大型魚などに張りついて生活する「コバンザメ」。このコバンザメを部屋のいろいろな場所に張りつけている画像がTwitterに投稿され、話題となっている。
コバンザメを入手したから部屋の至る所に貼って遊んでた(この後めちゃくちゃ怒られた) pic.twitter.com/97IqCHRxyu
— 夢海@520魚種食べた人 (@YUMEUMI27) November 27, 2021
「コバンザメを入手したから部屋の至る所に貼って遊んでた(この後めちゃくちゃ怒られた)」とのコメント共にTwitterに投稿されたのは、鮮魚店で購入したというコバンザメがドアなどにくっついている画像。
大きさは63センチで、また普段は見ることがないような光景ということもあり、異様な存在感を示しているが、地上でもいろんな材質にくっつくことがわかる。

Twitterに投稿したのは図鑑や水族館などで、独学で魚の知識を学んでいる「夢海@519魚種食べた人」(@YUMEUMI27)さん。
なお投稿には続きがあり、ドアに張り付けた後は刺身にして食べたという。「ハーイ!マイネームイズ KOBANZAME」と書かれた紙と共に舟盛りにされたコバンザメの刺身は見た目も綺麗で美味しそうだ。

このコバンザメをドアに張りつけるという行動にTwitterでは「どこでも張り付くんですね」「車のボンネットにはり付けたい」などの声があり、約1万6000件のリツイートと約6万7000件のいいねがつくなど、話題となっている。(12月16日現在)
とても興味深い投稿だったが、そもそも、なぜ部屋のあらゆるところにコバンザメを張り付けるという発想に至ったのか? また刺身の味はどうだったのか?
投稿者の夢海@519魚種食べた人さんにお話を伺った。
コバンザメがくっつく素材を知りたかった
ーーなぜコバンザメを部屋のあらゆるところに張ろうと思った?
コバンザメがくっつく素材を知るために張ろうと思いました。今後知り合い等、研究されている方に提供出来るようまとめております。
ーーどんなところにコバンザメを張ってみたの?
ドアや棚の扉、ガラス等異なる材質の壁面など、思いつく限り張りました。
ーー剥がすときは大変だった?
壁に飾るための吸盤のような仕組みをしており、いわば真空のような状態で張り付き、隙間を作れば簡単に剥がれます。ぬめりを洗い落としてから張ったので臭いは気になりませんでした。

クセがなく上品な味わい
ーー家族の反応は?
親に許可を取り付けるのが大変でした。魚好きでサメなどを丸ごと仕入れて標本を作ったりもしているので、もう慣れた様子ではありました。
ーーどんな味だった?
味わいは旨味、脂共によく乗っており、クセがなく上品な味わいです。近いものだとカンパチに似ています。
ーー反響についてどう思う?
ここまで反応頂けると思っていなかったので、驚きと共にこれをキッカケに魚に興味持って頂けた方がいればいいなと思いました。

ちなみに投稿した際に「この後めちゃくちゃ怒られた」とあったが、実際は嫌がられたという雰囲気で、Twitterらしい面白さを出すために表現を少し誇張していたようだ。
そして、いろいろな場所にくっつくことや、味が上品なことは分かったが、もう少しコバンザメについて知りたい。
魚に詳しい高知大学理工学部生物科学科の遠藤広光教授にもお話を伺った。
吸盤は通常では中々外れない
ーーコバンザメの生態と特徴を教えて
遊泳性の強い大型の魚類(サメ類やイトマキエイ類)やウミガメ類の体表に、頭部背側にある吸盤で付着して生活します。体は細長く、体側には1本の黒い帯模様があります。上顎より下顎が前に出ており、大型魚の体表に付着しながら餌を食べやすい構造になっています。
ーー生息域は?
東太平洋を除き、世界の暖海域に分布します。日本の沿岸では普通種で北海道から琉球列島まで。日本海、太平洋、そして東シナ海にも生息します。

ーー吸盤はどういう構造なの?
第1背鰭という部分が変形したもので、左右1対の板状体(棘条と呼ばれる魚のひれが左右に開いたもの)が18から28並んでおり、その背面には細かな棘が付いています。

ーー何にでもくっつくの?
吸盤を押し付けて、吸盤内が外よりも気圧が低い状態を保てる場所なら付着できると思います。通常では中々外れないです。
ーー投稿についてどう思った?
家の中のものにくっつけたところを見たことが無かったので、単純に面白い画像だと思いました。

部屋中にコバンザメを張り付けたのは、ただ遊んでいたのではなく吸盤がくっつく素材を知りたいという知識欲があった。生態を聞いた教授も「家の中のものにくっつけたところを見たことが無かったので、単純に面白い」と話していることから、素晴らしい検証だったのではないのだろうか。