新型コロナウイルスの感染が再び急拡大したのは、日韓ともに2020年11月。
だが、終息の兆しが見えず緊急事態宣言の再発令に踏み切った日本とは対照的に、韓国では年明け以降、新規感染者が大きく減少している。
一足早く収まり始めた韓国の第3波、その収束の背景には厳しい罰則と監視の目があった。

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高止まりの日本、減少する韓国の感染者

加藤綾子キャスター:
日本では新型コロナウイルスの第3波が猛威をふるっていますが、お隣の韓国はどのような状況なのでしょうか?

FNNソウル支局 川崎健太記者:
韓国メディアでは年明け以降、一気に「第3波のピークは過ぎた」という見出しが増えました。確かに韓国の新規の感染者は減っているんですね。

日韓ともに、第3波に見舞われたのは2020年の11月でした。
ただ日本では、緊急事態宣言が再び発令された後も高止まりが続いています。

一方で韓国では、2020年11月以降、感染対策を段階的に強化して、クリスマスの12月をピークに減り始めました。そして、最近では大体1日に韓国全体で400人前後にとどまっているわけです。

厳しい韓国の「コロナ罰則」とは?

FNNソウル支局 川崎健太記者:
韓国が一足早く減少傾向に入った要因は定かではないのですが、日本と大きく異なるのは「コロナ罰則」ということになります。

日本では先週、国会にコロナ特措法などの改正案が提出されました。すなわち罰則を盛り込んだコロナ対策の審議が、いよいよ日本でもスタートした。

一方、韓国では第1波に直面した、2020年2月の段階で法改正に踏み切っているのです。すなわち約1年前から、“コロナ対策は大抵が罰則付き”と、これが当たり前の社会になっているわけです。

加藤綾子キャスター:
確かに韓国は日本より厳しい措置が取られているという印象があるんですけど、実際にはどういうケースで罰則となるのでしょうか?

FNNソウル支局 川崎健太記者:
韓国では、「感染者が入院勧告を拒否した場合」または「行動歴の聞き取り調査を拒否した場合」に、懲役や罰金の対象になっています。

これが日本でも刑事罰の対象にするかどうか、その検討が進んでいるわけです。

そもそも韓国では、濃厚接触者であっても自宅隔離命令に従わなければ逮捕される。これが韓国の感染対策いわゆる“K防疫”です。

ちなみに最近では、ここ1カ月でコロナ対策違反で約400人以上が捜査の対象になっています。

そして第3波に直面して経済活動が大幅に制限されました。
・カフェはテイクアウトのみ。
・飲食店は午後9時まで。
・スポーツジムやカラオケは営業停止。
・スポーツは無観客です。
ただ「飲食店の午後9時まで」、これ以外は措置が緩和されました。その理由は感染者が減ったからです。

ポイントは、これらの措置が“全て罰則を伴う命令”だということです。あらゆる措置が、要請にとどまる日本とはちょっとレベルが違うということになります。

また年末の忘年会シーズンを迎えて、韓国政府はそれまでで最も厳しい措置を取りました。それが「5人以上の会食禁止」です。
これはプライベートで5人で集まって会合しただけで、店側には最大30万円。客にも1万円の罰金が科されるのです。

これは危機感を覚えた韓国政府が、国民に発した強烈なメッセージでもあったわけです。

韓国政府としては、この措置が効果を上げているというふうに分析していまして、実際に「5人以上会食禁止」の措置から、2週間後に新規の感染者が大きく減り始めたのです。

互いを見張る「相互監視社会」

FNNソウル支局 川崎健太記者:
ただ私も韓国で生活していまして、息苦しさを感じる瞬間があるのです。それは規制の厳しさもそうなんですけども、やっぱり「相互監視社会」ですね。

これどういうことかと言いますと、ソウルの街ではマスクを着けていない人はほぼゼロと言っていいほどなんです。

これは2020年11月に、町中でマスクの着用が義務付けられたことが大きいです。これももちろん違反すれば罰金となります。

私も実際に若干マスクがずれていただけで、町中で「マスクのつけ方が甘いよ」というふうに突然指摘されたこともあるほどです。

韓国政府としても「違反者がいたら通報してくださいね」というふうに募っていまして、2020年12月には、1カ月で約3万件の通報が寄せられて、いわゆる“違反者狩り”が過熱したわけです。

その結果、当初は通報者に対して「商品券1万円分の報奨金」も出していたんですが、加熱しすぎて嘘の通報なんかも増えたことから、報奨金制度は現在は廃止されています。

ただその一方で、こうした互いを見張る“監視の目”というのが、感染者の減少や法令の減少につながっている可能性はあると思います。

結果ありきの「国民の受け止め」

FNNソウル支局 川崎健太記者:
そして最後に「国民の受け止め」です。
韓国では第1波、第2波、そして第3波もそうなんですけれども、比較的短期間での封じ込めに成功しているんです。この事実によって、感染対策を優先する強権的なシステムを、結果的に国民が受け入れている。こうした側面はあるかと思います。

加藤綾子キャスター:
川崎さんありがとうございました。やはりウイルス対策においては、強制力や罰則を伴っているほうが効果が期待できる面がありますよね。ただこれが個人がどこまで守るのか・・・

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
国の実情が違うとね。でも、基本は国民がそれを受け入れるかどうか、その一点にかかっていると思いますね。

(「イット!」1月25日放送分より)