静岡・西伊豆町では、いま珍しい「ダチョウ」の飼育が行われている。
低脂肪で鉄分が多く、健康に良いとされるダチョウの肉。このダチョウの肉を、西伊豆町の特産品にしようと奮闘する料理人を取材した。

地域おこし協力隊員が豊かな食材にひかれ移住

賀茂郡西伊豆町の西天城高原。自然豊かなこの場所に設けられたのが、ダチョウの牧場だ。

(Q.ここにダチョウがいるのですか)
HOLY・堀浩一代表:
そうですね。いまちょっと数が少ないですけど、25頭位ですね

西天城高原でダチョウ約25頭を飼育
西天城高原でダチョウ約25頭を飼育
この記事の画像(20枚)

静岡市出身の堀浩一さん(41)。5年前に地域おこし協力隊として西伊豆町にやって来た堀さんは、食材の豊富さにひかれ、3年間の任期が終わった後も西伊豆町に住み続けている。
そして、ダチョウの飼育を始めた。

地域おこし協力隊だった堀さんは西伊豆町に移住
地域おこし協力隊だった堀さんは西伊豆町に移住

豚、牛、鶏…次は「ダチョウ」が来る!

(Q.なぜ、ダチョウを選んだのですか)
HOLY・堀浩一代表:
“第4の肉”としてダチョウがすごく注目されていて、料理人としても使いやすい肉だし、一般的にも広まっていって欲しいなと思い、ダチョウ肉をつくることを決めました

料理人の経験から使いやすいダチョウ肉に着目
料理人の経験から使いやすいダチョウ肉に着目

都内やタイで料理人として働いていた堀さん。食材として、あまり流通していないダチョウに着目した。低脂肪の赤身の肉で、食感は牛肉に近いそうだ。

ダチョウ肉は低脂肪の赤身肉 牛肉に近い食感
ダチョウ肉は低脂肪の赤身肉 牛肉に近い食感

主に首都圏に向けて出荷も始まっているが、今も不安はつきないという。

HOLY・堀浩一代表:
やはり多分不安なんですよね。まだ全然経験が浅い中で、やっていることが正しいのかどうかも手探りな状態なので。
こういう生き物と接しながら仕事をすると、自分の何かのトラブルで全部被害を受けるのはこの子たちなので。この子は1年生です。鹿児島から来てくれて、緊張してるのかな。今年で150個位は(卵を)産んでくれましたね

最初は鹿児島からヒナを購入 ふ化に成功
最初は鹿児島からヒナを購入 ふ化に成功

飼育を始めるにあたり、ヒナを買いつけたのは鹿児島だ。すでにヒナのふ化にも成功しているが、目指すのは西伊豆産のダチョウだという。

めざすのは地元・西伊豆産
めざすのは地元・西伊豆産

HOLY・堀浩一代表:
この子たちで(生後)2カ月くらいです。
(Q.ここで生まれたのですか)
そうです。うちの方で卵から生まれた純西伊豆産の“わさびダチョウ”になります

伊豆名産ワサビの葉で食欲増進?

堀さんが刻んでいるのは、実はワサビの葉。ダチョウに西伊豆産の付加価値を付けるため、西伊豆特産のワサビの葉をエサに混ぜて与えている。

ワサビの葉をエサに混ぜ付加価値を
ワサビの葉をエサに混ぜ付加価値を

HOLY・堀浩一代表:
やはり食べも良いし、すごく食欲がわくようなので、(ワサビは)西伊豆の名産でもありますし、ダチョウたちも多分うれしいと思うんですよね。おいしいご飯が来たという感じで、食いつきが良いですね

ワサビの葉をまぜると食いつきがよくなるとのこと
ワサビの葉をまぜると食いつきがよくなるとのこと

ダチョウも気に入っているというワサビの葉。
堀さんは、ワサビを無農薬で育てている農家から捨てていた葉を譲り受けている。

ワサビ生産者:
(ワサビの葉は辛いので)大丈夫かなと思っていたけど、今まで廃棄してた部分がエサとして再利用してもらえるのが、全部捨てないで食べてもらえるというのが一番うれしい

