5月、石川・七尾市にフレンチレストランがオープンした。オーナーシェフは、東京都出身。
なぜ能登でお店を開いたのか、その思いを語った。
「ここにいたいと思う場所にめぐり会った」
食材にこだわり、1皿1皿、真心を込めた料理の品々。
だが、「おいしい」だけを提供するお店ではない。

ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
最終的に僕らが届けるものは、「料理」っていうより、お客さんに喜んでもらう気持ち。それは、どれだけ年を重ねても、逆に若くても、気持ちがあれば全然良いかなって、常々感じていたので。人も温かいし、アットホームで。ずっとここにいたいと思える場所にめぐり会えた

5月、フランス料理店をオープンさせた日野貴明さんは、東京都出身の23歳。
東京の1つ星レストランで修行を積み始めたのが、19歳のころだった。

ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
修行してきたのがフランス料理。2年半ぐらい働きまして、職場を退職して珠洲市のゲストハウスに
日野さんは2018年、地方の暮らしを体験できる「ふるさとワーキングホリデー」に応募。
通常、数週間程度の制度だが、日野さんは珠洲市の古民家レストランで1年半もの間、働いた。

ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
フランス料理店を1年限定でオープンしまして、半オーナーみたいな感じでやらせてもらって
ーーお店をいつか出したいっていう思いがあった?
ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
ありました、それは結構前から。中学校ぐらいから

その時の縁から、七尾市の空き店舗でお店を構えることになった日野さん。
店の名前は「ひのともり」。自身の名前「ひの」、そして地域である「のと」、ぼんやりと和らぎを与える「ともり」から来た造語だ。

2人のスタッフにも出会えた。

スタッフ・岩島加奈さん(七尾市出身):
お母さんの知り合いが、日野さんと知り合いで
スタッフ・寺田陽生さん(志賀町出身):
思い立ったらすぐ動ける所は、自分にない所で、(その行動力が)日野さんにはある所が、すごく好き
ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
そこまで地元の方ともつながりがないので、人がいるとドンドン可能性が広がるなと

お世話になった方からのお墨付き
そして4月末、ある方々が来店した。
日野さんが珠洲でお世話になったお店のオーナー・坂本信子さんだ。

味やサービスを見定めてもらおうと、この機会を設けた。
ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
お皿が、一郎さんの珠洲焼を使わせていただいて、僕の能登生活の一番最初の場所を、コースの一番最初のアミューズに使いました

提供するランチは、コース料理のみで3,300円。どの料理も、能登の食材をふんだんに使っている。

古民家レストラン典座・坂本信子オーナー:
全然臭みもなくて、おいしい
ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
1番は魚介類ですね。魚介を生かしたフレンチ料理を作り上げていけたら。コースで、絶対にリゾットを出そうかなって思っているんですが、(米は)珠洲でお世話になったお米農家さんのお米
古民家レストラン典座・坂本信子オーナー:
人ともつながれて、食材ともちゃんとつながれて、こういうものを出せるのは、この土地の力だよね。能登の力だと思う
古民家レストラン典座・坂本信子オーナー:
感動して涙出た。本当に始まったね、泣きそう、うれしい

3人はお墨付きをもらった。
オープン直後に緊急事態宣言も…お客さんは高評価
ゴールデンウィークが終わり、いよいよオープンを迎えた。
しかし、その矢先…県独自の緊急事態宣言が発令。お店も1日1組限定で始めることになった。

ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
本当に、やっぱり予約がちょっとなくなってきちゃって…、さい先不安ですが
それでも食べに来たお客さんは…
お客さん:
意外と地元にいても、そんな組み合わせじゃない、斬新な感じで食べられておいしかった
お客さん:
ゆっくりできる感じで、癒やされる空間かなと。食べていて、もう1回食べたいなって気持ちになる
ひのともりオーナーシェフ・日野貴明さん:
若くて、端から見たら「ちょっと大丈夫なのこのお店?」って思われると思うんですけれど、お客さんに愛・笑顔を届けたいって気持ちは僕ら強いので、おいしい料理を作るのは僕なんですが、それ以上に僕らが笑顔を届けられるような、そういう空間を作っていきたい

縁のなかった土地で、新たな明かりをともしたフレンチレストラン。
能登の人の温かさと新鮮な食材が、1人の青年を根付かせた。
(石川テレビ)