鮮やかでちょっと不思議な世界を描いた作品で注目を集める「高校生画家」が、北海道函館市にいる。テレビ番組で脚光を浴び、プロへの道を踏み出した中で直面した壁…。もがきながらも「自分にしか描けない世界」を追及し続けている。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
私の絵は万人受けはどうなんだろう? というのも描いているので

藤倉朱里さん(18)。奇抜でカラフルな作品が話題を呼ぶ「高校生画家」。

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高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
万人受けしなくてもいいけど、『なんだこの絵』みたいな、『見たことない絵が出てきた』とびっくりされる画家になりたい

"プロ画家"…立ちはだかる壁

北海道の南西部、函館市に近い今金町で生まれた。幼い頃から絵を描くのが大好きで、その"才能"は中学時代から注目され、「プロの画家」として歩み始めている。札幌市内の個展に向け、新作に挑むが…

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
最悪。申し訳ない。ごめんなさい、なに泣いてんだって感じ

もがきながら握った筆で描く"18歳の未来図"だ。

高校生画家「藤倉朱里」の名を全国区に押し上げたのは、いとこを描いたこの作品。2年前、コンクールに出そうとしたものの、作品サイズが誤って伝わり、評価の対象外に…

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
落ち込んでいた時に、『さんまさんの番組があるよ』って。母が『良い絵だから。どうなるかわかんないから出してみたら』と言い、暇だから出してみようと

番組内で、この作品には50万円の値がついた。プロを目指すきっかけとなった。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
人生一度きりだし、(プロの道に)踏み込んでみようと思って、今金町から函館に出て、そこから画家活動を始めた

2021年5月に引っ越し、兄と2人暮らしを始めた。高校も通信制に転校し、函館の絵画教室で本格的に学びながら、プロとして活動している。

注目を浴びる朱里さんには、ポスターデザインの依頼も。

ポスターを依頼した 仙石智義さん:
中高生が職業選択するときに、選択の1つとして食の仕事を選んでもらえたらと思って。とてもかわいく、中高生向けに伝わるイラストになった

ポスターを依頼した 仙石智義さん:
自分の描いたポスターが、函館の建物に貼られるのはうれしい。わくわくする

"チャンス"と"プレッシャー"

そして飛躍のチャンスがめぐってくる。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
大丸札幌店という大きな場所での個展なので、一番の目標。新作をたくさんだして、目にとまってもらいたい

この秋に札幌で個展が開かれることになったのだ。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
この個展を目標に(新作が)30点ぐらいできたらいい。がんばって、この予定で間に合わせられるように…

札幌での個展に向け、まずは函館市内で中間発表の展示会を開き、新作を披露することになった。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
実力なさ過ぎて不安。ひぃ、だめだぁ

心が苦しくなったとき、支えてくれるのは家族だ。2021年の暮れ、今金町に帰省していた。

朱里さんの父 里志さん:
将来的に諦めてやめてしまった場合、『あの時もっとがんばっておけば』ってならないように

朱里さんの母 真弓さん:
後悔だけはしないように

函館市内で開かれる展示会の打ち合わせ。大人とのコミュニケーションに緊張が高まる。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
そうですね。大体おおまかにいうとそんな感じ…頭回らない…申し訳ない

実は朱里さんこの時、思うように作品作りが進まず、不安がピークに達していた。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
(涙ぐんで)精神的にちょっときてる。緊張もあって、うまくしゃべれなくて申し訳ないって気持ちと…。いろいろ。最悪。申し訳ない、ごめんなさい

18歳の小さな背中にのしかかる大きなプレッシャー…

拠り所は"地元のお寺"「不安が力に」

2022年3月13日、朱里さんは高校を卒業した。翌日には、ふるさと今金町の芸術文化の発展に貢献したとして、文化賞の表彰式に参加。
その足で向かったのは地元のお寺。悩んだときに頼りになる人がいる。

専教寺 住職 池田誓哉さん:
ネガティブな感情をポジティブに。闇と明かり。朱里さんは、"不安"がエネルギーになった作品が魅力

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
温かい。地元の方も応援してくれると確認できてよかった。あしたも頑張ろうと思える

不安は作品を生み出す力にもなる。応援を受けた朱里さんは…
函館での個展を、無事迎えることができた。朱里さんらしい奇抜で鮮やかな色使いの新作10点を含む全16作が飾られた。

高校生画家 藤倉朱里(しゅり)さん:
大変でした。この子(作品)を描いている時、精神がやばくて、完成して良かった。秋の札幌の個展がまずは一番の目標。作品の質もレベルアップしていきたい

この時代に「あかり」を灯すような作品を…。今金町から函館市、札幌市、そして世界へ…

藤倉朱里さんはロックバンド「ONE OK ROCK」の大ファンで、いつかCDジャケットのデザインをしたいという。
また、札幌での個展を終えた後は東京の芸術大学への受験を考えていて、作品作りと受験勉強を両立させたいと話している。

(北海道文化放送)

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