醤油味、小玉、キャベツ入り…地元民も知らない“名古屋風たこ焼き”

昔ながらの“名古屋風たこ焼き”は、醤油味。本場・大阪のたこ焼きがソース味なのに、なぜ「名古屋たこ焼き」は醤油味なのか?そのルーツを探るため大阪のたこ焼き発祥の店を訪ねると、そもそも大阪のたこ焼きもソースではなく醤油味ということが分かった。

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「名古屋風たこ焼き」について、名古屋の街で聞いてみた。

女性:
聞いたことないです

男性A:
名古屋のたこ焼きが独特?知らないです

男性B:
わからない。味噌がかかっているならわかりますけど…

名古屋のたこ焼きが独特という認識はないようだ。そこで、名古屋めし専門の料理研究家・Swindさんに聞いてみると…。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
「名古屋たこ焼き」と最近呼ばれるように。実は名古屋のたこ焼きが(他と違う)特徴だったということに、だんだん気付いてきた

「名古屋たこ焼き」は、どのようなものなのか…。まずは、Swindさんと最近オープンした名古屋たこ焼きがウリのお店へ。

名古屋市中村区のJR八田駅のすぐ目の前に10月にオープンした「さく蛸」の店の看板には、“名古屋焼き醤油専門”の文字が掲げられていた。

注文した「名古屋焼き醤油」(10個400円)は、外はカリカリで中はトロトロ、だし醤油がしっかり効いているたこ焼きだ。このたこ焼きのどこが名古屋風なのか聞いてみると…。

さく蛸の店主:
ひとつは醤油味、次に小玉。一般のたこ焼きよりも一回り小粒。そしてキャベツが入る

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
まさに名古屋の、昔から愛されてきたたこ焼きのスタイルがこれだと思います

「名古屋たこ焼き」の定義は、「醤油味」「小玉サイズ」「具材にキャベツ」の3つ。この店では、愛知県産の熟成たまり醤油を使っている。

また、甘味を引き出すために一晩干して水分を抜いたキャベツを使っているが、なぜ名古屋風たこ焼きにキャベツが入ったのか。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
愛知県がキャベツの産地ということと、昔はお好み焼きとたこ焼きが一緒に売られるケースが多かった

「誰かがお好み焼き用のキャベツをたこ焼きに入れ、それがおいしかったから広まったのでは」とSwindさんは推測する。

「ソースが当たり前」生地との相性抜群 本場大阪のたこ焼き

続いて向かったのは、名古屋市中区の本場大阪の味「元祖どないや」。

注文した鰹節と青のりがたっぷり乗った本場の「たこ焼き(ソース)」(1人前8個入り650円)は、染み込んだソースがトロっとした生地と相性抜群。大阪出身の店員さんに、名古屋たこ焼きについて聞いてみると…。

大阪出身の店員:
名古屋は醤油が普通と思われてる人が多いけど、僕の中ではソースです。たこ焼きは

本場大阪ではソースが当たり前。では、なぜ名古屋たこ焼きはソース味ではないのだろうか。すると、Swindさんからある見立てが…。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
大阪のソースが名古屋のソースとちょっと違うんじゃないかと。もしかしたら、そこの差が名古屋と大阪のたこ焼きの違いにつながっている可能性がある

醤油味の謎…名古屋の“こいくちソース”で実験

なぜ名古屋たこ焼きはソース味でないのか?その理由が、名古屋と大阪の“ソースの違い”にあるのかもしれない。名古屋を代表するコーミの「こいくちソース」で作ったたこ焼きはどのような味がするのか実験してみた。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
サラッとしたソース。「こいくち」は、しょっぱいではなくてうま味が濃い。うまみ成分が多い

東海地方ではお馴染みの「コーミソース」。名古屋のソースは、これに限らずうま味が濃くてサラッとしているのが特徴だ。焼き上がったたこ焼きに塗っていくと…。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
とろみがないんで、ソースを吸ってますよね。真っ黒に…見た目はあまりそそられない…

肝心の味も、ソースが生地に馴染むような一体感は感じられない。サラサラした名古屋のこいくちソースはフライ系などにはよく合うが、たこ焼きの場合、とろみがないため、表面に留まりにくく味が薄くなってしまうようだ。

一方、とろみのある関西風のソースをかけてみると…。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
見た目からツヤツヤして、とろみがあるからたっぷり塗れる。全然違う。照りがしっかり残っていておいしそう

見た目も関西風のソースの方がおいしそうだ。比較してみると、ソースの特徴の違いが、名古屋独自の“醤油たこ焼き”を生んだのかもしれない。

大阪のたこ焼きも醤油味だった 発祥の店で判明した事実

ここでSwindさんから、「大阪のたこ焼きももともとは醤油味だった」という説が…。真相を確かめるため、たこ焼きの本場大阪の「元祖たこ焼き 会津屋」を訪ねた。

会津屋は昭和10年に当時、子供のおやつだった「ラヂオ焼き」に初めてタコを入れ「たこ焼き」と名付けた“発祥のお店”として知られている。さっそく「元祖たこやき」(12個500円)を注文。

名古屋めし料理研究家 Swindさん:
ソースでない素焼き。しかも小ぶりなんで、名古屋のサイズに近い。だしの味がきいて、名古屋たこ焼きに限りなく近いというか…もうそのままだと思います

この店のたこ焼きは、「小ぶり」で「醤油味」と驚くほど名古屋たこ焼きに似ていた。店長に名古屋たこ焼きについて聞いてみると…。

会津屋の店長:
名古屋のお客さんがそういうの(名古屋たこ焼き)あるよとは聞いたんですけど…

やはり、名古屋から来たお客さんに「似ている」と指摘されるという。

名古屋たこ焼きがなぜ醤油味なのかを探ってみると、そもそも醤油味の大阪のたこ焼き発祥の店の味を受け継いでいる可能性があることが分かった。

(東海テレビ)

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