東京駅などで新幹線が折り返し運転となる場合、スタッフが手際よく車内の点検や整備をしている姿を見ることがあるだろう。

その作業の向上を目指し、JR東海がこぼれた飲み物などで座席が濡れていないかどうかを判別できる「座席濡れ検知装置」を開発し、12月1日から東海道新幹線の清掃で使用を始めた。

東海道新幹線の座席(提供:JR東海)
この記事の画像(7枚)

「漏れ検知機能付きホウキ」と「漏れ検知装置」の違い

目的は、整備スタッフの身体的負担の軽減だ。これまで、座席濡れの判別に使っていたのが「濡れ検知機能付ホウキ」で、こちらはホウキの先に電極があり、座席に押しつけて水分を感知すれば警報が鳴る仕組み。

濡れ検知機能付ホウキ(提供:JR東海)

整備スタッフが1編成あたり約1300席の全座席を1席ずつ中腰で確認しなければならず、身体的な負担となっていたという。
 

こうした状況を受け、12月1日に導入されたのが「座席濡れ検知装置」だ。棒の先端に温度を色で識別できる「サーモグラフィカメラ」、棒の手元には「スマートフォン」が付いている。

座席濡れ検知装置(提供:JR東海)

整備スタッフが「サーモグラフィカメラ」を立ったまま座席にかざし、濡れていればスマートフォンから警報音が鳴り、さらにスマホ画面で濡れている席を示してくれる仕組みだ。

従来の「濡れ検知機能付ホウキ」では1席ずつ確認しなければならなかったが、「座席濡れ検知装置」では2~3席分をまとめて確認できるようにもなった。

たしかに中腰の姿勢で1席ずつ座席を確認するとなると、腰などに負担がかかるのは想像できる。では、この装置で、どのぐらい負担が軽減されるのだろうか?

JR東海の担当者に話を聞いた。

座席濡れは2020年度で6万4216件

――この装置の開発にどれくらいの期間がかかったの?

2019年12月~2021年2月となります。


――開発するにあたって、苦労したポイントは?

整備スタッフの身長差や撮影角度のずれ、車内の明るさの違いなどの影響を受けず、正確に検知エリアを認識し、座席濡れを検知するための機能を開発しました。

機能は2つあり、1つは「機械学習技術を活用した画像分析により、ひじ掛け位置をもとに、座席・座面を自動的に認識する機能」です。

もう1つは「赤外線画像から座面部分の温度を取得し、周囲との温度差から、濡れた箇所を自動で判定・表示する機能」です。

正確に検知エリアを認識し、座席濡れを検知するための機能(提供:JR東海)

――そもそも、座席濡れは年間でどのぐらい確認されている?

2020年度で6万4216件です(東京駅折り返し整備における件数)。


――座席濡れの主な原因を教えて。

2020年度の6万4216件のうち、「水濡れ」が5万9897件(93.3%)、「飲み物類」が4113件(6.4%)となります。


――1編成あたり約1300席となると、「座席濡れ検知装置」の導入前は何人の整備スタッフが、どのぐらいの時間をかけて座席濡れを確認していたの?

1度の折り返し整備時に携わる、車内整備担当は44名です。その内、座席濡れの有無を点検するスタッフは32名となります。

折り返し整備に必要な時間は場合によりますが、短い場合(1時間にのぞみを片道12本運転する際)ですと、約10分となります。

座席濡れ検知装置(提供:JR東海)

導入で「作業時間の均一化が図れる」

――「座席濡れ検知装置」を使うと、整備スタッフの負担はどのぐらい軽減される?

中腰での連続した作業が軽減されます。


――「座席濡れ検知装置」の導入後、点検にかかる時間に変化はあった?

今回の開発は整備スタッフの身体的負担の軽減を目的としたもので、開発段階では少なくとも現状の作業時間内で作業が可能であることを目標として開発を進めてきました。

現時点では、「濡れ検知機能付ホウキ」の作業時間と同等のレベルです。「濡れ検知機能付ホウキ」では整備スタッフの熟練度や技量で、作業時間や出来栄えに差が出ていました。

「座席濡れ検知装置」に切り換えることで、作業時間の均一化が図れ、作業時間の個人差がなくなると考えています。整備スタッフが「座席濡れ検知装置」の取り扱いに慣れた時点で、作業手順なども含めて見直しを行い、トータルの作業時間の短縮につなげていきます。

スタッフの数については変更ございません。


――整備スタッフの反応は?

今までの中腰での連続した作業と比較すると、身体的な負担は十分に軽減されたという感想が多くあります。

N700S(提供:JR東海)

整備スタッフの身体的負担の軽減を目的に導入された「座席濡れ検知装置」。今後は、従来の「濡れ検知機能付ホウキ」の課題だった作業時間の均一化が図れるのか、引き続き注目したい。