島根・隠岐の島町で保護された、アカウミガメのリブ。
TSKで約1年にわたり継続的に取材してきたリブが先日、ついにリハビリの末に大海原に返された。
旅立ちまでをカメラが追った。

保護から11カ月…逞しく一回り大きく成長
2020年夏に隠岐の島町の海岸に漂着し、瀕死の状態で保護されたアカウミガメ。

網が絡みついた右前足は壊死した。

回復を手助けした島民によって生きる希望を託し、「リブ」と名付けられた。
リブはリハビリのため、神戸市の水族館で過ごすことに。

そして7月16日、約9カ月ぶりに隠岐の島町に帰ってきた。
山根収アナウンサー:
保護から11カ月。当時の弱々しい姿から一転、元気さに溢れています
保護された時よりもたくましく、一回り大きく成長したようだ。

リブの“メッセージ”から海洋ごみ対策に発展
一方で、リブが保護されている時に残したメッセージ。
ふんから見つかったプラスチックなどのごみだ。

海洋汚染の深刻さを島民に訴えかけた。
リブの帰還を待つように、海洋ごみの問題に関心を高めてもらおうと、町内ではさまざまなイベントが企画された。
ごみ拾いにスポーツ的なルールを盛り込んだ「スポGOMI」。その高校生の大会の開催。

海洋問題にくわしい講師を招いたワークショップも開かれた。

改めて、身近な問題として訴えかける。
町民:
(海岸清掃に)今まで参加してこなかった人たちも、ウミガメをきっかけに参加した人もいるのかと思うと、良いきっかけだったかなと思います
リブの旅立ち…島民たちとの別れの時
この日の夕方、リブにとっての旅立ち。島民にとっては別れの時が近づいてきた。
リブの第一発見者・高梨蒼大さん:
去年リブを見つけてからお世話になったみなさん。きょうまでありがとうございました。きょうでお別れですが、元気に泳いでくれると思います
集まった住民の声援を受けながら、船に乗せて出発。

中でも特別な思いを寄せる人がいる。
隠岐の国ダイビング・安部由起さん(保護当時):
すごく痛々しくて言葉がでなかった。人間を代表して謝りました
保護されたリブを一時的に引き取った、地元ダイビングショップの安部由起さん。

スキューバダイビングのインストラクターで、海の魅力を伝える立場。
海に捨てられた人間のごみによってリブが傷つけられたことを、ずっと後悔していた。

そしてもう1人。神戸市の須磨海浜水族園の飼育員・礒部雄太さん。
須磨海浜水族園 礒部雄太さん:
愛着わきまくりですね…飼育員としてはあまり良くないかもしれないですけど。リブのように諦めなければ、みんな生きてくれると改めて思いますね

約9カ月にわたりリブの世話を続け、回復する姿を間近で見てきた。
海岸から数キロ離れた海域で、ついに放流…


ただでさえ厳しい自然界に、ハンディを背負って戻ることは酷なことかもしれない。
それでも、本来の場所で自由に生きてほしいというのが、関わってきた人たちの願いだ。
幾度も海面から顔を出し、名残を惜しむような姿も。

隠岐の国ダイビング・安部由起さん:
呼吸も落ち着いてましたよね、良かった
放流から約20分、リブは海中へ。
姿が見えなくなった。
隠岐の国ダイビング・安部由起さん:
リブに「ごめんね」という気持ちは消えないんですけれど、同じような動物は出したくないので、少しずつ、ごみ拾いとか、海に良い環境を作っていけたらなと思います

須磨海浜水族園 礒部雄太さん:
生き物一期一会じゃないですけど、違った生き物とも出会いがありますので、今回のリブの経験を生かして、もっともっと多くの命を救ったり、飼育技術を高めていきたいと思います
リブは「故郷」の海に帰ったが、変わらない現実も。
リブの救助を手伝った大津浩三さん:
去年8月からずっとこのままの状態です。たかが網ですけど、動かない
リブが足を失う原因となった網は、今も岩場に挟まっていて撤去できないまま。

リブの救助を手伝った大津浩三さん:
この間、掃除したんだけどな。いくらでもくるんですよ。翌日にはきてますから、波があると
海岸には無数のごみが今も流れ着いている。

大海原に旅立ったリブの訴えが本当に届くには、まだまだ時間がかかりそうだ。
(TSKさんいん中央テレビ)