ここ数年 注目されている「持続可能な取り組み」。静岡県では捨てられていた繊維の“くず”が、さまざまな工芸品に生まれ変わっている。

優しい色合いで、ふわふわとした素材がかわいらしいショルダーバッグ。

テレビ静岡・高里絵理奈アナウンサー
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高里絵理奈アナウンサー:
こちら一見、ファー素材のように見えますが、実は遠州織物を裁断した際に生まれる繊維くずを使っているんです

捨てられていた繊維くず「布耳」とは

浜松市を中心とした遠州地方で生産される織物「遠州織物」。その裁断の工程で生まれるのが「布耳」と呼ばれる繊維くずだ。

遠州織物を製造するメーカー、牧之原市の榛地織物を訪ねた。

遠州織物のメーカー榛地織物(静岡・牧之原市)

高里アナ:
いらない部分はどこですか?

榛地織物・榛地道夫さん:
こちらが本体の必要な部分。この部分はいらないんですけど、糸の長さが一定じゃないので一定にするためにカットしてる。この余った部分が捨て耳と言って、いらない部分

切り離された耳布 以前は捨てられていた

実はこの「布耳」が、上品なバッグへと姿を変えていく。

布耳に注目したオンラインサイト

この布耳を使った作品作りを企画して募集したのは、手作りの雑貨などを直接売り買いできるオンラインサイト「クリーマ」だ。

クリーマ・丸林耕太郎代表:
日本のいろんな土地が持っている良い物と、クリーマのこれまで一緒にやってきた20万人以上のクリエイターが一緒に連携することで、今までにない地方創生の取り組みができるのではないかと

クリーマの「全国いいもの発見プロジェクト」のサイト

その名も「全国いいもの発見プロジェクト」。これまでに、全国各地の工芸品とクリエイターをつないできた。
そして今回、注目したのが「遠州織物」だ。その理由は...

クリーマ・丸林耕太郎代表:
いろんなディスカッションをしている中で、廃材の問題をかなり生々しく聞かせていただいて、今はごみクズかもしれないけれど、これって実は価値があるんじゃないか。繊維くずをつかって何かできないかという話になった

クリーマは廃棄されていた耳布に価値を見つけた

布耳は産業廃棄物…その長さは年間で日本~南アフリカに匹敵

遠州織物を裁断した際に生まれる布耳は産業廃棄物に指定されていて、毎年ゴミとして大量に廃棄されている。
遠州織物工業協同組合によると、毎年約1万4400km、日本から南アフリカまでの距離と同じくらいの長さの布耳が捨てられている。
この布耳を全国のクリエイターの力を借りて何とかしたい。

そこでタッグを組んだのが遠州織物を広めるため活動している、浜松市の遠州織物工業協同組合だ。

遠州織物工業協同組合 遠州織物を広めるため活動している

遠州織物工業協同組合・加藤満さん:
ゴミ箱の中にポイっと入れられて今まで雨ざらしになっている状態で、産地にいながらなかなか手を付けられない存在だったので、今回こういうプロジェクトに使っていただけてありがたい

なかなか使い道がなく、捨てるしかなかった布耳。これが様々な作品に生まれ変わる。

遠州織物工業協同組合・加藤さん「(布耳は)産地にいながら手を付けられない存在だった」

遠州織物工業協同組合・加藤満さん:
それぞれのクリエイターさんごとの特色があって、私たちには思いつかないような作品に仕上げていただいて感動しました

クリエーターから活用案が続々

遠州織物や布耳を使った作品は全国のクリエイターから100点以上の応募があった。
アクセサリーや雑貨など、幅広いジャンルの作品が誕生している。

布耳を使ったピアス

静岡県内在住のクリエイター・meimeiさんは、布耳の柔らかな素材を生かしたバッグを制作した。

meimeiさんが布耳で作ったバッグ

meimeiさん:
布耳だけの編地の時もあるんですけど、華やかさを出すために飾り糸を一緒に編みこんだりしている

他の素材と組み合わせることで、デザイン性が加わり、これからの季節にぴったりなオシャレなアイテムに生まれ変わった。

布耳を知らなかったmeimeiさん 素材に刺激を受け創作意欲が高まる

meimeiさん:
素材として「布耳」自体を知らなくて。ふんわりした感じとかが、毛糸とかとまた違って、とてもやさしい気持ちになれる素敵な素材だと思った。廃材に対して自分が力になれることがあったのがとても嬉しいし、地元の力になれるというのはとても嬉しい

布耳を作品の素材として使いたいという声が多く寄せられ、クリーマでは今後も布耳の販売を続ける予定だ。

布耳でつくった御祝儀袋の飾り

クリーマ・丸林耕太郎代表:
「ものづくり」で発生した廃材を、「ものづくり」の力でもう一度よみがえらせて、価値をつむいでいくことで循環させていく。いわゆるサステナブルな世界を作れたらいいなと思う。こういう取り組みを少しづつ広げていきたいと思っています

布耳でつくったポーチ 新しい感触とデザインだ

クリエイターの技術と想像力で、繊維くずという廃材に命が吹き込まれたこの取り組み。持続可能な循環が生まれている。

この「布耳」はクリーマのオンラインサイトと遠州織物工業協同組合(053-478-0121)で販売されている。

(テレビ静岡)