意外なものを夢中になって追いかける、ウミガメの姿が話題となっている。

三重県紀宝町にある水族館「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」の公式Twitterアカウントが「この水槽の掃除が1番楽しいです」と投稿したのは、飼育員が水槽を掃除する約50秒の動画。

水槽の掃除中、ブラシを見つめる1匹のカメ
水槽の掃除中、ブラシを見つめる1匹のカメ
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掃除用のブラシで底をこすり、汚れを落としていくのだが…そこに現れたのは、水族館で飼育しているアカウミガメのだんごちゃん(5歳)。このだんごちゃん、ブラシに反応するのだ。

それがだんごちゃん。ブラシに夢中といった様子
それがだんごちゃん。ブラシに夢中といった様子

動画ではブラシを追いかけてくるくると回り、デッキ部分を噛もうとする姿も。飼育員はそれをいなしながら、水槽をきれいにしていた。

最後はブラシとの追いかけっこに
最後はブラシとの追いかけっこに

まるで動物がじゃれているようだと話題になり、この投稿が話題に。動画は380万回以上も再生されていて、ブラシを猫じゃらしに例えて「亀じゃらし」と名付ける人もいた。

可愛らしい姿だが、だんごちゃんはなぜブラシに反応したのだろう。他のカメとは違っていたりするのだろうか。実際に掃除をしていた、道の駅 紀宝町ウミガメ公園の飼育員に聞いた。

だんごちゃんはまだ「小さな子ども」

――だんごちゃんは人間でいうとどれくらい?

ウミガメは人間と同じくらいの寿命があると言われています。生物としての成熟度は甲羅の大きさで測ることが多く、甲羅が80センチを超えると産卵可能と言われています。だんごは年齢が5歳で甲羅も40センチほどなので、小さな子どもといったところでしょうか。

だんごちゃんの普段の様子。まだ子どもだという
だんごちゃんの普段の様子。まだ子どもだという

――投稿動画ではどんな作業を行っていた?

展示用の水槽のコケを落としていました。放置しても水質は問題ないのですが、お客さまが見やすいように、夏場は2日に1度、冬場は週に1度くらいの頻度で行います。だんごは2020年10月ごろから、気付いたらブラシを追うようになっていました。

別の日のだんごちゃん。ここでもブラシに反応
別の日のだんごちゃん。ここでもブラシに反応

――ブラシに反応している理由は分かる?

本当のところはだんご自身にしかわかりませんが、推測するに(1)餌と勘違いしている(2)好奇心で追いかけている、この2つが想定されます。普段の餌はアジやイカ、野菜などをあげているのですが、自然界のカメは甲殻類なども食べたりします。

「なんだろうこれ?」という好奇心では

――だんごちゃんの様子はどう見えた?

なんだろうこれ?といった感じで、ブラシと追いかけっこしていると思いました。ウミガメは基本的に自分から攻撃することはしませんので、好奇心の気持ちが強いと思います。たまに飽きるというか、急に追ってこなくなることもありましたね。

他の魚とだんごちゃん。穏やかで攻撃性はない
他の魚とだんごちゃん。穏やかで攻撃性はない

――他のカメなどは反応しているの?

この水槽ではだんご以外にも、アオウミガメ、クロウミガメを飼育していますが、他のカメはブラシに大きな反応は示していません。過去には別のアカウミガメがブラシに反応したことはありましたが、追い回すことはしませんでした。

クロウミガメとアオウミガメ
クロウミガメとアオウミガメ

だんごちゃんもいつかは海に帰る

――そのアカウミガメはどうなった?

海に帰りました。私たちの水族館はリハビリ施設のようなもので、地元の定置網に引っかかって元気がなかったり、けがをしたカメなどを引き取り、元気になれば海に帰しています。だんごは孵化したので少し特別ですが、いつかは海に帰る予定です。

保護をして元気になったら海に帰している
保護をして元気になったら海に帰している

――話題となったことをどう受け止めている?

Twitterでは、犬や猫を飼育している方から「自分たちのペットも同じような行動をする」との反応もいただきました。これを機会にカメを好きになっていただければうれしいです。遊ぶという概念がカメにあるのか分かりませんが、だんごの暇つぶしになっていればいいですね。

ブラシに対するだんごちゃんの興味は、大人になって落ち着くのか、それとも変わらないのか。だんごちゃんが海に帰る日まで、ブラシとの追いかけっこは続くかもしれない。

※道の駅 紀宝町ウミガメ公園は三重県の緊急事態宣言により、9月30日まで全館休業

(画像提供:道の駅 紀宝町ウミガメ公園)

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プライムオンライン編集部
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