脱プラスチックを目指して、愛媛・松前町の企業がお米を使ったバイオマスの歯ブラシを開発。全国のホテルから注目を集めている。
業界初 お米からできた歯ブラシ
旅館やホテルが立ち並ぶ観光地・道後。
老舗旅館・大和屋本店の客室に置かれているアメニティーの歯ブラシの包装をよく見ると、環境に配慮した商品を示すバイオマスマークとともに、ある表記があった。

新岡幹記者:
この歯ブラシのハンドルは、「食用外のお米35%を配合したエコハンドルです」と書かれています。お米でできた歯ブラシなんですね。珍しいですね
アメニティー業界初となる、お米を使って作ったバイオマスの歯ブラシ。

新岡幹記者:
一般的なプラスチックの歯ブラシと、見た目はそう変わらないですね。とてもお米でできているようには見えません
持ち手部分の素材35%は、プラスチックの代わりに、食用には適さず廃棄されるお米が使われている。
また、ハンドル部分を空洞化させたことで、プラスチックの使用量を従来の歯ブラシよりも51%も削減させている。

大和屋本店・大内栄之支配人:
私どもが環境に配慮した取り組みをしているということをお客さまに知っていただくところと、プラスチックゴミの問題がありますので。そういったところに意識ありましたので、導入の方も難しく考えずにできたと思います。
お米ですので、日本人になじみが深いというところで、安心感があるかと思っております

プラスチックゴミの削減とリサイクルの促進を目的に、2022年春に施行される「プラスチック資源循環促進法」では、ホテル側にプラスチック製の歯ブラシなどを削減するよう求められている。

大和屋本店・大内栄之支配人:
来春からプラスチックゴミ削減の施策が始まりますけど、それに向けて継続していくべきなんだろうなと考えております
フードロス削減から誕生「少しでも環境に配慮を」
こうした流れから、全国のホテルから注目を集めているこの歯ブラシは、ホテルのアメニティーを扱う松前町の「山陽物産」が開発した。
山陽物産・武内英治社長:
ホテル用の歯ブラシというのは、1回使うと捨てられることが多いので、少しでも環境に配慮した商品を作りたいという思いから作りました

こちらでは、新型コロナの影響で、ホテルのアメニティーの出荷量が半減している一方、お米の歯ブラシの問い合わせは増えているという。

山陽物産・武内英治社長:
全国のホテルで採用いただいております。100社くらいのホテルに納品してますし、今 非常に問い合わせが増えています
歯ブラシに使われているのは、廃棄されるお米とプラスチックを7対3で配合したバイオマスプラスチックだ。
このバイオマスプラスチックは、バイオマス資源の事業を行う新潟県の企業が開発したもので、米どころ・新潟ならではのお米のフードロス削減から誕生した素材となっている。

山陽物産・武内英治社長:
お米というのは、日本の主食米ではありますが、非常に捨てられている量が多い。このお米からプラスチックの原料が作れるということに感動いたしまして、この商品を採用いたしました
脱プラスチック化へ…一般販売にも挑戦
しかし、お米が原料ゆえに、さまざまな課題もある。
山陽物産・武内英治社長:
お米を入れることによって、やはり強度は落ちます

山陽物産・武内英治社長:
その強度を保ちながら、大きさ・比重、どれくらい混ぜたらいいかということを考えました。多く入れると、お米なので焦げやすいというのも出てきまして。1年くらいいろいろやりまして、強度が弱くなる問題にも直面しましたし、いろんな問題を乗り越えてやってきました
試行錯誤の末に完成したお米の歯ブラシだが、現在の出荷量はまだ工場全体の出荷量の1割にも満たない、月10万本だという。

山陽物産・武内英治社長:
私どもの工場で、歯ブラシで年間420トンほどのプラスチックを使いますが、全部この歯ブラシに変えてもらうと220トンという形で、かなりの削減になります。こういったことを広く進めていきたいと思っています
そこで新たに打ち出したのが、お米の歯ブラシの一般販売。ホテルアメニティーの枠を超えた新たな挑戦を打ち出した。

山陽物産・武内英治社長:
新しいチャレンジになるんですけども、一般のチャンネルにも販売していきたいと。ホームセンターやスーパーなどで販売していただけたらなと思っております
商品は、ホテルアメニティーの使い捨てタイプとは違い、一般向けに改良されたものとなっていて、10月1日から全国のスーパーやドラッグストアなどで販売される予定だという。

フードロスを解消しながら、脱プラスチック化へ。
これまでプラスチック製が主流だった歯ブラシも、徐々に環境に配慮した商品へと形を変えつつある。
(テレビ愛媛)