島根・松江市にある中国電力・島根原子力発電所2号機。
再稼働に向けた動きが進む中、その原発が立地する自治体である松江市のトップ・上定昭仁市長が、10月下旬に初めて福島第一原発を視察した。
日本の原発に大きな転換期をもたらした大事故の現場から何が見えたのか、同行取材した。

廃炉まで30〜40年…処理水の問題も

松江市・上定昭仁市長:
廃炉の現状、それを踏まえ、教訓として学び取ったところを把握したいと思う

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今回の視察は、島根原発2号機が再稼働に向けてクリアした国の新しい規制基準のいわば元になっている福島第一原発の事故現場を見て、松江市が今後下さなければならない再稼働の可否判断の一助にしようというもの。

上定市長にとって初めての視察は10月21日に行われ、丸一日かけて原発構内を見て回った。

構内での線量計の数値は、1時間あたり0.3マイクロシーベルトと自然界にあるレベルで、比較的高いとされる原子炉建屋近くでも100マイクロシーベルトと、東京とニューヨーク間を航空機で移動した際に受ける量にまで下がっている。

安部大地記者:
私の奥100メートル程先にあるのが、水素爆発を起こした1号機です。除染が進み、3年前から防護服なしでも近づけるようになりました。ただ、その姿は10年前と大きく変わっていません。骨組みの中に当時の瓦礫も残っています

また、1号機に続き水素爆発した3号機には、ドーム状のカバーがつけられている。構内にある1号機から4号機まで、4つの原子炉全ての廃炉が完了するには、30年から40年がかかるとされている。

水素爆発した3号機
水素爆発した3号機

一方、喫緊の課題となっているのが施設内で発生した汚染水の処理。

職員:
ご覧の通り無色透明です。茶褐色のものが浄化されていて、無色透明になっている

施設内には処理が終わった汚染水、処理水を一時的に保管する約1,000個のタンクが設置され、貯蔵量は約126万トン。既に上限の約9割に達しているという。

海洋放流の計画が出ているが、地元漁業者を中心に反対も大きく、解決のメドはまだたっていない。

事前了解「するか」「しないか」…責任の大きさ

上定市長は、国の新しい規制基準が事故を教訓にした厳格な基準であることを確認できたとした一方で、最終的な可否判断については…

松江市・上定昭仁市長:
時期を定めて決めていくものではないので、実態の部分といいますか、電力事業を営む事業者の信頼、市民の方がどう捉えるかが重要。市民の心配、意見を聞くことで議論を進めていきたい

上定市長は、住民などの意見を聞いた上で議論を進める事を改めて強調した。
松江市は、島根県とともに島根原発の立地自治体として、2号機再稼働に対し、事前に了解するか、しないか判断できる権限を持っているだけに、その責任の大きさもまた問われている。

(TSKさんいん中央テレビ)

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