「全国の自治体には先月までに9000万回のファイザー社のワクチンが人口に応じて配分されています。そのうち4000万回分が使用されず在庫になっていると見込まれます」

菅総理大臣は8日の会見でこのように述べ、ワクチンが市中に「在庫」として余っている可能性を指摘した。

菅首相会見・8日夜
この記事の画像(7枚)

記者が「ワクチンの供給の見通しが立たないことから、ワクチン接種の予約を一時停止したり延期する市町村が出ている」と質問したことに対し、菅総理は「予想は上回るペースで接種が進む中、一部の自治体からワクチンが足りないとの不安の声が聞かれている。6月に接種が5000万回を超えているが、それ以外の4000万回は自治体にあると思っている」と説明した。

新型コロナ対策の最大の武器であるワクチンだが、今、様々な自治体が接種予約の一時停止を行うなど「ワクチン不足」が起きている。ところが、その一方で、供給されたはずの4000万回分のワクチンが「在庫」として使われていない可能性がある。

「ワニの口が広がっていくとかなり厳しい」 供給と接種が7月に逆転

閣議前・9日

会見翌日の9日の閣議前、河野規制改革大臣は、菅首相に1枚の紙を渡した。ファイザー製ワクチンの接種回数と供給数を示したグラフだ。

オレンジの線は総供給数を、青の線は接種回数を示している。オレンジの線をみると、5月のゴールデンウィーク明けから供給数が大幅に増え、同時に青の線の接種回数が急増していることが分かる。7月に入るとオレンジの線が急速に下がるが、これは4~6月の間に1億回分あったファイザー製ワクチンの供給が、7~9月は3割減の7000万回となるためだ。一方で、接種回数は、1日120万回超まで増加している。こうしたことを受け河野大臣は「今のペースでいくと、ワニの口みたいになっちゃうと。さすがにまだ配布したけど打ってないよというワクチンがここにありますと言っても、ワニの口が広がっていくと、かなり厳しい」と述べ、「逆転」した供給数と接種回数の開きを「ワニの口」に例えて危機感を示した。

さらに「いまのペースでいくと未接種ワクチンを使い切る。全国換算で1日あたり120万回以上接種している自治体はペースを緩め、1日数十万回のペースで接種している自治体は、1日120万回を目安として接種スピードを最適化してほしい」と自治体に呼びかけた。

記者から、これまでワクチンの接種体制を強化してきた自治体の理解が得られるか問われたことに対し、河野大臣は「非常時の接種なので微調整が入るのはやむを得ない。しっかり自治体と連携しながらやっていきたい」と理解を求めた。

ワクチンはどこに? 河野大臣が「在庫」から「未接種」に言い換えた狙いは?

河野大臣・9日

ワクチン接種の速度はあがるが、ワクチンの供給数が足りない。

この状況を打破するために関心が高まるのが、菅総理が会見で指摘した「4000万回分」の在庫ワクチンだ。

これを巡り、河野大臣は9日の記者会見で「在庫」ではなく「未接種」ワクチンという独自の呼称を使い、状況を次のように説明した。

「日本語の問題だと思いますけれども、例えば、かかりつけのお医者さんで今日打つ分は打つ人の名前が入っているワクチンです。人によっては『在庫』と言うと、倉庫に積み上がっているのが『在庫』だというと言う意識の方もいらっしゃる。言葉の使い方について気をつけたほうがいいかなということで、まだ打っていないワクチン、配布済みだけれどもまだ打っていないワクチンを『未接種のワクチン』と言っている

河野大臣は4000万回分のワクチンについて、「余分の在庫」ではなく、例えばかかりつけ医などが、「これから使う予定があるが、現状では未接種のものである」という認識を示した形だ。

4000万回も残っていない? 原因は“記録遅れ”との指摘も

一方で、日本医師会の関係者は「ワクチンは4000万回も残っていないのではないか」との考えを示す。ワクチン接種は、国が全体像を把握するために、接種を行った際に自治体や医療機関が専用のシステムに記録することとしているが、現場に余裕がないため「記録する作業が遅れている」(医師会関係者)と指摘、実際には国が把握しているより接種が進んでいて、4000万回分も残っていない可能性がある。

4000万回分のファイザー製ワクチンは、「使用されず在庫となっている」のか「これから使用されるが未接種の状態」なのか「記録遅れで実際はある程度使われているのか」、実態は不透明だ。

そして、国内にすでに供給済みのワクチンを再配分することは可能なのか。ある政府関係者は次のように明かす。「ワクチンはそれぞれの医療機関や接種会場で管理するよりも、全国のいつくかの場所で集中して管理して、必要な場合にそれぞれの会場に素早く届けられるようにする方が効率的。ただ、現実として、国として一度配ってしまったワクチンをコントロールすることは難しい」

新型コロナの収束が見込めない中、自治体はワクチン接種を早く進めたい考えに変わりは無く、政府にさらなるワクチンの供給を求めているのが実情だ。さらに言えば、自治体側からすれば、7月末までの高齢者への接種完了を国から求められたにも関わらず、供給量に合わせた接種を求められ、現場は困惑しているのが実情だ。こうした状況に、政府はどのように対応していくのか、より一層丁寧な説明が求められている。

(フジテレビ政治部 阿部桃子)