「ため池」とは降水量が少なく、大きな河川に恵まれない地域などが、農業に使う水を確保するために整備した人工的な池のこと。

福島県内では、東日本大震災のとき約4,000カ所のあるうちの320カ所が被災した。
このうち、須賀川市の「藤沼湖」では、決壊により8人が犠牲になるなど、甚大な被害を生んだ。

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ーー地震によりため池が決壊するケースは珍しいのか?

東京大学客員教授・防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さん:
決して珍しくはない。阪神淡路大震災、新潟中越地震などのような大きな揺れでは、ため池は被災しているし決壊しているんですよ。ため池のほとんどが、江戸時代以前からのもの。地域の水がめとして、先人が使い続けたんです。多くは土を固めただけの堤防がが多く、大きな揺れが起こると亀裂が入って決壊するという事が起こります

東日本大震災による地震で決壊した、福島県須賀川市長沼地区の農業用ダム「藤沼湖」。
春から始まる稲作に備え、満水近くまで蓄えられていた約150万トンの水が下流の集落を襲い、8人が犠牲になった。

1949年に完成した藤沼湖。震災前は周辺の水田、約830ヘクタールに水を供給してきた。
しかし、その「恵みの水」が、地区に深く大きな爪痕を残した。

教訓は「震災を忘れない」こと

藤沼湖の近くに住む、内山えみさん。
当時、避難中に濁流に流されたが、夫の賢二さんに助けられ九死に一生を得た。
その辛い経験を、これまで周囲に話すことは避けてきたが、心境に変化が起きていた。

内山えみさん:
水が来たというイメージじゃなくて、真っ黒い木の塊の流れが来た感じなんです。それでドーン、ドーンと護岸にぶつかって

きっかけを作ったのは、長沼地区の行政区長・柏村国博さん。2022年の完成を目指し、仲間と一緒に当時の証言をまとめた記録誌を作っている。

柏村国博さん:
やはり防災意識を常日頃から持っていないといけないよ、という目的もあっての取り組み

さらに、ダムの復旧や住宅の建て替えが進むなか、震災の風化を防ぐために慰霊碑を建てた。
記録誌にとどまらず慰霊碑も建てた背景には、忘れてほしくない教訓があった。

柏村国博さん:
(地震後)部屋の中を見てみようと入ったら、どこからか水が、家の中に、どどーっと入ってきたという。「これは一体なんなのだろう」と、みんなそういう話でした。いま自分が住んでいる家は、どういう地形のどういう場所に建っているのかをもう一回、それぞれが調べておいた方が良いのかなという気はしています

観測施設や警報装置など安全対策を強化

地区の生活に欠かせない身近なインフラによる悲劇を繰り返さないために。
震災から約6年後、強化されたダムが完成し、「藤沼湖」で再び貯水が始まった。

県中農林事務所農村整備課・会田初男主査:
ダムの本体の土に水が含まれてしまうと、ダムの提体の安全性が問われてしまうため、その確認のためのチェックをしています

安全性を高めるために、ダムの地下には、ダムの安全性を確認する、観測施設を新たに設置した。
また、住民に避難を呼びかける警報装置や防災無線も新たに整備した。

県中農林事務所農村整備部・鈴木浩治主幹兼副部長:
二度とこのような被害、悲劇を繰り替えさないような強い決意のもと、ダムを復旧してまいりました

8人が犠牲になった災害からまもなく10年。
経験を教訓にするために、ハードとソフトの両面から取り組みが進んでいる。

東京大学客員教授・防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さん:
ため池があるとしたら、決壊する前に逃げるしかないんですよ。地域で危険性を知って、共有することが重要。2017年の九州北部豪雨のときは48カ所のため池が被災した。私はため池が決壊し、3人が亡くなった福岡県朝倉市に行きました。ため池には水が7万トンたまっていた。山からの土砂で堤防が崩れて、わずか数分で一挙に下流に水が流れ下った。津波のような勢いだったと思うんです。ため池が決壊する前に避難することが重要です

ハード面の対策は当然。地域の防災力を高めるソフト面の取り組みも重要となっている。
一方で、ため池は台風などの大雨によっても決壊するケースがある。
西日本豪雨では全国で32カ所、2019年の東日本台風とその直後の豪雨では、全国で127カ所。福島県でも38カ所が被災した。

こうした状況を受けて行われた、国の調査によると「豪雨や台風に備えて応急処置が必要」と判断された「ため池」は全国で1,540カ所。このうち福島県内は12カ所で、これまでに8カ所で復旧が完了している。

東京大学客員教授・防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さん:
身近なところにため池があるか、最寄りの市町村に聞くこと。もし決壊したらどうなるか、行政によっては氾濫シュミレーションが公表されていますから、それを確認する。その上でどう逃げるか。水は低いところを目指して来ますから、より高いところへ逃げる。これを考えておくことが重要だと思います

(福島テレビ)