耳の上の部分がVの字のようになっていて、サクラの花弁のように見える「さくらネコ」。
福岡県の“ネコの楽園”で進む、「さくらネコプロジェクト」を追いかけた。
「ネコの楽園」の現実…痩せ細り病気になる猫
福岡・新宮町の港から船で20分の相島。
周囲は約6km、島民240人が暮らす小さな島だ。
船を降りるとすぐに出迎えてくれるのが、たくさんの猫。
野良猫がのんびりと暮らすこの島には、休日にもなると大勢の人が猫を目当てに訪れる。
訪れた人:
きょうは猫に会いに来ました。かわいい!かわいいです。めっちゃ人懐っこいですね。心が癒やされますね
相島が有名になったのは8年前、アメリカのテレビ局・CNNで「世界6大ネコスポット」として紹介されたことがきっかけ。
以来、世界中から猫好きが集まり「ネコの楽園」とも呼ばれているが、2年ほど前までは餌が十分に行き届かず、痩せ細った猫や病気になる猫も多かったという。
町役場には、島を訪れた人から助けを求める声が多く寄せられていた。
立ち上がった「さくらネコプロジェクト」
猫の世話をしていた島民からの依頼で立ち上がったのは、野良猫の無料不妊手術を行うボランティア団体。
命を守りながら数を管理しようと、野良猫を捕獲して不妊手術を行い、元の場所に戻すプロジェクトが進められている。
どうぶつ基金・佐上邦久理事長:
2年前くらいからせっせと餌やりをして、健康状態がかなりよくなってきたというのが現状ですね。手術をしても大丈夫だろうということで、わたしたちは手術をさせていただいたいたということです
餌やりなどをして猫を手術ができる体にまで回復させ、2021年3月 島の家屋を借りて臨時病院を特設し、150頭の猫を一斉に手術した。
1匹の母猫が一度の出産で産む子猫の数は、3匹から6匹。
さらに1年で3回発情期があり、猫は小さい島で繁殖を繰り返し、増え続けていた。
現在250匹以上。
島の人口よりも多く、高齢の島民だけでは飼育しきれなくなっていた。
これまでに約98%、240匹以上の猫が不妊手術やワクチンの投与、けがの治療を終えている。
手術を受けた猫の耳にはV字の切り込みが施され、サクラの花弁のように見えることから「さくらネコ」と呼ばれている。
手術を受けていないのは、この日まで確認できる限り、残り4匹。
多くの猫が集まる餌場を中心に探すが、なかなか見つからない。
殆どが人慣れしているとはいえ、猫は警戒心の強い動物。
諦めかけたその時...
ボランティア団体:
いたいた!
「さくらネコ」になっていない未手術の猫を見つけた。
早速、猫の前に餌を入れた捕獲器を設置。
ボランティア団体:
よし、入った!
猫は捕獲されたことに驚き、一時的にパニックになった様子。
落ち着かせるために捕獲器に布をかぶせた。
この日捕獲したのは、この1匹のみ。
体への負担を考え、その日のうちに手術をして、次の日には相島へ戻す予定となっている。
捕獲された“サクラ耳ではないネコ” その後は...
そして海を渡り、やってきたのは、野良猫の不妊手術のために整備された福岡・筑後市の病院。
ここでは月に2回、県内各地から集まる野良猫の手術を行っていて、費用はすべて企業や個人からの募金で賄われている。
相島の猫も無事手術を終え、次の日 術後の健康状態を確認したうえで猫は元いた場所に戻された。
どうぶつ基金・佐上邦久理事長:
1頭の母猫から生まれる子猫、孫猫っていうのは、1年で50頭くらいになります。90%ぐらいの不妊手術が終わった島でも、5年すると元の木阿弥(もくあみ)になって世代交代が起こっているということがありますので、継続してウォッチすることが大切だと思います
相島では、今後もボランティアが餌やりなどを行いながら、事後調査を行っていくことにしている。
ただ、島民の中には、これまで猫と人間がうまく共存してきたのだから、自然のままにしておいてほしいという人も多く、すべての人が取り組みに賛成というわけではない。
(テレビ西日本)