「しょせん影ですから」
そして、小泉内閣の調整役として各省庁の官僚からの信頼を集め存在感を増した福田氏が、官房長官在任最長記録を更新した際の会見での記者とのやりとりがまた話題となった。
記者: きょう在任期間が最長を更新。受け止めは…
福田氏:率直に言って…何も考えてない(笑)何しろ日々追われてますとね、本当にあっという間という感じで(中略)。
記者: 「弁明長官」とか言われたこともあったが。
福田氏:「弁明長官」と自分で言ったんじゃない。あなた方が言った。最近はなんですか…「秘密主義長官」?それから何ですかね。
記者: 「影の外務大臣」。
福田氏:「影の外務大臣」、「影の防衛庁長官」なんてね、いろいろ名前がありますね。しょせん影ですから。
記者: 小泉総理とのコンビネーションは?
福田氏:まあまあうまくやってんじゃないですか。陽であり陰であり。プラスマイナスうまくバランスがとれていると思いますけれどね。しかし総理がどう思っているかしらないけど。フフフ。
こんな調子で、記者との間では日々、軽妙なやりとりが展開された。私は、番組からのオーダーもあり政治に限らず幅広い話題でコメントを福田氏に求めることがしばしばあり、当時大きな話題となった歌手・宇多田ヒカルさんの電撃結婚についてもコメントを求めたこともあった。
福田氏の答えは「あの方は19歳ですか。ずいぶん稼ぎましたね」とジョークを交えつつ、少子高齢化の社会にも触れながら、結婚を祝福するものだった。
自由度の高いやりとりで国民目線も意識
こうしたイレギュラーな質問について、想定問答を用意しなければいけない秘書官からは「勘弁してよ」と愚痴られることもあった。それでも福田氏は、政府の公式見解を述べることを軸にしつつも、政治家としての私見を交えたり、ジョークを繰り出したりと人間味のある福田節でのコメントを続けた。
記者団となれ合っている訳ではなく、記者団と厳しい緊張関係に陥ることも度々あったが、福田氏はこうしたやりとりを楽しんでいた部分もあった。

当時、長男の達夫氏は、康夫氏は、こうした記者団との会見やオフレコも含めたやりとりを通じ、国民が何を考えているのかを少しでも知ろうとしていたのだと説明していた。そして、そこで自由闊達に話す中で有意義な議論や案があった場合には、それを参考に政策を紡ぎ出すこともあったという。
昨今の政治家の記者会見は、よりお堅く、脱線しない印象で、これも時代の流れであり危機管理強化として当然の部分もあるのだが、福田氏のような味のある記者会見も時に見てみたくなる。

