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犯罪組織が、犯行の実行役を、SNSを介して募集する「闇バイト」。
取材班は実際に闇バイトをして、逮捕された20代前半の若者に話を聞くことができた。

2020年、借金を返済するため、SNS上で高額な報酬が提示されていた求人に応募した。 

闇バイトに応募した20代:
持病があってその合併症で発症した病気の治療費が保険が効かなくて、それで高額になってしまって。1日5万円からっていう投稿をみて、やりとりし始めたのがきっかけ。

相手から紹介されたのは特殊詐欺の「受け子」という役割。

特殊詐欺の多くはリーダーを頂点に、実行役を集めるリクルーター、犯行を統括する指示役、実際に高齢者の自宅に行き、現金やキャッシュカードなどを受け取る受け子などに役割が分かれている。 

リクルーターや指示役とのやりとりはすべてSNSで行われた。

闇バイトに応募した20代:
指示された駅に着いたら待機と言われるんで、待機するのは1、2時間。
板っていうのがキャッシュカードのこと、キャッシュカードが3枚ある。メモっていうのが暗証番号を書いた紙、紙1枚キャッシュカード3枚受け取ってくださいということですね。

闇バイトに応募した20代:
被害者の口座が不正に利用されてるから、止めないといけないという設定で伺ってる。これを被害者さんに『こういうものです、と見せてください』と言われました。スマホの画面で見せるんだと思った。

キャッシュカードをだまし取るために使ったのは偽の警察手帳だった。

その後、ATMで金を引き出し、カードはバラバラにしてトイレに流したという。 
報酬はだましとった金額の5%。
残りの金は菓子の箱に入れ、指定された駅のロッカーに入れた。

犯行後は罪の意識にさいなまれた。
しかし、新たな仕事の誘いを受けたとき、断ることができない理由があった。

一度入ると逃げられない闇バイトの世界

実は闇バイトを始めるにあたり、あらゆる個人情報の提出を求められたというのだ。

闇バイトに応募した20代:
親身内、同居している人の個人情報、家の外観、マイナンバーカード。私自身だけならわかる、親とか同居人まで必要あるんですか、教えるのは気が引けますと言ったら『こちらは大金を扱う仕事だから教えてもらわないと絶対に困ります、(働くことが)できません』と言われて、仕方ないんかなと思って送った。

送った情報が命取りになるとは、このときは気づかなかったという。 

闇バイトに応募した20代:
もう怖いし、被害者にあうたびに後ろめたさと罪を犯すのが怖いのというので、つらくなってきて、辞めたいですって言ってみたんです。詐欺グループは『もし裏切ったりしたら家族とかに危害を加えたりとか。私の情報を公表する、(犯行を)通報する』と言ってきて、もう、どうしたらいいのかもわからなくなって…。

辞めることができず、その後も犯行を重ねた。
だまし取った金は5件で約1000万円まで膨れ上がった。

そして、6件目の犯行に向かうとき、駅で警察官に職務質問をされたのだった。

闇バイトに応募した20代:
『なんで話しかけられたかわかるな』という感じになって。そのときの気持ちは『やっと終わる、指示役との関係も断ち切れる』…これ以上自分の手で被害者出さなくて済む、ほっとした気持ち。

去年1年間、特殊詐欺で検挙された被疑者の約7割が10代、20代の若者たちだ。
そしてその大半が闇バイトに応募したとみられている。

※令和2年 特殊詐欺の検挙人員10代・20代1362人(1936人中)
<キャッシュカード詐欺盗を除く暫定値 警察庁より>

警察は闇バイトを利用した犯罪を防ごうと、インターネット上のパトロールをおこなっている。 

大阪府警 府民安全対策課 保田茂光課長補佐:
これなんかそうですね、受け取り・キャッシュカード・現金とかの回収役と思いますね。

闇バイトの募集と思われる投稿を見つけると、辞めるよう促す警告を発信。
こうすることで、9割近くが投稿を消すという。
(※警告により87.9%の投稿が削除【今年1月~2月に投稿された募集の統計 警察庁より】)

捜査の目をかいくぐろうと、犯罪組織の多くが悪用しているのが「テレグラム」という通信アプリ。「テレグラム」は設定をすればメッセージが自動で消える機能があり、やり取りの記録や送信元が残らないようにしているのだ。

大阪府警 保田茂光課長補佐:
身近な人物を使うとやがて自分に捜査の手が及ぶ危険性が高くなる、SNS上だと誰かが捕まっても、トカゲのしっぽ切りができるというメリットを犯罪組織は考えているのではないかと。犯罪組織に使い捨てにされるだけなので絶対に応募しないようにしていただきたいです。

逮捕され、ようやく抜け出すことができた闇バイト。
しかし、半年以上たったいまも詐欺グループは募集を続けているというのだ。

取材班は接触を試みた。

取材に答えた詐欺グループ、その言い分は…

記者:
犯人グループから早速メッセージが帰ってきました。客宅にいってキャッシュカードをもらう、ATMで…完全に特殊詐欺です。

同じように「特殊詐欺の受け子」の勧誘をしてきた詐欺グループ。
関西テレビの取材ということを明かし、募集を辞めるよう伝えると…。

(詐欺グループからの返信)
「国は罪のない人間からお金を吸い上げてますよね。その国からお金を返してもらっているという認識です」
「悪いことしてる国からお金を取り返して何が悪いんですか?」

(詐欺グループからの返信)
「政治家の前であなたのやっていることは犯罪ですよと言ってから私に行ってください」

記者:
(詐欺グループは)非常に自分勝手なことを言っています。

詐欺グループは悪いという認識はあるとしつつも、犯罪を正当化するような書き込みを続けていた。
再度、辞めるように促した直後…

記者:
いまメッセージが消えました。

その後、連絡がくることはなく、関西テレビはSNSのアカウントや一連のやりとりを大阪府警に通報した。

若者の闇バイトなぜ増える?背景には安易な考え

奈良女子大 岡本英生教授:
(闇バイトは)犯罪の難易度比較的緩いほうだと思う。被害者の命まではとらないとか、怪我をさせるわけではない、ちょっとお金ををとるだけなんだと。SNSでこういう闇バイトがあって上手くいったという情報が入ったら自分も捕まらないだろうと安易に考える。

150万円を弁済も…懲役2年8カ月の実刑判決を受ける

彼女はいま両親のサポートを受けながら、被害者への弁済を行っている。
闇バイトで稼いだのは約50万円だが、その3倍の150万円をこれまでに支払っている。

闇バイトに応募した20代:
(闇バイトを)探してる子はお金が欲しくてやる子がほとんだだと思う。ただお金が必要でしたことなのに、必要だった以上にお金が絶対に出ていく。前科もつく。マイナスしかないし、いいこと絶対にないから、犯罪するぐらいならなんでもできる。信じる人を絶対に間違わないで欲しい。

取材の後、懲役2年8カ月の実刑判決が言い渡された。
安易に聞こえる「バイト」という響き、実態は一度入ると抜けられない“犯罪”なのだ。