鋳物工場が「健康器具」を販売

長引く“自粛生活”の影響で、体がなまってしまった…という人も多いはず。
コロナ以外にも健康面が心配という声も聞こえる中、建設機械やロボット等の鋳物部品を製造している株式会社シグマ製作所が、自身の工房「岩一工房」から、座ったまま使える足踏み健康器具「ふみふみ」の発売を開始した。

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この「ふみふみ」は、椅子に座ったままの姿勢で、でこぼこした面に両足をのせ左右に揺らして“青竹踏み”のような運動ができる健康アイテム。

長さ約35センチ、幅と高さが約10センチとコンパクトだが、32個の突起で「足つぼマッサージ」効果が期待できるという。また、材料はアルミで、重さ820グラムと持ち運びもしやすい。
病院・薬局・在宅を経験した薬剤師と共同開発することで、患者の声を製品に反映し、家での「運動の入り口」になるように工夫をしたという。

運動不足を感じている人にはもってこいのアイテムだが、そもそもなぜ機械部品を作る鋳物工場が、健康器具を開発したのだろうか。シグマ製作所にお話を聞いてみた。

「立てない人でも運動できるものを」

――「ふみふみ」を作ったきっかけは?

2020年4月の緊急事態宣言を受け、弊社社長が「このコロナ禍で役に立つものが作れないか」と考え始めたのがきっかけです。

アイデアは、社長の母親が施設に入り、車いす生活をしていたころ、その姿を見て「立てない人でも気軽に運動できるものがあれば」と思いずっと考えていたそうです。
現在その母は亡くなりましたが、コロナで社長夫人の父親が同じように、車いす生活で運動不足になっていることを心配し、運動できるものをと、家にある青竹ふみに乗った時に思い付いたそうです。

青竹ふみは立って乗るけれど、座ってできないか。社長自身が、足つぼマッサージを受けたことがきっかけで 胃がんが見つかったことを考えると「足つぼマッサージの機能も付けてはどうか。立ってやるよりも、当たりが少なく、痛みもないのではないか」、また「現在プラスチック製品のごみ問題があるので、環境にやさしいものでできないか」という考えからこの商品を考えたそうです。


――薬剤師との共同開発…どんな「患者の声」を取り入れた?

「リハビリ室でリハビリをするように言われても、家だとなかなか取り組めない」「医師には、足を上げる運動をするようにと言われたが、なかなか家だとできない」という声を聞きました。できない理由としては、習慣にするのは難しいといったニュアンスです。

また、開発段階で介護施設に持っていき、製品をどのようにすればよいかの意見を聞きました。
一番に挙げられたのは、当初鉄で作っていたため、重すぎて、お年寄り一人ではできないといったことでした。
 

――鋳物工場の技術は「ふみふみ」にどのような形で生かされている?

まず、製造面ですが、弊社の鋳造製品は鉄であるため、今回開発途中で鉄から素材をアルミに変えることになったときに、今までお取引のある会社さんで信頼できる会社を選びました。また、実際に現場に行って、工程を確認しました。

開発に関しては、木型づくりには方案といって、どのように湯を流すのか、どう流したら効率よく流れるのかなどを考えながら図面をつくります。そこには、今まで培ってきた鋳物の技術が生かされています。

鋳物は砂の型を木型や金型から作って、その砂の型に金属を溶かした湯を流し込み、固まったらその砂を取り除き、湯を流し込むときにできた湯口から製品までの不要な部分などを取り除きます。その湯の流れが順調に流れるようにまた、出来上がった鋳物製品に穴をあけたりする加工を施すことがありますが、どこまでを加工で対応するのか、鋳物製造のための型を変えることで、形状を変えることにより、加工を行わなくても済むようにするのかなども考えます。

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「ふみふみ」が生まれたきっかけは、社長自身の母や、社長夫人の父が車いす生活を送る上で運動不足になっていたこと。
その体験から得たアイデアを「コロナ禍の中で自社の技術を生かし、人の役に立つものを作りたい」と形にしたという。

「ふみふみ」を実際に鋳物で作ってみると、お年寄りには重くて使いづらいことなどがわかり、何度も作り直しをしたというシグマ製作所。
当初の目的であった「立ち上がるのがつらいお年寄りでも気軽に運動できる器具」をつくるため、販売段階ではリハビリなどを行う施設に「家で実際にできるかどうか」「何かをしながらの『ながら運動』をするのに適しているか」などのアンケートを行うなど、試行錯誤を繰り返したという。

「何度でも再利用できる」鋳物の利点

さらに、熱した金属を型に流し込んで作る鋳物ならではの「永遠に再利用し続けることが出来る」という特徴があるという。


――「永遠に再利用できる」とはどういうこと?

今回開発にあたって、鋳物にしようとした理由がこれです。

当初、プラスチックも考えましたが、環境問題がありました。鋳物は、金属を溶かしてそれを砂型に流してつくります。そのため、出来上がった製品は金属そのもの(用途によって添加剤を加えたり、塗装したりしますが)のため、不要になれば溶かして、製作途中に不純物を丁寧に丁寧に取り除いて、その湯を砂型に流し込めばまた新たな製品になります。

つまり、ふみふみの話であれば、不要になったふみふみを新品のふみふみに生まれ変わらせることができます。もちろん、前述したように、砂型を取り除いたばかりの製品には、不要な部分がついていますので、1つの製品をそのまま作り直すことはできませんが、古いふみふみ1つから新しいふみふみ1つができる。鋳物自体がサステナブルな物なのです。
それ以外にも、プラスチック製品にはない利点、丈夫である、重みがある、硬いなどの利点を考え鋳物製品としました。


――他にもコロナ禍に役立つアイテムの開発予定はある?

社長はずっと考えていて、第2弾も具体的な話がありますが、現在それに向けての具体的な動きは行っておりません。

「ふみふみ」は8,900円(税抜)、歩数計付きのタイプは9,800円(税抜)。岩一工房の公式サイトなどから購入でき、シグマ製作所の大庭社長は「特に高齢者の健康維持に役立ててほしい。クリスマスや年末年始とコロナ禍でなかなか会えない家族に向けたプレゼントにもちょうどいい」と話している。

コロナ禍の自粛生活が続き、なかなか運動ができない現在。鋳物の技術が注ぎ込まれたこのアイテムを使って、自分自身や家族の毎日の健康ケアを始めてみてはいかがだろうか。
 

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