瀬戸内海に浮かぶ、三原市の佐木島。人口約550人の島で、島のモノを生かしながら暮らす人たちがいる。中山間地域の知られざる魅力を探す辰已麗アナウンサーが思いがけず出会ったのは、動物たちに囲まれた一軒の民泊だった。
海を一望する灯台と「恋する鐘」
初めて訪れた佐木島で、辰已アナは島の人におすすめされた「佐木島灯台」に向かっていた。
案内板には灯台まで「0.2キロ」とあり、「恋する灯台プロジェクト」の文字も。
「あ、そういう灯台なんですか?」
息を切らしながら高台への道を登り切ると、目の前に青い海が広がった。右から左まで海を見渡せる抜群のロケーションに、真っ白な灯台がたたずむ。まさに佐木島のシンボルともいえる景色だ。
さらに目を引くのが、灯台のそばにある「恋する鐘」。ハート型のフレームが連なり、その中央に小さな鐘が吊るされている。
「看板に『恋する鐘』と書いてあります。そう、ルールは書いてないんですよ。恋してようとなかろうと、いつかするっていうカッコがあるかもしれない」
そんなことを考えながらも鐘を鳴らしてみることに。
「カーン」
鐘の響きが幸運を呼び寄せてくれることを信じて、旅は続く。
ヤギに導かれ、情熱的な出会いが…
すると、道の途中で思わぬ出会いがあった。
「びっくりした!何かと思ったら……ヤギです!」
まったく動かないヤギに「生きてます? ほんもの?」と声をかけると、もごもごと口が動きだす。
ヤギの近くには「海月のオミセ OPEN」と書かれた小さな建物がある。どうやら、ここは普通の民家ではないようだ。
「こんにちは。ここを通って大丈夫ですか?」
敷地の中へ入っていく辰已アナを出迎えてくれたのは、中村淳さん(43)と唯花さん(30)夫妻。ヤギやニワトリ、そしてイヌの風ちゃんもいる。
「突然すみません。テレビ新広島の辰已といいます」
あいさつもそこそこに、風ちゃんが辰已アナを熱烈に歓迎。顔や首をぺろぺろとなめ始めた。
「あら~人懐っこい! 私、汗まみれなんだけど大丈夫かな」
一方、ヤギについて尋ねると、名前は「せんちゃん」だという。
「せんちゃん! せんちゃんに導かれてやってきました」
塩も自家製! 島の恵みで薪窯パン
中村さん夫妻は島内で有機農業をしながら、「海月の棲み処(くらげのすみか)」という屋号で民泊施設とパン工房も営んでいる。
パンを作るのは唯花さん。工房を案内してもらうと、そこにあったのは大きな薪窯だった。
「本格的な窯ですね!」
「土と砂とわらで作りました」
なんと窯そのものも自分たちで手作り。この窯で、カンパーニュなどのハードパンをメインに焼いている。
「三原の有機農家さんの小麦粉を使って、地元産にこだわっています。塩も自分で作って、海水を炊いて」
パンに使う塩は、目の前の海水を満潮のときに汲み上げ、2日間炊いて作るという。
辰已アナが自家製の塩を味見させてもらった。
「口の中でじゅわ~っと溶けていく感じ。おいしい!」
海水と小麦、水。シンプルな材料から、この土地ならではのパンが生まれている。
廃材を生かした、海が見える民泊
続いて見せてもらったのは宿泊施設。箱型の建物に、2階のデッキへ続く階段が付いている。
ユニットハウスを運び込み、内装とデッキは自分たちで手がけた。周囲を緑に覆われ、まるで森の中に潜む隠れ家のようだ。
「たまたま島でいい廃材が出たので、内装にはほぼ廃材を使っています」
2階のデッキに上ると、瀬戸内海を一望する景色が広がった。
「すご~い。 目の前に海があって、プライベートの海の家みたい!」
夜になると、デッキから本土側の夜景も楽しめるという。
「限界集落を救いたい」夫婦の思い
島のモノと動物に囲まれた暮らし。
「動物たちも日々変化があるので、おもしろく楽しくやっております」
そう話す中村さんが、もう一つ取り組んでいることがある。現在、岡山県井原市の山間で住民が2人しかいない集落を開拓中。
「僕らが今行かないと、そのままなくなってしまうような場所だったので」
そこに暮らす90歳のおばあちゃんから聞いた「なんとかしたいけど、どうにもならん」という言葉が、取り組みのきっかけになった。
なぜ、そこまでして集落を守ろうとするのか。
「都市部に人口が集中しているんですけど、その人たちが各限界集落に散ったら、おそらく1人でも行けば、その集落は救われるんですよね」
そして、こう続けた。
「記憶をつないでいくことを大切にしたほうが、なんだかんだ将来的に日本のためになるのかなって思います」
佐木島の絶景の先で立ち寄った場所。そこには、自然に溶け込むような豊かな暮らしと、小さな集落を守ろうとする人たちの思いがあった。
(テレビ新広島)

