東京の上場企業が本社機能の一部を移すなど、今 注目を集めている石川・珠洲市。その魅力は、珠洲の人々が守ってきた変わらない姿だった。
海と山に囲まれた町で…「現代集落プロジェクト」
海と山に囲まれた珠洲市真浦町。約30世帯が暮らすこの集落の空き家を購入したのは、金沢市でゲストハウスを営む林俊伍さん。
この記事の画像(12枚)林俊伍さん:
2月2日付で珠洲市民になりました
金沢で仕事をしつつ、生活を珠洲に移したのは、あるプロジェクトを立ち上げたからだ。
「現代集落プロジェクト」は、水や電気、食料を自給自足し、100年後も持続できる豊かな暮らしを提案するもの。
林俊伍さん:
東京とか都会に住んでいると、生産と消費がすごく分離されている
林さんが買い取った空き家には、手つかずの畑があった。
取り組みに賛同した地元の農家と、自分たちが食べる作物を育てることにした。
地元の農家:
人口も少なくなってきて、どうしようかなと悩んでいた時に現れた。(林さんは)救世主みたいなもの
地域を置き去りにせず、地元の営みを続ける
3月14日、県の内外から「現代集落」に関心があるメンバーが集まった。珠洲の集落を探検する。
林俊伍さん:
冬はこっちに夕日が落ちる
参加メンバー:
めちゃくちゃいいじゃん
高齢化率が50%近い珠洲。しかし、メンバーの見方は違う。
参加メンバー:
人がいないというのが、都会の人に味わえない醍醐味(だいごみ)
参加メンバー:
発展 = 人がたくさん来てお金を使ってというような意味合いの発展ではないが、発展をどうとらえるかで、ものすごく最先端になり得る町
この日のお昼は、珠洲の塩で握ったおにぎり。現代集落が目指す地産地消のもの。
林俊伍さん:
うまっ
地元の若者は、この取り組みに期待を寄せている。
地元の若者:
僕らからしたらチャンス
地元の若者:
地域の人が中心になって、来てくれた人と一緒に、次の世代につながるような動きをしていけたらいい
林俊伍さん:
地域を置き去りにして、「自分たちで楽しく新しく村をつくります」は良くない。観光用につくり始めたら全然違う。それはフェイクだし面白くない。(地元の)営みを続けられるようにしないと
首都圏の企業も本社機能を一部移転
そんな珠洲に注目する人が、もう1人。
イワキ・岩城慶太郎社長:
新鮮な朝どれの脂の乗ったイワシが、6匹120円で手に入る。これは東京じゃ絶対手に入らない
東京・日本橋に本社を構える総合商社イワキは、年間の売上高600億円以上の一部上場企業だ。
その社長・岩城慶太郎さんは、5年前からプライベートで珠洲を訪れ、その魅力のとりこになった。
コロナ禍でテレワークが中心となった今、本社機能の一部を珠洲に移すことを決め、2021年6月からは社長と幹部5人が早速、珠洲に移住する。
イワキ・岩城慶太郎社長:
珠洲市は、30年後の日本の姿を映している場所。その社会課題の多さは、ビジネスチャンスの多さでもある
突然の発表に大喜びなのが…
珠洲市・泉谷満寿裕市長:
正直、驚きました。奇跡だと思いました
珠洲市は、所有していたかやぶきの古民家「文藝館」をサテライトオフィスとしてイワキに貸し出すことを決めた。
3月に開かれた議会で、蔵をビデオ会議などに利用できる環境に変えるよう、約1,000万円の整備費を予算計上した。
イワキ・岩城慶太郎社長:
放っておくと本当にどんどん人が減っていって、なくなる場所です。それを今と変わらない人口規模、今と変わらない産業規模で維持することがよっぽど難しい。変わらないために変わっていく町に、珠洲はなっていく
首都圏の企業や若い世代から注目される珠洲市、その魅力は「昔ながらの暮らし」。
珠洲の人々が守ってきた変わらない姿だ。
(石川テレビ)