疑問(1) 効果は?「有効性95%」の意味

「ワクチンの有効性95%」というのは、100人がワクチンを接種したら95人は感染しないということではなく、何もしないで発症した人とワクチンを接種して発症した人の数を比較して、ワクチンを受けるとどれぐらいリスクを減らせるかを評価するもの。

例えば、治験において偽薬を接種、つまり何もしなかった人とワクチンを接種した人、それぞれ1000人をサンプルとして、何もしなかった中で100人発症し、ワクチンを打った中で5人発症した場合。

この100人と5人という発症者の数を比較して、ワクチンを打ったことで発症のリスクを95%減らせたということになる。

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厚生労働省の審議会「予防接種・ワクチン分科会」会長代理を務める、川崎医科大学の中野貴司教授に詳しく話を伺った。

――インフルエンザの有効性は何%?

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
年代によっても異なると思いますが、インフルエンザのワクチンは95%の発病予防効果はないと思います。

――95%の事実があるなら「有効性がある」と思っていい?

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
呼吸器感染症のワクチンは結構難しいんです。ですから今後、いろいろな論文が発表されてくるのをきちんと注目する必要があると思います。

――年齢・体質・人種によって効果は違う?

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
おそらく年齢や体質というか、持病があるかないかでは異なるでしょう。抵抗力が異なりますし、その病気へのかかりやすさも異なりますから、きっと有効率は異なります。人種に関しては、確かに病気になりやすさも人種差・民族差があるので、様々な国のデータを比較しなければならないと思います。

疑問(2) ワクチンの安全性は?

――自分が感染していて症状が出ていない場合、ワクチンを接種していても人にうつす可能性はある?

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
もちろん感染してて、発病しない方からうつる可能性はあると思います。

では、今回の治験で使っている「遺伝子ワクチン」とはどのようなものなのか。

遺伝子ワクチンは、ウイルスそのものではなくウイルスの一部の遺伝子情報を体内に入れることで、体が「ウイルスの一部の情報」を「ウイルス」と勘違いして抗体を作り出すという仕組み。

――小学生以下の子どもや妊婦さんも接種していいのか?

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
小学生以下の方は確かに症状が軽い。小学生以下の方や妊婦さんに関して、まだ世界でも接種した後の有効性や安全性が十分に揃ってないと思うんです。ですから、子ども達とか妊婦さんはより安全性を重視して、データがさらに確認できた上で接種の対象に含めていく、という考え方で進めていくべきではないかと考えています。

疑問(3) 日本で使えるようになるのは…

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
ここ数日の世界の動きを見ていますと、イギリスがもしかすると12月7日、アメリカでは12月11日に接種が始まる。私たちはその動向を注目しつつ、さらにそこでワクチンを打った成績がどうかを見て、日本国内のことを決めていくことになるのではないでしょうか。

――ワクチンができたら、今のように医療従事者が防護服を着ることがなくなり、濃厚接触者を追いかけることがなくなる、そういう世の中になる?

川崎医科大学​ 中野貴司教授:
ワクチンは新型コロナウイルス感染予防のための全ての答えではなくて、やはりワクチンができても感染予防策はしばらくは同じ形で続けていくべきだと思っています

未知なるウイルスとの戦いの中、世界各国でワクチン開発が進む。日本で使えるようになるのはまだ先だが、より安全で安心して使えるワクチンが来ることに期待したい。

(「Mr.サンデー」11月29日放送分より)