今回のオリンピックで採用された新種目のスキージャンプ混合団体。めざまし8では、スーツの規定違反による失格が相次ぐ、波乱の大展開を追いました。
髙梨選手の失格を乗り越え、奇跡の表彰台まであと一歩に迫った「日の丸飛行隊」のチーム力――そこには強い絆がありました。

スーツ規定違反で失格も驚異の追い上げ

ジャンプ混合団体では、男女2人ずつが2度のジャンプを飛び、その合計点を競います。
男子ノーマルヒルで金メダルを獲得した小林陵侑選手と女子のエース、髙梨沙羅選手――2人のトップジャンパーを擁する日本。小林選手の師匠であり、スキージャンプ界のレジェンド、葛西紀明選手も期待を寄せていました。

葛西紀明さん:
ワールドカップでも上位に食い込んでいる4人なので、多分、力的にも結構上の方に、メダルは間違いなく取れるぐらいのメンバーだと思います。

期待を背負って最初に登場したのは、女子ノーマルヒルで4位と惜しくもメダルを逃した、女子のエース・髙梨沙羅選手。まずは1本目のジャンプに臨みます。

実況:
ビックジャンプ高梨!高梨から今笑顔がこぼれました!
チームそして、高梨自身を勢いづける大きなジャンプです。 

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103メートルの大ジャンプと好スタートを切った髙梨選手は、全体の2位につけます。 
続く2番手、佐藤幸椰選手も99m50と最高のスタートを切った日本。しかし、この直後、思いもよらない展開が待っていました。

実況:
日本7位となっています。
今、手元に入った情報ですけれども、髙梨沙羅がDSQ、スーツの規定違反で失格ということになりました。非常に残念です。
1回目103mという大ジャンプを飛んでいただけに……

髙梨選手がジャンプスーツの規定違反で失格となったというのです。

合計8回のジャンプの合計点で競い合う混合団体。
失格になると、高梨選手の1回目のポイントは全て無効となります。

失格と聞いた直後、高梨選手は……。

 

髙梨沙羅選手:
申し訳ございませんでした。

泣きながらカメラの前で頭を下げて、戻ります。
日本チームの関係者によると、髙梨選手の着ていたスーツの太もも周りが規定より2センチ大きいという指摘を受けたといいます。

「風の次に理不尽」 選手のコンディションも日々変化

今回の規定違反に葛西さんは……。

葛西紀明さん:
こっちに来て痩せてしまったりとか、上手くトレーニングできなかったりとかで太もものサイズが小さくなったりすることもあるので、そういったところが引っかかってしまったのではないかと思います。
まさかこのオリンピックでそういうルールで失格になるっていうのは、ジャンプ競技の中でも、風の次に理不尽なことなんじゃないかと思います。

1回目のジャンプの際、髙梨選手が着ていたのは、5日に行われた女子ノーマルヒルで着用していたもの。なぜ、同じスーツで出場し、規定違反となってしまったのでしょうか。

日本代表 横川朝治ヘッドコーチ:
選手はもう何も分からないでスタートしてますから、スタッフのミス。ちゃんとあわせられなかった、僕らが。
普通でしたら試合前にちょっとウェイトトレーニングをやって、パンプアップするっていうんですかね、サイズがあってくるんですけど、思ったより上がらなかったかなっていう感じです。

別の関係者によると、オリンピックのプレッシャーもあり、体重が減っていた可能性もあるといいます。

ギリギリの調整で失格になってしまった高梨選手。しかし、日本チーム。ここから仲間がその思いをつなぎます。

続く3人目の伊藤有希選手。そして、日本の4人目、日本のエース・小林陵侑選手は102.5mの大ジャンプ。各国のエースが揃った4人目のジャンプで最高点をマークしました。
すると、オーストリアに次いで、ドイツの選手が失格するという波乱の展開。
その結果、日本は8位。ギリギリで2回目のジャンプに駒を進めることが決まりました。

髙梨、2回目のジャンプ

チーム一丸となり、最大の危機を乗り越えて、2回目のジャンプに臨むことになった日本。
1回目のジャンプから50分あまり、再びジャンプ台に姿を見せた髙梨選手。ゴーグルの奥には、光るものが……。

実況:
高梨、今大会これが最後のジャンプになります。これまでの4年間の思いを込めて飛んでほしい。前に進んでいる、K点は超えた!K点を超えてきました。
涙があふれます髙梨、しかしこの感情の中でよく98m50、K点を超えてきました。
気持ちを切り替えて飛んでくれました。

あふれる思いを抑えきれないのでしょうか。そのまましゃがみこんでしまいます。涙が止まらない髙梨選手。立ち上がると、中継のカメラに向かって深々と頭を下げました。

失格のショックを乗り越え、2回目のジャンプを終えた髙梨選手。引き上げると、コーチなどからねぎらいの言葉を掛けられます。しかし、ベンチに手を掛けたまま動くことさえ出来ない様子です。

高梨を支えた快進撃 チーム力で4位に

そんな高梨選手を奮い立たせるように、佐藤選手が見事100メートルを超えるジャンプ。
そして、フジテレビのカメラは、引き上げてきた佐藤選手が高梨選手の元に駆け寄り、声を掛ける姿を捉えていました。

佐藤幸椰選手:
元気出す。お疲れ。ケガしなくて良かった。

「ケガしなくて良かった」。ともに戦ってきた仲間を心からいたわる一言。
さらに、ジャンプを終えた伊藤選手も髙梨選手の元にかけつけ、泣き続ける髙梨選手の背中をさすり続けていました。

最後に、小林選手も髙梨選手の元にかけよりハグ。 

結果は、銅メダルにはあと一歩届きませんでした。

小林選手は今回の戦いをこう振り返ります。

ーー違反については?
小林陵侑選手:
珍しいことではないですけど、一番悔しいのは本人だと思うんで。みんなもそうですし、みんなもギリギリ攻めてやってきているので。2本目、みんな良いジャンプ出来てたので、それがやっぱりすごく良い点だったと思います。

(「めざまし8」2月8日放送)