厳島神社の世界遺産登録から30年を迎える2026年。宮島には国内外から多くの観光客が訪れ、観光ビジネスは一段と活気づいている。一方で、「夜に営業する飲食店が少ない」という課題も。そんな中、宮島観光の魅力を高めようとする地元企業の挑戦を追った。

地元企業が宮島で事業展開を強化

多くの観光客でにぎわう宮島。2025年の来島者数は約497万人と、2024年を約11万人上回り、2年連続で過去最多を更新した。
そんな宮島で6月、宮島水族館近くの通称・弁財天通りにカフェ「OAS(オース)」がオープン。

瀬戸内レモンを使った「レモン抹茶ラテ」
瀬戸内レモンを使った「レモン抹茶ラテ」
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コーヒーや、瀬戸内レモンを使った「レモン抹茶ラテ」などのドリンクに加え、ショーケースには工夫を凝らしたスイーツが並ぶ。店の看板メニューは、宮島のシカをそのまま小さくしたようなケーキ。地域の人にも観光客にも親しまれる“オアシス”のような存在を目指し、その思いを店名に込めた。

このカフェを運営するのは、広島県を中心に飲食店などを展開する東洋観光グループ。2019年に「みやじま杜の宿」の運営を受託して以来、宮島で本格的に事業を広げてきた。

東洋観光グループが運営する「みやじま杜の宿」
東洋観光グループが運営する「みやじま杜の宿」

杜の宿の槇敬志支配人は、宮島で事業を始めた当時を振り返る。
「まずは探り探りというか、その頃はまだコロナ禍の前でした。外国人観光客がこれから増えてくる時期だったので、インバウンド対策に力を入れようと思っていました」

「夜遅くまで開いている店が少ない」

コロナ禍で一時落ち込んだインバウンド需要は、その後大きく回復。2025年に宮島を訪れた外国人観光客は約75万人と、過去最多を更新した。槇支配人は、円安を追い風にインバウンド需要は今後も伸びるとみる一方、宿泊費の上昇で国内旅行客には利用しづらい面もあると感じている。
そこで着目したのが、“宮島の夜”に潜むビジネスチャンスだ。

みやじま杜の宿・槇敬志 支配人
みやじま杜の宿・槇敬志 支配人

「夜のコンテンツが弱いというか、夜遅くまで開いている店が少ない。夜ならではの魅力や食事をお客さんに楽しんでもらえるようにしたいと思います」

この夏、東洋観光グループは新たな一手を打つ。
7月、表参道商店街の一本裏手、町家通りに和食店「宮島味処 しまの音」をオープンする。2025年末まで営業していた「旅荘かわぐち」の築300年を超える建物を改装し、瀬戸内の魚介などの料理を提供。将来は宿泊施設としての活用も見据えている。

築300年以上の古民家を改装し、和食店へ
築300年以上の古民家を改装し、和食店へ

オープンに向けて準備を進める山本義諒店長は、夜営業にこだわる理由をこう語る。
「宮島は、夕方以降に営業している店が少ない印象。“食事難民”とまでは言わないですが、そうした人たちのニーズに応えることは、非常に価値があると考えています」

宿泊と食事を分ける「泊食分離」

背景にあるのが、宿泊スタイルの変化だ。
2025年にグループへ加わった旅館「さくらや」では、宿泊客の8~9割が外国人観光客。素泊まりを選ぶ利用者が多いという。
田淵潤太郎支配人はこう話す。
「数年前から『泊食分離』が進んでいます。特にインバウンドの方が多い旅館なので、宿泊と食事を分けて考えてもいいんじゃないかと」
宿泊施設で食事を提供するには、人員や食材の確保など大きな負担が伴う。食事を提供しない分、宿泊サービスそのものの充実につなげる狙いだ。

海が見える人気の部屋「シービュー」
海が見える人気の部屋「シービュー」

「海側の『シービュー』の部屋から予約が埋まっていきます。夕日や朝日、天気のいい日にはさまざまな海の表情を見られて、旅館の売りにしている部屋です」
宿は快適な滞在に特化し、夜遅くまで営業する「しまの音」が食材にこだわった和食を提供する。旅館と飲食店がそれぞれの強みを生かして連携することが、グループ全体の戦略だ。

旅館「さくらや」の田淵支配人(左)、「宮島味処 しまの音」の山本店長(右)
旅館「さくらや」の田淵支配人(左)、「宮島味処 しまの音」の山本店長(右)

山本店長は「宿泊客が食事の場所を探すとなった時、夜遅くまでやっている店は選択肢に入りやすい」と、新たな需要に期待を寄せる。

ホテル開業が相次ぐ宮島口エリア

2026年は厳島神社が世界遺産登録30年を迎える節目の年だ。

2026年、世界遺産登録から30年を迎える厳島神社
2026年、世界遺産登録から30年を迎える厳島神社

宮島の対岸では、県外や海外からのホテル進出が相次ぐ。3月28日、宮島口に「HOTEL FORK&KNIFE Miyajima」がオープン。7月23日には広島県内初進出となる星野リゾートの温泉旅館「界 宮島」が開業する。さらに2028年にはヒルトンが運営する「LXRホテル&リゾーツ」の開業も予定されている。宮島エリアを巡る宿泊需要の獲得競争は一段と激しくなりそうだ。

それでも槇支配人は、「協業というかありがたい」と前向きに受け止める。
「我々の強みは宮島島内にあることです。島の中で食事をし、宮島に泊まってこそ、夜の良さや朝の良さなどの魅力を感じてもらえると思っています」

宿泊の“広島飛ばし”解消へ挑む

一方で、グループを率いる今井誠則代表は、宮島で事業展開する上で避けて通れない課題を挙げる。
「環境の保全のため、島内に新しい宿泊施設を建てられないし、宿泊のキャパが小さい」

東洋観光グループホールディングス・今井誠則 代表
東洋観光グループホールディングス・今井誠則 代表

その上で指摘するのは、観光客が広島に宿泊せず、別の都市へ向かってしまう“宿泊の広島飛ばし”だ。
「宮島と平和公園は日帰りでも十分回れます。いわゆる“広島飛ばし”が、残念ながらいまだに続いています。問題は宮島ではなく、広島そのものがにぎやかにならんといかん」

観光地・宮島で事業展開を強化する東洋観光グループ。にぎわいを広島県全体へ広げるため、新たな挑戦が続く。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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