「一番お手本にできる先生」高校のボクシング部顧問をしながら五輪へ

東京オリンピック、ボクシング男子フライ級。8月5日の準決勝には岐阜県多治見市出身の田中亮明選手が登場。フィリピンのカルロ・パーラム選手と対戦する。

田中選手の弟は、WBOフライ級など3階級を制覇した元世界チャンピオンの田中恒成選手だ。

華々しく世界で活躍する弟に対し、リオオリンピックの最終予選で敗れた亮明選手は、競技人生をあきらめかけていたが、現役の高校教師を続けながら念願の東京五輪への切符を掴んだ。支えてくれた妻とおばあちゃんのために…。亮明選手は今、初めての夢の舞台に挑んでいる。

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東京オリンピック、ボクシング男子フライ級日本代表の田中亮明選手は、岐阜県瑞浪市にある中京高校でボクシング部の顧問をしている。その素顔は…。

教え子A:
優しいときは優しいんですけど、怒るときはピシッと怒るので…。一番お手本にできる先生だと思っています

教え子B:
(田中選手に)憧れて入ったのと同じなので、かっこいいです

田中亮明選手(会見):
僕に教えてもらってるんだよって自慢してもらえるように、(五輪では)かっこいい姿を見せたいと思っている

自分はオリンピックに…世界チャンピオンになった弟に負けない

亮明選手は幼い頃は空手を習い、中学1年でボクシングを始めた。弟はWBOフライ級など3階級を制覇した元世界チャンピオンの田中恒成選手だ。

早くからスポットライトを浴びる弟に対する思いは…。

田中亮明選手:
将来の目標はって聞かれたときに、僕は「インターハイチャンピオン」を口にしていたんですね。弟は、「世界チャンピオンになる」ってその時から言っていて…

世界チャンピオンを目標に掲げる弟に対して、自分は高校チャンピオン。そのスケールの違いに恥ずかしさを感じていた亮明選手は、次第に「オリンピック」を意識するようになった。

弟がプロの世界チャンピオンなら、自分はオリンピックに。そんな思いを胸に、大学4年で全日本選手権優勝(2016年)に挑んだが、最終予選で敗退した。

田中亮明選手:
めちゃ悔しかった…。リオの予選に負けて、もうボクシング辞めるって言っていたんですよ

夢の舞台まであと一歩、届かなかった。

小さな記事でも見つけてくれた祖母に オリンピックでの勇姿を見せたい

岐阜県土岐市に住む亮明選手の祖母・和枝さん(79)の家には、孫たちの写真やポスター、ボクシング雑誌が並んでいる。

田中亮明選手:
名前だけが(雑誌に)載っていても、赤ペンとか引いてくれて。どこに自分がいるかわかるんですよ

付箋がしてある雑誌の束。和枝さんは、写真付きで大きく取り上げられる弟の恒成選手に対し、どんなに小さくても亮明選手の名前を見つけてはペンを引いていた。掲載されること自体少なかった亮明選手だが、おばあちゃんはどんなに小さな記事でも見つけてくれた。

祖母・和枝さん:
亮明の試合ってあんまり見る機会がないもんね、結局は。アマチュアの方はね

田中亮明選手:
オリンピックに出れば、すごく久しぶりに僕の試合をテレビで見ることになると思うので。これがおばあちゃんが喜ぶことにつながる…

おばあちゃんに勇姿を見せたい。亮明選手の原動力の一つだった。

妻のおかげで強くなれた…地元スポンサーを集めてくれた家族のためにも

亮明選手は、いつも奥さんの愛妻弁当を持ってくる。

大学時代からの付き合いだった妻の百美さんは、遠征費など教師としての稼ぎだけでは賄いきれない亮明選手のために、自分の父と一緒に地元企業などに呼びかけてスポンサーを集め、オリジナルTシャツまで作ってくれた。

田中亮明選手:
リオの予選に負けてオリンピックに出られなくなって、その時は(妻が)「辞めたらいいよ、頑張ったんだから」みたいな。でもそうやって言われたら、なんか違うなって思っちゃって。奥さんのおかげで強くなれたところはありますね

家族に支えられてのオリンピックへの再挑戦だった。

「かっこいい姿を見せたい」4年越しでつかんだ夢の舞台に挑む

2019年11月。迎えた、東京オリンピック出場がかかった全日本選手権。

勝利が決まり、喜びで崩れ落ちる亮明選手。ついに、オリンピックの切符をつかみ取った。

田中亮明選手:
ほっとした気持ちの方が強かったですね。この4年間はその悔しさだけでやってきましたので。死んでもいいから(五輪へ)行きたいですもん

延期となったこの1年、今まで以上にボクシングと向き合った亮明選手。これまで弟を指導してきた父と、約10年ぶりに練習もした。

父・斉さん:
(亮明選手の強さは)努力を積み重ねて、あきらめない心というかな

地元の多治見ではラッピングトラックをつくって応援。そして、中京高校の全校生徒からの激励会など、皆が亮明選手を応援している。

田中亮明選手:
目標は金メダルです。地元、高校、田中家代表としても集大成になると思うので、かっこいい姿を見せたいです

亮明選手は、人生をかけて夢の舞台へ挑んでいる。

(東海テレビ)