捨てられる包装材が実は…優れた耐久性に注目

廃棄されるものや使わなくなったものを、素材の魅力を生かしながら新たな価値を付け、再び社会に流通させる「アップサイクル」と呼ばれる取り組み。

今、全国的に広がりを見せており、愛媛でも関心が高まっている。

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買い物客:
かわいいですね、全部かわいい

女性が手に取っているのは、シンプルながらも個性的なデザインのバッグ。

買い物客:
すごいおしゃれでびっくり。こっちはすごい丈夫だし、軽くて薄くて買い物にいいなと思いました

どれも目を引くおしゃれなデザインだが、実はこれらはとても珍しい素材を使った商品。

共栄木材・西下文平専務取締役:
こちらが、かばんに使われているランバーカバーです

バッグに使われている素材は、海外からの輸入木材を保護する包装材「ランバーカバー」。

住宅用などの木材を扱う伊予市の木材会社、共栄木材の作業場には、さまざまなデザインのランバーカバーが並んでいるが…。

共栄木材・西下文平専務取締役:
毎月50~60枚は、ゴミとして廃棄しています

共栄木材・西下文平専務取締役
共栄木材・西下文平専務取締役

実はこのランバーカバー、これまで産業廃棄物として当たり前に捨てられていたものだった。

共栄木材・西下文平専務取締役:
単なる包装とかしか見ていなかったので、これをおしゃれとか、かっこいいと価値を見つけてもらって僕らもうれしい

捨てられていたランバーカバーに価値を見いだし、バッグとしてよみがえらせたのは、アップサイクル愛媛の大久保仁志さん。

アップサイクル愛媛・大久保仁志代表:
取引のある木材会社に行った時に、大量に捨てられているランバーカバーを目の当たりにしまして。海外から輸入する時に木材を保護するカバーなので、かなり耐久性に優れてますし、軽い。雨に強い耐水性にも優れてるので、エコバックとしては重宝される素材なんじゃないかなと思いました

アップサイクル愛媛・大久保仁志代表
アップサイクル愛媛・大久保仁志代表

縫製職人がひとつずつ手作り「他にないデザインを」

このように廃棄されていたものや使われなくなった素材に新しい価値を付け、再び社会へ流通させる仕組みは「アップサイクル」と呼ばれ、今、全国的に広がりを見せている。

このアップサイクルを愛媛県内でも広めようと、建築士や縫製職人など若手の職人が集結して活動しているのが、大久保さんが代表を務める「アップサイクル愛媛」。

松山市内にあるアップサイクル愛媛の店舗兼工房
松山市内にあるアップサイクル愛媛の店舗兼工房

バッグは、松山市内にあるアップサイクル愛媛の店舗兼工房で、縫製職人によって1つ1つ丁寧に手作りされている。

アップサイクル愛媛 縫製担当・神崎創さん:
例えばこれ、裏はちょっと穴が開いていたりしてるんですが、捨てるわけじゃなく、そこも使って大きな素材なので。そこをパーツで埋めていくんですけど、ステッチも感覚で全部やっています。世界に一つの作り方で、他にないデザインで作っています。捨てられる物が生まれ変わって、また使われていくっていう過程が楽しいですね。ワクワクしますよね

アップサイクル愛媛の縫製担当・神崎創さん
アップサイクル愛媛の縫製担当・神崎創さん

お店では、お客さんからのオーダーメードにも対応している。キャンプ用のカトラリーケースをオーダーしに来た男性に話を聞いた。

オーダーした男性:
もともと(職業が)建築なので、元の素材自体を知っているので、丈夫でちょうどいいなと思って。(既製品には)こんな丈夫な生地のものは無いので、いいものになったら素晴らしいなと思います

廃材にとどまらず…空き家になった銭湯も新しい店に

アップサイクル愛媛が手がけているのは、ランバーカバーのバッグ以外にもある。

物流の現場で使われている、パレットと呼ばれる木材の板を活用して作られたローテーブル。

アップサイクル愛媛・大久保仁志代表:
パレットに関しては弊社が物流会社をしていますので、毎日5~6個くらい無駄なパレットが出てきてしまうので、バラして焼却炉で焼いたり廃棄しているんですけど、それを使ってテーブルや家具を作れたら、その捨てるゴミの分だけでも減るなと

また、廃材だけなく、使われなくなった建物のアップサイクルにも取り組んでいる。

松山市内にオープンしたお酒のセレクトショップ「バーテンダーセレクトGION」。

洗練された店内でひと際目立つのが、浴槽のデザインのインテリア。

実はこの場所、もともとは銭湯だった。廃業し空き家になっていた建物を、アイデアの力で再び新しいお店としてよみがえらせた。

アップサイクル愛媛・大久保仁志代表:
建物自体は壊さずに内装だけちょっとやり替えたり、銭湯の趣を残しつつ新しい物販に改装して、なるべく通常の現場よりもゴミを少なく改装しようと

まだまだ愛媛では認知度が低いアップサイクル。今後の目標は?

アップサイクル愛媛・大久保仁志代表:
行政と一緒に取り組みを進めることが、ひとつの目標。大きな影響を与えるためには、地域とか松山市や愛媛県と一緒に何かプロジェクトができたらいいなと

ゴミも資源。環境に配慮し、アイデアの力で生まれ変わったアップサイクルが、これからの時代が求める最先端のおしゃれとなる日は、そう遠くはないかもしれない。

(テレビ愛媛)

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