コロナ禍で海外旅行に行けない代わりに、海外のものをネットで買うという人も多いだろう。しかし、いま偽ブランド品などが急増している。いったいどれぐらい多いのか?
長年の経験と知識で密輸を防ぐ、通称「水際の番人」こと知的財産調査官の現場にカメラが潜入取材した。
3段階の検査で怪しい点がないかを確認
福岡市東区にある巨大な建物の一角。ここには、九州各地に配達される国際航空郵便が全て集まってくる。その取り締まりを行う場所こそ、門司税関「福岡外郵出張所」なのだ。
「関係者以外立ち入り禁止!」の看板の先で行われていたのは、X線検査。
この記事の画像(18枚)門司税関・大道寺剛 上席調査官:
はい、これ検査。(X線だと)ブランドロゴが金属製だったりすると、そこが浮かびあがって見えたりするので
海外から無数に届く偽ブランド品。エキスパートたちの仕事を見せてもらうと、さっそく何やら荷物を手に取っている。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
我々、検査官の経験と勘で、怪しい点が無いかを確認して選定します。多い時は200~300は来ますね
第一の作業は「仕分け」。調査官が大量の郵便物の中から、疑わしいものとそうでないものに分けていく。一体何をチェックしているのか?
――商品を振っていますが?
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
告知書に書かれている品名と、持った感触とか音で違和感が無いかもひとつのポイントになりますので、その確認をしています
コロナ禍に伴い、偽ブランド品を含む知的財産権侵害物品の差止め点数は急増。上半期ベースで見ると、実に6年ぶりに3万点を超えた。それだけ調査官の責務は重大になっている。
仕分けが終わると、次は第二の作業「X線検査」へ。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
検査検査。流し流し
X線で商品の中身を確認して、検査を続けるものとそうでないものを即座に判断。ここでも長年の経験が光る。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
これなんかよくあるブランドの靴の形をしているので、恐らく偽ブランドの可能性が高いですよね
中にはこんな偽ブランド品も横行しているようで…。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
これなんかはイヤホンですね
――イヤホンで偽物もあるんですか?
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
本物は結構、いい値段するので。形だけ似ていて、そんなのでいいやっていうニーズがあるんでしょうね
仕分けの段階から約4分の1まで減らした段階で、いよいよ迎えたのが最終作業の「開披検査」。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
今から実際に開披して、怪しいコピー商品がないかどうかの確認を行います
商品を傷つけないよう慎重に開封。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
こちらは異常なしでした
一方、こちらの商品は…。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
おそらくこれは偽物ですね。縫製もかなり粗くてですね
大きな段ボール箱から次々に出てきたのは、スポーツブランドを真似たコピー商品とみられる衣類だった。
――大量に入っていますね。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
全部で100点くらい入っているのもありますし、これもそうですね
ダウンや財布も…見分けるポイントは
続いて、税関在籍2年目の若手調査官が検査を行う。
女性調査官(2年目):
ダウンジャケットですね、冬用の。これはそうですね…。これは、偽物です
確認すること僅か3秒の出来事だった。
女性調査官(2年目):
この時期になるとこのタイプのものが増えてきますので。ある程度、どこを見れば判別できるか覚えているところがあります
――街中でも歩いている人の服やバッグが気になりますか?
女性調査官(2年目):
気になりますね(笑)
一方、こちらはプラダの財布。コピー商品の疑いが高いというが、何を基準に判断したのか?
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
見た感じ、すごい丁寧な作りというか、そのように見えます。でも、開いたときに変な皺ができたりは、あまり見受けられない。他にもいろいろポイントはあるんですけど
次々に些細な欠陥を見つけるエキスパートたち。検査開始30分余りで、いくつものコピーの疑いが高い商品を発見した。
犯罪組織の資金に? コピー商品の8割は中国から
――ネットショッピングが怖くなりますね。
門司税関・大道寺剛 上席調査官:
買われるときはしっかりと確認して。定価が何万円とかなのに「90%オフ」などという表示があるものは普通、そんなことないだろうなと怪しんで頂くのがいいですね
買う側もモラルが問われるコピー商品。その背景には、こんな大きな危険も潜んでいると警鐘を鳴らす。
門司税関 福岡外郵出張所・山口修一 知的財産調査官:
コピー商品は単なる偽物ではありません。背後には犯罪組織の関与が報告されています。税関ではそのような組織に資金が回らないように、今後も水際の取り締まりを強化していきます
差止めされたコピー商品のうち、実に8割が中国からのもの、次いでベトナムが増えてきているという。購入する商品がどの国から発送されるのかを確認することもまた、重要な指標と言えそうだ。
(テレビ西日本)