老舗の宿泊施設として親しまれた秋田・大仙市の「強首ホテル」が、コロナ禍を機にフォトスタジオへと大胆に業態転換した。2000着を超える衣装とSNS発信を武器に、県内外から人を呼び込む人気施設となった「ドレスリゾートこわくび」。そこには、思い出を大切にしたい夫婦の思いが込められている。
老舗ホテルが挑んだ“第二の人生”
大仙市強首にある「ドレスリゾートこわくび」。館内には2000着を超えるドレスや衣装、小道具が並び、利用者は自由に選んで撮影を楽しむことができる。
施設を運営するのは伊藤久子さんと竜寛さん夫妻。久子さんが接客や衣装選びを担当し、竜寛さんが写真の印刷などを手掛けながら、夫婦二人三脚でスタジオを切り盛りしている。
訪れる人たちは、普段なかなか袖を通すことのない華やかなドレスに身を包み、非日常のひとときを楽しむ。
常連客の1人は「普段着ることができない衣装や挑戦できないドレスを着ることができる。友達に見せたりすると『いいな』と言われる。定期的にいろんな衣装を着たいので、また利用したい」と笑顔を見せる。
コロナ禍で迫られた決断
もともとこの施設は、1967年に開業した「強首ホテル」だった。
最盛期には年間2万人が利用する人気の宿だったが、時代の流れとともに宿泊客は徐々に減少。そして追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの流行だった。
休業要請を受け、旅館としての営業継続が難しくなったことで、夫妻は大きな決断を迫られる。
そこで活路として見いだしたのが、長年所有していた大量の衣装だった。
宿泊客向けに準備していたステージ衣装やドレスを生かし、宿泊施設からフォトスタジオへと生まれ変わった。
久子さんは「写真を撮ってもらう場所を提供することに切り替えて、どこまで続けていけるか分からないが、それでやっていくしかないと思った」と当時を振り返る。
お客さんの一言が転機に
しかし、スタジオとして再出発した当初は知名度がほとんどなかった。
そんなとき背中を押したのが利用客だった。
「SNSを使ってみたらどうですか」。
その助言を受け、久子さんはそれまで活用していなかったXやInstagramを開設。スタジオで撮影した写真の投稿を始めた。
すると、色とりどりのドレスや幻想的な撮影空間が話題となり、少しずつフォロワーが増加。今では県内外から月に40組近い利用者が訪れる人気スポットになった。
久子さんは「『SNSをやってみたらいい』と言ってくれたお客さんがいて、始めたら少しずつフォロワーが増えてきた。SNSで反応してくれるようになって、やっと見てもらえたんだなというのがうれしかった」と話す。
「笑顔で帰ってもらいたい」
現在はドレス着放題プランだけでなく、キッズプランや誕生日、七五三など様々な撮影に対応している。
夫妻が何より大切にしているのは、利用者に楽しんでもらうことだ。
竜寛さんは「もっと気軽にいろんな人に使ってもらえれば、それぞれの思い出ができると思うので、歯を食いしばってでも続けていきたい」と力を込める。
久子さんも「皆さんで笑い合っているだけで体験の時間があっという間に過ぎ、ストレス解消ができるところなので、理由は何でもいいので来て体験してほしい」と呼びかける。
衣装を選び、変身し、写真を撮る。その時間そのものが利用者にとっての思い出になっている。
写真に込める思い
夫妻にとって写真は、単なる記録ではない。
東日本大震災の際、強首ホテル時代の宿泊客が被災したという知らせを受けた。連絡が取れた人たちに保管していた写真を届けたところ、とても喜ばれたという。
だからこそ、強首ホテルやドレスリゾートこわくびでの思い出の写真を震災や災害などで失ってしまったという人がいたら、気軽に相談してほしいと呼びかけている。
様々な撮影プランが用意されている宿泊施設からフォトスタジオへ。
大きな転換を遂げた「ドレスリゾートこわくび」はきょうも、訪れた人それぞれの特別な1日を、1枚の写真に残し続けている。
(秋田テレビ)

