コロナ禍と相次ぐ原材料の値上げが続く中、小さなケーキ店が広島県府中町にオープンした。直面するさまざまな問題に奮闘するケーキ屋さんの現状を追った。
フランスで修行したオーナー兼パティシエ
12月にオープンした1軒のケーキ店。自宅を増築した店舗は、決して広くはない。しかし、ショーウインドーにはおいしそうなケーキが並んでいる。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
ぱっと見てかわいくて、食べてにっこりなれる。それで、また食べてみたいなと思えるようなケーキを作りたいと、いつも思っています
オーナー兼パティシエの藤本梨恵さんは、広島市や呉市の有名ホテルでパティシエとして勤務し、フランスでも2年半にわたり修行してきた。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
私はこのメレンゲのモンブランが好きで、作ってみたかった
――フランスは中がメレンゲが多い？
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
メレンゲのところが多いです
和栗のペーストを使ったモンブラン。中にメレンゲを入れるのはフランス流だ。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
マカロンやレーズンバターサンドにフルーツサンドとか、やってみたいものはたくさんあるのですが…
ケーキ飾りのサンタも不足…止まらぬ輸入品の値上がり
2021年に入って開業の準備を進めてきた藤本さん。しかし、そこにコロナ禍と原材料の値上がりが大きく立ちはだかった。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
夏ぐらいから準備していたのですが、いざ機材を買おうと決めた時に半導体が不足しているという原因もあって。コロナという中で、なかなか機材の納品が遅くなってしまい、前の勤め先は辞めると決めていたので
世界的なコロナ禍の影響で原材料の生産が減少する一方、経済の回復による急激な需要の拡大により、半導体などの部品不足が深刻になっている。冷蔵庫やオーブンなどは、特に製造量が減少している。
業務用機材販売会社「秀栄」・出野上健さん：
2～3日から1週間で入るものなのですが、（メーカーから）納期が2カ月くらいかかると言われましたので。ものによっては、受注停止のものもあるみたいで
――いつまで続きそう？
業務用機材販売会社「秀栄」・出野上健さん：
実際にはよくわかりませんが、年明けはまだ続くのではと思います。こういう経験は初めてですね
クリスマスケーキも、生クリームとチョコレートの2種類を作った。しかし、ここにもコロナの影響が影を落としている。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
今年は、サンタクロースのクリスマスケーキの飾りが不足していて
――なぜ、ないんですか？
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
海外製造のものが多くて。コロナでロックダウンしているところもあって、輸入が難しい
加えて、原材料の高騰も今後の大きな不安材料だ。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
薄力粉が値上がりに…もう少ししたらなる。クルミなども少しずつ上がってくるみたいなので、輸入物がちょっとずつ上がってくるような感じはしている
輸入品は原油高や円安の影響が大きく、値上がりが止まらない。
また、小麦は小売店の販売価格で、2021年に入ってキロあたり13円値上がりしている。業務用小麦は12月20日にさらに値上げが予定されていて、大手の製粉会社は家庭用の小麦も2021年1月の値上げを発表している。
「できれば安く提供したい」客のことを考え価格を決定
そんな中で開業した藤本さん。商品の価格を決めることに悩んだ。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
今から値上がりすることを考えて、どうしたらいいかとか。何が値上がりするのか全てを把握できているわけではないので、どうしようかなというところはあった
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
起業してすぐに値上がりは、だましたみたいで嫌なので。できれば当分は、この価格でやってみたいと思っています
コロナ禍と値上がりの中で開業した藤本さんの小さなケーキ店は、一抹の不安を感じながら最盛期のクリスマスシーズンを迎えようとしている。
ポールキャトラー・藤本梨恵オーナーパティシエ：
できればお安く提供したいです
――値上がりへの不安感はある？
そうですね、不安ですね
お客さんが笑顔になるケーキを届けたい。町の小さなケーキ屋さんの挑戦は、始まったばかりだ。
（テレビ新広島）
