があったという。

木村太郎氏:
(戦勝記念日の)9日までに、なんかロシアが戦果を上げなきゃいけないって言ってたのが真逆になって、ハルキウは退却したのもそうですし、「アドミラル・マカロフ」っていうロシアの4000トンあるフリゲート艦。これがウクライナのミサイルに打たれて炎上してるって言われている。ロシアはまだ認めていないんですけど。おそらくこれが戦勝記念日の象徴的なことと逆(ウクライナの大攻勢を示すもの)になってしまった

一方、元産経新聞モスクワ支局長で、大和大学社会学部の佐々木正明教授は次のように見る。

佐々木正明氏:
ロシアが大苦戦をしていることは確かだと思います。東部戦線が全く一向に、ロシア側にとって進まないということがずっと続いています。5月9日までに何らかの戦果が必要だったのですが、これでは東部2州どころか、ヘルソンすなわち西側の方も、ウクライナ軍の攻勢にあっているということも伝えられていますので、これは確かだと思います。
5月6日と7日、私はロシアのテレビを見ていたんですけれども、ロシアの軍事専門家も、テレビの中でNATO軍、西側の武器が相当に効いているということを認めておりますので、クレムリン(=ロシア大統領府)の中でもそういうことが認められているのではないかなと思います

木村太郎氏が読み解く ロシアに待ち受ける「3つのシナリオ」

では、ロシアの今後はどうなっていくのか。木村太郎氏は、3つのシナリオが考えられるとする。

1つ目は、プーチン大統領が5月9日以降にがんの手術を受けるため、指揮権を手放しそのまま退く引退説。
2つ目は、かねてから噂されている、ロシアの情報機関FSBと軍幹部がプーチン大統領を追放するクーデター説。
3つ目がドンバス地方の制圧失敗による政治的・社会的混乱に乗じて、チェチェン共和国のカディロフ首長がロシア内戦を引き起こす内戦説。
これらの3つのシナリオが考えられるという。

木村太郎氏:
イギリスの新聞が揃って伝えてるんですけど、手術をするとしばらく作戦なんかできないですよね。後任者とみられるのがパトルシェフ・国家安全保障会議書記なんですけど、その人と話して、手術をする間頼むよって。もしくはこの手術が長引いちゃって、回復が遅くなるようだったら、国政も頼むよって言ったっていうんですよ。それでもしかすると、具合が悪いとそのまま引退するんじゃないか、消えてくんじゃないか。
クーデター説は絶えないんですよ。FSBと軍隊がなんかするんじゃないかって。
内戦説は、情報筋が「6月にロシアなくなる」って言った、あのFSBが内部告発者なんですよ。彼がもう一回警告文を公表して、その中でこの5月9日以降、ロシアは相当混乱して、その隙にチェチェンの独自勢力がもう一回出てくるぞと

ロシアの未来は中国が握る?

一方、「プーチン大統領のいないロシアの方が実は危ない」と考える、佐々木氏は…

佐々木正明氏:
プーチンがいなくなった方が、予測不可能な国になると思いますね。つまり、プーチン大統領は国家の主としてとどまらざるを得ない状況にあると思います。プーチンがいなくなりますと、国内が大混乱となり、グローバルリスクがさらに高まります

そして、ロシアの行方を左右するのは、あの大国だという。

佐々木正明氏:
むしろプーチン大統領の(体制が)保たれるか保たれないかっていうのは、中国、習近平国家主席がどのような態度を取るかによるのではないのかなというふうに考えてます。
直近では、この夏にBRICs首脳会議というものがありまして、今年中国で開かれる予定です。プーチン大統領はおそらくここに出席されると思いますので。このときに習近平国家主席が何を言うのか。どんな支援をするのか。ここでロシアの命運が決まるのでないかと考えています

(「Mr.サンデー」5月8日放送分より)