アフターコロナも見据えた温泉街の新たな挑戦。長野・山ノ内町の湯田中温泉で、旅館の主たちが会社をつくって農業と温泉宿、町の二つの「売り」を楽しんでもらう旅を提案している。
温泉旅館が企画した農業体験イベント
2月19日、山ノ内町。
参加者：
こつがいりますね
農家：
そう、こつがいるんですよ、でも最後よかったです
リンゴのせん定に、高所作業車。
乗車した女性：
楽しかった、もっと高く登りたい
山ノ内町で開かれた農業体験イベント。県内外から50人が参加した。
昼食は「農家メシ」。焼肉やきのこ汁など県産食材の料理が振る舞われた。
名古屋から：
びっくりしました。こんなことやっているなんて
地元から：
お米がおいしいなと。あと、お肉もおいしいし、いい経験だなと
リンゴ栽培など町の農業に触れてほしいと企画された今回のイベント。主催したのは農家ではなく、湯田中温泉の旅館の主たちだ。
和風の宿ますや・宮崎憲一郎代表：
この体験をすることを目的に来てもらって、宿泊を旅館やホテルでしてもらうきっかけになると思うので、融合したイベントを。観光と農業の町というところを、なんとか一つにならないかなと
アフターコロナも見据えた集客策として、農業と観光の連携を図っている。
コロナ禍の挑戦…農業に取り組む会社設立
1300年を超える歴史を持つ湯田中温泉。源泉かけ流しが自慢の旅館が立ち並ぶが、新型コロナの影響で客足は落ち込んでいる。
こちらの「ホテル椿野」では、年間の宿泊が「例年の5割に届くかどうか」という状況が続く。そこで「ホテル椿野」など5軒の旅館の主たちは、早い段階で立ち上がった。
ホテル椿野・湯本秀明オーナー：
じっと嵐が過ぎるのを待つだけというのはメンタル的にもやられますし、新型コロナは大きなチャレンジをする良い引き金になった
2020年7月、「ヒューマンアグリ」という農業に取り組む会社をつくったのだ。設立当初のねらいは、仕事が減ってしまった旅館スタッフの「雇用確保」と農業の「担い手不足解消」だ。
農業は『究極のアウトドア』
旅館スタッフが農作業を手伝ったところ…
ホテル豊生・金子博之代表：
農業とサービス業をやっている方が同じ町内に住んでいても、接点がまったくない。われわれが今回どっぷり農業にいくことによって農家さんのお気持ちもわかるし、そういった体験を本当に自分がやって面白かった
会社は担い手がいなくなったリンゴ畑を借りて、栽培もするようになった。
畑で今、せん定作業に追われているのは金子真一朗さん（23）。ヒューマンアグリのスタッフで、「ホテル豊生」の主・博之さんの次男だ。
ヒューマンアグリ・金子真一朗さん：
なるべく元気のいいやつは、外してあげるといいのかなと
会社設立から2年目を迎える2022年は農業体験も目的にした旅を提案し、集客につなげる方針だ。
ヒューマンアグリ・金子真一朗さん：
アウトドアとかはやっていると思うが、農業って「究極のアウトドア」だなと。自分で育てて自分で食べてという非日常を、農業を通して体験してもらう
冬の「せん定」から始まり、春の「花摘み」、夏の「摘果」、そして秋の「収穫」と1年を通じて足を運んでもらい、心地よい疲れを自慢の温泉で癒してもらう…。そうした旅のプランを検討中だ。
冒頭で紹介したイベントは試験的に開催されたもので、この冬、7回開催して宿泊客や地元住民200人近くが参加。評判は上々だ。
群馬から：
事務の会社員で、普段（農業を）やったことがないので、経験ができるのは楽しそうだなと思って参加
ヒューマンアグリ・金子真一朗さん：
どうですか、面白いですか
群馬から：
面白い
イベントの充実に向けて、アイデアを出し合う。
ホテル椿野・湯本秀明オーナー：
あそこでおにぎりを作ってコーヒーとかも入れてあげて、というのがあれば最高じゃない
ホテル豊生・金子博之代表：
バイクのオフロードで畑の中を走っていただいて、外国人の方もそういうアクティビティが好きなので
町の主力産業である宿泊業と農業の融合。集客や農産物のブランド力アップなど相乗効果も期待される。
ホテル椿野・湯本秀明オーナー：
眠っている魅力を探し出してブラッシュアップする必要が、観光業にはあるかなと。たくさんのお客さまをお迎えできて、皆さんを笑顔にできて「また来るよ」というお客さんが増えてくれるんじゃないかと描いている
（長野放送）
