医師の診断なしに自らの検査だけで判断する、いわゆる“みなし陽性”の活用。背景にあるのが感染者急増を受け、ひっ迫する検査態勢です。新規感染者は、全国で7万1635人と、初めて7万人を上回り、東京都も1万4086人と、2日連続で過去最多に。そんな中、短時間で結果が出る抗原検査のキットの需要が高まりが不足する事態が相次いでいます。

政府からも検査キットのメーカーに増産の要請がなされている今、なぜ、増産が間に合っていないのでしょうか。「めざまし8」では抗原検査キットのメーカーを取材しました。

“検査キット”増産要請もメーカー「人手不足」

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アドテック株式会社:
「自動組み立て装置で、テストカードを製造しているところです」

1月26日夜9時ごろ、稼働していたのは、抗原検査キットの製造ライン。

アドテック株式会社:
「さきほどの組み立て装置でできあがったテストカードを人手で検品をしてトレイに詰め込みます」

機械だけでなく、人の手を必要とする検品作業なども行われていました。
大分県にある検査キットのメーカー「アドテック」はこれまでとは全く違う状況だといいます。

アドテック製造部部長:
「(1月から)1日ごとに2倍、3倍、4倍というふうに(受注が)増えていましたので、国の方からの厚労省からの増産体制が弊社のほうに来たときには。来るべき時が来たのかなという思いでいました。需要と供給のバランスが全然合っていないといいますか…

現在は、夕方5時までだった工場の稼働時間を、午後11時までに大幅延長。

箱詰め作業なども手作業で行っており、現在は、朝と夜の交代制にし、人員を倍の80人に土曜日も作業にあたっています。さらなる増産を目指したいといいますが、厳しい現状もあるといいます。

アドテック製造部・幡手真二部長:
「あの三倍量になるような形では今取り組もうとしているが、一番はその人手不足ってことですかね」

人員不足もあり、苦慮しているといいます。

さらに、週に最大48万キットを生産している「富士レビオ」は、北海道や山口の工場も休日稼働させ、増産体制に入っています。

また「デンカ」は、工場をフル稼働し、1日最大13万キットを生産。さらに、来月上旬から一部休日も稼働し、増産の準備をしています。

検査キットの不足解消に向けて進む増産体制。この状況が続けば、検査キットの需要はさらに高まっていくとみられます。このまま検査キットの不足が続くと、どのような弊害が起こるのでしょうか。

検査キットなぜ足りない?「買い占め」も3つの要因とは

検査ありきの政策が進んでいる一方、検査キットの不足が続いています。それだけ需要が高まっているということですが、PCR検査と抗原検査ではPCR検査の方が制度が高いと言われています。なぜ抗原検査に需要が集中してしまっているのか東邦大学感染制御学教授・小林寅喆さんに話を聞きました。

東邦大学感染制御学教授 小林寅喆さん:
「抗原検査の意義というものがわからずに検査の一つとして使われていると思います。抗原検査はある程度症状がでてきて、ウイルス量が上がってきた時にはじめて検出ができる。むしろ、無症状の方たちが、通常の状態で検出できるかというと、それはPCR検査に対しすごく劣るわけですから、やはりそこの使い分けも今はうまくいっていなくて、全てがその場でわかる抗原検査に注目がいってしまっていると思います。なので、検出感度がどれぐらいなのかということと、どこで、どのようなタイミングで使うことが一番いいのかをもう少し明確に指示した方が整理が付くと思います」

岸田総理はキット不足の事態に460万回分の在庫に対して増産を加え、要望に応えていこうという体制を取るとし、検査キットの不足の理由は“目詰まり”が起こっているためとしています。

一体どこで“供給の目詰まり”が起こってしまっているのでしょうか? 

目詰まりの理由一つ目は、企業の増産が間に合っていない可能性。二つ目の理由は、製品をうまく裁き切れていない可能性。平等な流通を維持するため出荷を見合わせている可能性もあるといいます。三つ目の理由は、医療機関以外が買っている可能性です。

重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ人の感染を早期に発見するために必要とされる抗原検査。供給を維持するため、抗原検査キット購入の自制が必要とされています。

(めざまし8 1月27日放送)