生き物の魅力を引き出す…。一人前の飼育員を目指して水族館で奮闘する、2人の新人飼育員に密着した。

隠れやすい魚をどう見せる? 常設展示でリベンジ

宮城県仙台市宮城野区にある「仙台うみの杜水族館」。バックヤードの片隅で黙々と作業しているのは入社1年目、魚担当の中尾圭さん(21)。

仙台うみの杜水族館 魚担当 中尾圭さん:
取りこぼしたフンなどをスポイトですくっています

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中尾さんが育てているのは、体長2ミリから2センチほどの「ダンゴウオ」という魚。まるっとした体と、おなかに吸盤があるのが特徴。

仙台うみの杜水族館 魚担当 中尾圭さん:
泳ぎが苦手だが、活発に泳いでいる姿がかわいいと思う

2021年5月から大切に育てている100匹のダンゴウオ。目標は繁殖だ。

仙台うみの杜水族館 魚担当 中尾圭さん:
ダンゴウオが繁殖する夢をみる。それぐらいお願いしますって感じでご飯をあげています

そんな中尾さんにチャンスが訪れた。長くバックヤードで飼育されていたダンゴウオが、常設展示されることになったのだ。中尾さんは以前も短期間でダンゴウオの展示に挑戦したが、「水を清潔に保つこと」や「隠れやすいダンゴウオを見せる」ことに苦労した。

仙台うみの杜水族館魚担当 中尾圭さん:
今回はいっぱい考えました。一回、失敗しているのでリベンジだと思って。ちょっと不安なんですけど不安をぬぐえるぐらい準備はしたので、あとはダンゴウオに頑張ってもらうだけ

ついに、25匹のダンゴウオが展示用の水槽に。

仙台うみの杜水族館 魚担当 中尾圭さん:
お父さんになった気分ですね

課題だった水の汚れは、ろ過装置で改善。岩や海藻にくっつく習性を生かして、ダンゴウオがよく見えるようレイアウトした。

仙台うみの杜水族館魚担当 中尾圭さん:
計画通り海藻にくっついてくれているのでいいですね

お客さんの反応も上々。

お客さん:
ちっちゃくてかわいいですね。どのぐらい成長するのか、また見に来てみたい

仙台うみの杜水族館 魚担当 中尾圭さん:
皆さんにはまず探してもらってから、かわいい姿を思う存分、目に焼き付けてほしい

「イルカと泳ぐことが夢だった」技の練習に励む

同じく入社1年目の坂本聖哉さん(21)。イルカやアシカ、鳥のパフォーマンスを担当している。

仙台うみの杜水族館 パフォーマンス担当 坂本聖哉さん:
あすかちゃんから皆さまに、愛のこもった投げキッス

幼い頃からイルカと泳ぐことが夢だった坂本さん。今の課題は、動物との信頼関係の構築だ。

仙台うみの杜水族館 パフォーマンス担当 坂本聖哉さん:
動物とは言葉を交わしてのコミュニケーションがとれない。日々の動物たちの動きや表情をしっかり観察して、動物たちとの信頼関係やコミュニケーションできない部分をカバーできるかなと思っています

坂本さんは2022年1月、潜水などの厳しいテストに合格し、念願のイルカとのパフォーマンスの練習を始めた。いま取り組んでいるのは、イルカに足先を押してもらって進む「スライダー」という技。

坂本さんの指導役 木村美香さん:
サインの出し方なんだけど、もうちょっと倒した方がいいかな

パフォーマンス歴はイルカのほうが先輩。イルカが飽きてしまわないように坂本さんへの指導に熱が入る。

坂本さんの指導役 木村美香さん:
イルカはもうできることを人間ができないから、イルカに「ごめんね」と言ってやってもらっている。そこをしっかり視野に入れて、今後どんどん課題があるのでクリアしていってもらえたらなと思う

仙台うみの杜水族館 パフォーマンス担当 坂本聖哉さん:
自分の中では全然、満足いく点数は付けられないけど「よかったよ」と言ってもらえれば、これが正解なんだとわかるので。良かった頻度を上げていきたい

「生き物の魅力を最大限に引き出したい」と励む、新人飼育員の挑戦は続く。

(仙台放送)

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