ワサビ生産者「廃棄部分の再利用はうれしい」
ワサビ生産者「廃棄部分の再利用はうれしい」

HOLY・堀浩一代表:
西伊豆の物をという気持ちももちろんあるけど、自分がやっている事が結果として、そこ(地元)につながるという形が一番良いと思うので。
できるだけ“とがっていく”には、こういうちゃんとした物(地元名産品)とつながるのはすごく大事だと思っています

掘浩一さん「“とがっていく”ため地元名産ワサビとつながる」
掘浩一さん「“とがっていく”ため地元名産ワサビとつながる」

ワサビの葉を食べたダチョウは肉質がとてもいいという。

コロナ禍で飲食店に打撃…ダチョウ肉の弁当で活路

堀さんは、飲食店でダチョウ肉の料理を提供している。

堀さん経営の店 コロナで休業中(2021年9月時点)
堀さん経営の店 コロナで休業中(2021年9月時点)

軌道に乗り始めた矢先に、新型コロナウイルスによる外出自粛でお客さんは半数以下に。さらに緊急事態宣言によって、休業を余儀なくされてしまった。

なんとか状況を打開しようと始めたのが、持ち帰り用の弁当の販売だ。

コロナ対策で弁当販売 この日のメニューは「ちらしずし」
コロナ対策で弁当販売 この日のメニューは「ちらしずし」

HOLY・堀浩一代表:
これはダチョウのフィレとドラムというところですね。きょうはダチョウのちらしずしを作って、オードブルと一緒にご用意したいと思います

弁当の注文客「クセがなくておいしい」
弁当の注文客「クセがなくておいしい」

珍しいダチョウの肉、評判も上々だ。

弁当の注文客:
クセがない。いろいろな獣を食べるとクセがあるとか言いますけど、全然ないですね。お店が開くようになれば、皆さんもまたそこへ行ったりするので、ぜひ頑張ってほしいと思っています

地場産品市場やふるさと納税返礼品 地元も応援

やわらかく、臭みのないのが特徴のダチョウの肉。町内の地場産品として、こちらの施設でも販売されるようになった。人気も出てきているという。

地場産品市場でも販売開始
地場産品市場でも販売開始

地場産品市場の従業員:
ダチョウ肉は珍しいのでよく売れてます。西伊豆ならではの商品という事で、メインになってくれたらなと思います

カレーやチリコンカンの加工品も販売
カレーやチリコンカンの加工品も販売

そして、今では西伊豆町のふるさと納税の返礼品にも加えられた。町長もお気に入りだそうだ。

ふるさと納税の返礼品にも加えられた
ふるさと納税の返礼品にも加えられた

西伊豆町・星野浄晋町長:
肉もそうですけど、内臓もおいしいですよ、心臓とか砂肝とか。ふるさと納税でも「ダチョウ肉」というのは大変珍しいと思いますし、アスリートの方には低カロリーと高タンパクでとても人気があるということですから、ぜひ西伊豆町が「ダチョウブランド」として今後注目して頂ければありがたいなと思っています

西伊豆町長も「ダチョウブランドの町」になることを期待
西伊豆町長も「ダチョウブランドの町」になることを期待

料理人が生産者 強み生かし地元特産品に

コロナ禍で翻弄されながら、ダチョウ肉を西伊豆の特産に成長させたいと奮闘する堀さん。飼育を通して、改めて食材や料理へのこだわりが強くなったという。

堀浩一さん「飼育して、前よりも良い料理人になれた」
堀浩一さん「飼育して、前よりも良い料理人になれた」

HOLY・堀浩一代表:
スーパーに並んでいるお肉一つ一つも、誰かが育てて、食肉処理して加工して(店頭に)並んでいて使う事ができるのですけど、それを当たり前に思うには、ちゃんとそっちの世界(生産者)に入って知る必要があるなと。今はちょっとでも前よりいい料理人になれてるかなと思っています

「わさびダチョウ」は西伊豆町の特産品に育つか
「わさびダチョウ」は西伊豆町の特産品に育つか

ダチョウを飼育する畜産農家として、そして料理人として。
西伊豆産の「わさびダチョウ」を多くの人に知ってもらうために、挑戦はまだ始まったばかりだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。