岡山県警音楽隊の新人隊員として1月、憧れの舞台に立った女性警察官がいる。自分が感じた感動を直接届けたい…。新型コロナに翻弄されながらも活動を続ける女性警察官を取材した。

高校生で聴いた演奏に感動

1月29日に行われた岡山県警音楽隊の「ふれあいコンサート」。憧れの舞台でクラリネットを演奏する有松沙姫さん、22歳。

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コンサートに向けた練習が本格的に始まったのは2021年8月。有松さんたち音楽隊のメンバーは、観客を迎える準備をしていた。

警察官や警察職員ら29人で構成されている県警音楽隊。1948年から、音楽を通じて犯罪防止などを呼びかけようと県内各地で演奏会を行っている。

その集大成として毎年行われているのが、ふれあいコンサートだ。入隊2年目の有松さん、音楽隊との出会いは高校生の時だった。

有松沙姫さん:
その時初めて演奏を聴いて、めちゃくちゃ感動した。特に「おおぞらをとぶ」という曲が私自身も大好きで、ずっと会場に響く曲が忘れられなかった

警察官2年目で音楽隊への配属が決まったが、それから間もなく新型コロナウイルスの影響が広がった。音楽隊の活動は以前の半分以下に減り、有松さんが憧れていたふれあいコンサートも2021年に初めて無観客での開催となった。

有松沙姫さん:
私にとって1つの憧れというか目標だったので、やっぱり寂しいと思ったし、生の演奏を聴いてほしかったと去年は思った

「今年こそは観客を前に直接、音色を届けたい…」。音楽隊に所属する警察官の中で1番後輩の有松さんは、先輩隊員の指導を受けながら練習に励んだ。

パートリーダー・吉崎仁香さん:
まっすぐ音楽をするところが、すごくいいところ。吹けないと閉じこもるのではなく、とりあえず吹いて頑張ってみる

親切にしてくれた警察官への憧れ

そんな有松さんだが、本職は警察官。音楽隊の活動だけでなく交番勤務も行っている。

有松沙姫さん:
自転車降りて下さい!危ないので

有松さんが警察官を目指したのは、幼い頃のある経験がきっかけだった。

有松沙姫さん:
小学校低学年の頃に、ちょっとした性犯罪に巻き込まれて。その時に近くの交番のお巡りさんが、すごく親切にして下さったことを覚えていて。そのころから警察に対する憧れは心のどこかでずっとあった

警察官への憧れ、そして音楽隊への憧れが有松さんの原動力になっている。

コンサートに向けて課題がたくさん残る有松さん。交番勤務が終わっても、警察寮の食堂で1人練習に励む。

有松沙姫さん:
周りの音楽隊員には音楽歴が40年ある人もいる。私はクラリネットを始めたのもここ2年で、まだ全然レベルに追いつけていない

生活のすべてを捧げてコンサートに挑む有松さん。すべては自分たちの演奏を楽しみにしてくれているお客さんのため。

2年連続の無観客も「できることを一生懸命」

しかし…。

有松沙姫さん:
新型コロナウイルスの感染防止対策で、無観客で開催することになりました。申し訳ございません

年明けからのオミクロン株による感染拡大。2年連続の無観客開催が決まったのは、本番まで2週間を切ったタイミングだった。

有松沙姫さん:
またかと残念な気持ちでいっぱい。見に来たかった人たちの分まで背負って、本番まで練習していきたい

そして迎えた本番。無観客とはなったが、きっと届く観客の姿を思い描きながら最後まで演奏した。

有松沙姫さん:
お客さんはいなかったが、私たちができることをお客さんがいる状態と変わらず、一生懸命やった。楽しい演奏会をすることができた

有松沙姫さん:
いつかお会いできる日を楽しみに日々頑張っていますので、楽しみにして下さっている方も期待して待っていてほしい

きょうも練習に励む岡山県警音楽隊の新人隊員、有松沙姫さん。会場を埋めつくす観客に直接音色を届けるその日を夢見て…。

(岡山放送)

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