全身の筋肉が衰える原因不明の難病…有効な治療法なく

全身の筋肉が衰えていく難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘う男性が、岡山・倉敷市にいる。
周りの人を笑顔にしたいと前向きに振る舞う彼を支えているのもまた、家族や周囲の人たちだった。

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妻・弥佳さん:
トマト食べる?

右手は、1年ほど前から動かない。

直樹さん、42歳。
何とか動く左手を使って、ゆっくりと食事をする。

直樹さん:
周りの目が気になりだして。口に運んでもらうのはまだ抵抗がある感じ

妻・弥佳さん:
結構詰まったりもするので、詰まりにくいものを色んな人に聞いて。離乳食の後期みたいな、ドロドロではないが、細かくきざんだりとか

直樹さんは今から3年前、39歳の時に指定難病・ALSと診断された。

直樹さん:
もう曲がらない。無理に動かそうとしたら、けいれんして力がうまく入らない

ALS、筋萎縮性側索硬化症。

脳の命令がうまく伝わらなくなり、運動神経が障害され、全身の筋肉が次第に動かなくなる原因不明の病気。

発症後、3年から5年で自発呼吸ができなくなり、人工呼吸器を着けなければ、やがて死に至る。

有効な治療法はない。

夫婦で立ち上げた店…「理容師の命」副店長にハサミ託す

直樹さんが最初に感じたのは、右手の違和感だった。

直樹さん:
(右手が)握手する時とか痛くて。あるとき握手の相手の人に、力が入っていないと言われたのが1番最初。腱鞘炎かなと思った

ALSは60歳以降に発症することが多く、国内の患者数は約1万人。岡山県内では約160人がこの難病と闘っている。

診断を受けた時、直樹さんによぎったのは周りの人の顔だった。

直樹さん:
だいぶ恐ろしい病気で、その日 1日へこんだ。自分のことより、この先の家族だったり、自営でやっている店とか、自分が抜けたらどうなるか

倉敷市にある理容室。5年前、直樹さんが夫婦で立ち上げた店。

理容師として10年以上歩んできた直樹さんだが、その命とも言えるハサミはもう握れない。

直樹さん:
100%悔しい。いまだにできることを想像して、たまに動かないことを忘れて、ちょっと貸してとやるが、結局無理

2020年までオーナー兼店長だった直樹さん。
病気が進行し、副店長に店長を引き継ぐと共に、大切なハサミを託した。

副店長に引き継いだハサミには「NAOKI(ナオキ)」の文字

Healing 岡田健志店長:
(引き継いだハサミを)ずっと使っていこうと思います。オーナーの分まで頑張ろうと思って

現在も店には顔を出しているが、最近は店に立つ時間に比べ、車で休憩する時間が増えてきた。

直樹さん:
お店で立っているとだんだん疲れてくるので、口数が少なくなって、お客さんが心配する。お客さんとしゃべるというのが、1番の自分の役割。声を1人ずつかけて、また笑顔で来てもらえるように常に心掛けている。自分の仕事だなと思っている

「諦めない自分見せる」我が子が心の支えに

直樹さんの息子、樹くんと、颯くん。

直樹さんと妻・弥佳さんの長男・樹くんと、次男・颯くん

長男の樹くんが生まれたのは、直樹さんがALSと診断されたころだった。
病気が進行し、できないことが増える父親とは対照的に、樹くんはできることが増えてきた。

長男・樹くん:
パパ好き。
(Q.パパのどこが好き?)
ここ

直樹さん:
元気もらえますね

日々成長する我が子の姿が、時に折れそうになる直樹さんの心を支えている。

直樹さん:
なるべく諦めない自分を見せて、やりかた次第でこういうこともできると伝えたい

妻・弥佳さん:
私がずっと支えているから、いくらでも長生きしてほしいなと思っている

支えてくれる家族の存在。
難病と向き合う中で、その大切さに改めて気づかされた。

直樹さん:
(家族との時間は)病気になる前より、だいぶ貴重な時間。まわりのみんなが笑っていられる環境を続けることで、自分の体もひょっとしたらよくなるかも

長男・樹くん:
パパ、大丈夫?

周りのみんなが笑っていられる環境を。
直樹さんは、きょうも前を向いてALSと闘う。

自分も周りに支えられながら。

(岡山放送)