福岡県中間市で保育園児が送迎バスに取り残され死亡した事故をめぐり、警察は当時の園長など4人を書類送検した。事故から5カ月近く。遺族たちの深い苦しみは、今も続いている。
泣いている子に気を取られ…過失を認め謝罪
倉掛冬生ちゃん、5歳。悲劇はあまりにも唐突だった。
この記事の画像(15枚)冬生ちゃんの祖母:
二度とこんな事故がないことを願います。悔しいんです。無念な死を遂げた冬生のために罪を重くしてほしいです
2021年7月29日、冬生ちゃんは当時通っていた福岡・中間市の双葉保育園で炎天下の送迎バスに約9時間取り残され、熱中症で死亡した。
警察の再現実験では、バス車内の温度は50度以上に達していた。
事故当日は、当時園長だった女が1人でバスを運転し、車内には冬生ちゃんを含む1歳から5歳の園児が7人いた。園児を降ろす際、別の保育士も補助していたが…。
前園長:
泣いている子に気を取られて気づかなかった
園は過失を認め、謝罪した。
前園長:
冬生くんがいないことで、担任から確認の連絡がなかったので、私は登園しているとばかり思っていた。私の確認不足と、職員の連携がうまくいっておらず、重大な事故を起こしてしまい、誠に申し訳ございませんでした
警察は、これまでに100人近い関係者への聞き取り捜査を実施し、園の管理体制の不備が原因で事故が起きたと判断。当時の園長や冬生ちゃんの担任だった保育士など、あわせて4人を業務上過失致死の疑いで12月17日に書類送検した。
4人はいずれも容疑を認めていて、「園の管理体制が甘かったことは申し訳ない」などと供述している。
たった一度でも、車内の確認や欠席の確認を行っていれば、尊い命は失われずに済んだかもしれない…。
来春には小学生になるはずだった「孫は帰ってこない」
事故から3カ月半がたった11月、遺族はやりきれない胸の内を明かした。
――刑事処分は1つの区切りには?
冬生ちゃんの祖父:
僕はならないですね。なったところで、はっきり言ったら、冬生は帰ってこないですからね…
冬生ちゃんの祖父:
亡くなるちょっと前から、ランドセル買わないとと言ってたんです。冬生も小学校に行きたかったみたいで
2022年の春、小学生になるはずだった冬生ちゃん。
大好きな弟との突然の別れを6歳年上の兄は、今なお受け止められずにいる。
冬生ちゃんの兄:
ランドセル姿が見たかった。水族館とか行ったり、もっとサッカーを教えたりしたかった
兄は、家の中で弟とサッカーをするのが大好きだった。
冬生ちゃんの兄:
普通にハンドとかして。反則もしよったけん、冬生の方が。かわいくて元気で、やんちゃな子だった
カメラの前で遺族が見せてくれたのは、事故当日、冬生ちゃんが身に着けていたものだ。
冬生ちゃんの祖父:
やっぱり目頭が熱くなるというか、靴とか見よったらですね、体操服も。いつもかばんを背負って「行ってくるけんねー、じいちゃん!」って言いよったですから
登園したら園でシールを貼ってもらう「出席ノート」も残されている。あの事故が起きた7月29日にシールが貼られることはない。
冬生ちゃんの祖母:
この冬生のバスの閉じ込めによる事故を風化させてほしくない…。娘(母親)はもう一度、冬生に会いたいって言ってるんです。私も冬生に会えることなら会って、抱きしめてあげたい
書類送検受け…母親「あまりにも軽い刑罰」
11月27日の墓参り。
冬生ちゃんの祖父:
亡くなった時は(季節が)暖かかったんですけど、今は寒くなってですね。冬生の笑い顔は、やっぱり思い出しますけどね
冬生ちゃんの兄:
好きな「鬼滅の刃」のお菓子とサンタクロースの人形を(供えた)。「クリスマスプレゼントまで待っとってね」と
前の園長らの書類送検を受けて、冬生ちゃんの母親がコメントを出した。
冬生ちゃんの母親:
幼い冬生が長時間、地獄のような暑さの中に閉じ込められ、想像もできないほどの苦しさと孤独の中で命を落としていったことを思えば、あまりにも軽い刑罰だと感じています
冬生ちゃんの母親:
冬生が戻ってくることはありませんが、このような悲劇が二度と起こらないためにも、冬生の死に関わった人には、できる限り重い処罰が科されることを願っています
(テレビ西日本)